「テン年代のわたし」

芸創CONNECT vol.7
2/11(火)@芸術創造館

 現在大阪において、実験的と分類されるパフォーマンスに触れる一種のショーケース/コンペティションとして機能しているのはこの芸創connectぐらいかもしれない。完全公募制であり、関東や他地方のカンパニーにとっては関西進出の足がかりにも出来るため関西以外からの応募も多いようである。
今回のvol.7は6団体が参加、各団体15分程度のパフォーマンスを行った。まずは虫の息(東京)。埼玉県本庄市という場所を規定し、土地の歴史とそこに生きる姉妹の物語・記憶を本庄かるたという市内に複数ある石碑に関連付けたり、映像も交えて描いた、という感触。孤独部(愛知)。薄暗い空間に1組の男女。卓袱台に置かれている小さなラジカセからループ再生される数フレーズの台詞のやり取りに合わせ、1つのシーンが延々と繰り返される構成で、終盤現れる微妙な変化が積み上げられたシーンのリフレインと相まって、不思議と観客の想像力と情緒を呼び起こす。空(utsubo)(東京)。横浜中華街にある中国料理店のオーナー(66歳)の半生及び中華街史や昨今の日中関係に関する雑感なども交えたインタビュー内容を、日本人と外国人の女性2人で演じる、というもの。多国籍のカンパニーであり、主宰は現在NY留学中のためskypeでの登場(!)、インタビューや稽古もskypeで行われたことも含め、グローバリゼーション以降の舞台表現における1つの理想形を絵に書いたような作品だった。したため(京都)は昨年末京都・KAIKAの試演会企画gateで上演された30分の作品の短縮版といった趣で、一人の女性のパフォーマーが「私は○○です」という風に自身のアイデンティティ/自己を規定する言葉を時折奇妙な動作も交えながら捻り出すように羅列していく。濱中峻(東京)。祖父の死に際して学生の時に記録した音声を、それを元に自身で制作したドローイングのような映像をバックに、舞台上でリアルタイムに聞きながら現在の自分の言葉として紡ぎ出していく。最後はモンゴルズ(大阪)。「食とパフォーマンスの融合」が団体のコンセプトとのことで、ダンスや親子の寸劇を交えつつ、天井からハダカの鶏が数羽吊り下げられた舞台上で実際に親子丼を作り審査員に提供する(しかし食する審査員は居なかった)という6団体中異色の内容だった。
 しかして今回はすんなりと3団体目の空(utsubo)が最優秀賞を受賞した。これは順当な結果だと思う。全体的に「記憶」をテーマに創作している団体/作品が多い印象があり、ダンス寄りの作品が全く無かった6団体の中では、純粋に社会性・他者性を重視した切り口でよく練られているが故の突出した印象をもったからだ。審査員からも総評としてサーベイに基づくプレゼン的な作品が結果多くなっている云々といった指摘があった通り、vol.5以来久々に観ていた僕としても、乱暴ではあるが(たとえ今回が偶然だとしても)今オーソドックスな演劇/ダンスの境界を行く表現を志向すると、大阪という一地方にもこういった静的な作品群が揃ってくるという意味では興味深いコンペであり、三田格による数年前のあるWEBコラムでの「自分探しの90年代から自分語りの00年代へ」という一文がふと想起されると共に、3.11や静かに緊迫の度を深めている近隣諸国との関係は最早安全な自分(たち)語りの00年代を完全に終わらせたのかもしれない、と今更ながら(勝手に)身をもって実感した次第…である。(11日観劇)

(京都芸術センター通信 明倫art vol.167 2014年4月号 より)



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