事業のネタ帳 #26 ブルーオーシャン or レッドオーシャン? - レッドオーシャンでの勝ち筋を描けるか -
スタートアップとして事業を検討していくにあたって、市場選定について考えることは避けることができません。市場選定は、言わずもがな、その後の事業成長を大きく左右するファクターです。
市場についての一つの見方として、ブルーオーシャン / レッドオーシャンといった視点が挙げられます。教科書的には、事業者間の競争が激化してパイの取り合いになっているレッドオーシャンではなく、競争の少ない新市場をブルーオーシャンとして開拓していきましょうという、ブルーオーシャン戦略の優位性が謳われるコンテクストで聞くことが多いように思います。
実際に、スタートアップの経営戦略としても、既に競合がひしめく事業領域で戦うよりも、自社自身が先行者として強みを構築できる新市場を開拓していこうと考えることが非常に多いように見受けられますし、そういった戦略をピッチで伺うことも多いです。
ただ、このブルーオーシャン戦略の落とし穴としては、競争相手がいないということが意味するものとして、事業領域として美味しくない(そもそものニーズがない、市場規模が小さい、利益率が低い、時間がかかりすぎる等)ということも考えられます。
逆に、レッドオーシャンに見える市場について、その市場規模は十分に証明されているわけでもあります。そういった巨大市場こそ、軌道に乗って登りきった先に大きな事業創造が可能となることから、そこでチャレンジすることを目指すスタートアップを後押しできればなと、最近考えることが増えてきたので、今回はこちらのnoteでレッドオーシャン市場でのスタートアップの戦い方について、思考をまとめてみることにしました。
レッドオーシャン市場での勝ち筋を産み出すポイント
スタートアップがレッドオーシャンで戦う上での勝ち筋を組み立てるためのポイントについて、①プロダクト、②ビジネスモデル、③タイミング、④セグメンテーションの4項目を挙げることができると考えています。その中でも特に重要な①プロダクトと②ビジネスモデルについて、本稿においてはフォーカスしたいと思います。
複数の競合が存在する中で、顧客に選ばれ続けるための理由や優位性をどのように保ちながら事業拡大できるか、という問いに対する仮説を準備する上では、これらの合わせ技が必要と考えています。
①プロダクト
結局、これが一番重要になってきます。
レッドオーシャン市場でのプロダクト開発に着手する上での肝になることとしては、ソリューションとして複数社が市場に存在はしているけれど、顧客は満足していない、エンゲージメントが低くスイッチや連携ができる、広く普及しているわけではない、機能が搭載されているだけで放置されている、といった要素を顧客行動から見出すことがファーストステップになります。
その上で、真に顧客に喜ばれるプロダクトを構想し、開発投入していくことで、自社が選ばれる理由を作ります。このときにとても重要な思考の在り方としては、既存の慣習やオペレーションをリスペクトしながらも制約条件にすることなく、理想状態をイメージして、わがままに、欲望のままに考えることです。こんなことができちゃったら嬉しい、という夢のような、酔狂に思われるような顧客体験を創出するプロダクトを妄想することです。それが多くの競合が存在する市場において、価格競争に巻き込まれることのない独自性を有することに繋がってきます。
また、他業界出身者から見たときに、その業界の当たり前が時代遅れや常識外れに映ることもよくあるように思います。そういったズレも、事業上の利益の源泉に繋がるアービトラージの一つです。
②ビジネスモデル
ビジネスモデル、すなわち、課金体系のあり方も、大きなゲームチェンジを生み出すことができるポイントと考えています。
モノやコトがあふれる時代にあって、サプライサイド(売り手)とデマンドサイド(買い手)の両者のパワーバランスは、多くの市場や業界で、デマンドサイドに寄ってきています。特に、レッドオーシャンと呼ばれる市場ではデマンドサイドが購買における決定権を強く持ちます。
そういったパワーバランスを踏まえたときに、デマンドサイドに寄せた価格体系とすることで、シェアの獲得を図ることは一般的な思考となりますが、単に価格を下げて価格競争に持ちこむ、という話ではありません。
商品やサービスから得ることができる便益に係るリスクについて、その分担の仕方を変えることを考えます。具体的には、例えばワンショットでの売り切りの商品やサービスは、その材から買い手が便益を得ることができるかについては実際に使ってみないとわかりませんが、売り手はそのリスクを負わずに、買い手が一方的に負う形になるわけです。
こうなると、購買を思いとどまってしまう買い手も、一定数いることが想定されます。こういったリスク分担のあり方をよりサプライサイド(売り手)に寄せていく課金体系にすることによって、これまで購買を思いとどまっていた顧客層の取り込みはもちろんですが、より自社にとって有利で有意な契約を模索する既存顧客のスイッチを目指します。
ソフトウェア・IT産業においては、初期費用負担が重いオンプレミス型や、パッケージ型の買切りサービスは、買い手のリスク負担が重い体系です。プロダクトやその後のサポートに自信があるサービスであれば、初期の経済的負担を減らすことで買い手側のリスクを軽減させ、実際に利用してもらってから、定額課金、従量課金、成功報酬、フリーミアム等といった課金体系によってサービスが生み出す便益を買い手と売り手でシェアする仕組みを作ることで、顧客から選ばれるための大きな理由を生み出すこととなります。
売り手側がリスクを負担するタイプのビジネスモデルは、短期的には事業者にとって収益減につながることも多いことから、既存事業者にとっては自ら選択するコトが難しいというジレンマも孕みます。こういった隙間は、スタートアップにとっては大きな事業機会に繋がると考えています。
レッドオーシャン市場で戦うためのファイナンス
競合ひしめくレッドオーシャン市場で戦って行く上では、顧客がサービスに求める要求水準も高まっていることが多いことから、クイックに開発したMVPでスモールに仮説検証する、という動きが難しい場合も多いものと想定されます。また、ビジネスモデル上も、短期収益を追う焼畑型ではなく、LTV思考となることで、Jカーブを掘りにいくことになります。
従って、レッドオーシャン市場における事業の立ち上げにあたっては、一定規模の初期資本も必要になってきます。登りきった先に大きな事業創造が可能となることからも、シード期から一定規模のエクイティファイナンスをVCから調達することも、有力な選択肢になってきます。
もし検討されている方がいらっしゃったら、お気軽にジェネシア・ベンチャーズのキャピタリストまでご相談いただけますと嬉しいです。
おわりに
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