「アンガジューマンの作法」
笑の内閣『65歳からの風営法』
7/21(日)~7/23(火)@NOON+CAFÉ
2010年末にアメリカ村のクラブが摘発されて以来、大阪のクラブカルチャーは危機的状況らしく、会場となった大阪の老舗クラブ・NOONも昨年摘発の対象となり(現在はカフェバーとして営業)その流れは全国に広がっている…とすっかり他人事の調子で始めてしまったけれど、学生の頃は友人(リア充)の気まぐれなお誘いでこのNOONにも片足の先っぽだけを踏み入れてその空気を感じた気になっていた。誘われるまま行ったドラァグ・クイーンのパーティ、ドタキャンされ一人で朝まで踊り倒したイベントのDJはMOODMANでゴス・トラッドやにせんねんもんだいの対バンもあり…遠い昔の話だがその光景はありありと思い出せるものだ…というわけで久々に足を踏み入れたそこは回顧の念を思い起こさせるものだったけれど、かつてDJブースがあったスペースは演技スペースとなり、朝方まで踊り倒していたフロアには椅子が敷き詰められ、見事なまでにただの小劇場空間と化していた(俳優達が揃いも揃ってクラブカルチャーとはまるで縁の無さそうな小劇場臭を漂わせていたことも大きな要因…かもしれない)。
物語自体はシンプルに進行する。違法風俗店を取り締まっている巡査がとあるクラブを風営法違反で摘発するため事前に潜入するが、そこには故郷に住んでいるはずの妹がおり今日のイベントでDJとして参加するらしい。「客を躍らせた」幇助罪の対象にはアーティスト側も含まれる為、巡査は妹を逮捕させまいと奮闘する…そもそも風営法とクラブ規制にまつわるこの問題は複雑なもので、今までグレーゾーンとして放置されることで良くも悪くもバランスが保たれていた現状が悪い意味で表面化してしまったと考える(未だ摘発されていない)クラブ側にとっては、法改正を目的とした活動は寝た子を起こすようなもので、法改正運動と実際の現場の間には微妙な温度差があるようだが、この作品はその複雑な現状以前の事実のプレゼンであり特に画期的な切り口を提示するものではない。「馬鹿な若者がいない国なんて最悪」と啖呵は切って見せるが、本作品はただこの問題をわかりやすく解説する入門編としてのチープでおバカな風刺エンタメとしてありそれ以上でも以下でもなく、風営法とクラブ規制問題は表層的で交換可能な作品の為の時事ネタであり、作品の思想的根幹や表現手法やパフォーマーの身体そのものの方にこの問題の孕む政治性を宿らせることにも関心は無いだろうことは、この問題について「突き詰めるとどっちでもいい」という創り手のスタンスを考えると明白であるのだけれど、アフターイベントとして行われた参院選の開票速報実況に居合わせた僕は自身の無知を静かに恥じた…彼らはあくまで作品をネタとして現実のこの国の政治に実際にコミットしようとしているのかもしれない(というか、して欲しい)。永田町公演は大赤字だったようだが、彼らには小劇場演劇村はきっと狭すぎる。(21日観劇)
(京都芸術センター通信 明倫art vol.161 2013年10月号 より)