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私だったら嫌だ

日テレの「調査委員会」の報告書については、あまりにもひどいというのが私の感想です。
もはや、自虐の報告書として世間に公表したんでしょうか?とツッコミを入れたくなるほど。

まず、インターミッション。著作権にまつわる「原作者」の大切な権利からです。

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
【著作権法 第二十八条】
 
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

日テレの調査書については、この点について「一切」触れられていませんでした。

何で弁護士が関わっていて、著作権の問題をスルーしているんですかね?
この時点で、色々おかしい。

後は、報告書は延々と97Pにもわたり報告されていましたが、私が気になったのは「別表」のアンケート結果です。

まず最初別表のアンケート結果より一部を転載。
全般的に、「原作者の意向を尊重すべし」と考えている関係者が多い様子が伺えます。

ですが、気になったのが4番目の「原作者・出版社との契約についての理解」の項目です。
まず、この項目の説明について。

4.原作者・出版社との契約についての理解について 契約締結にドラマ制作現場を代表して関与するプロデューサー・プロデューサー補経験 者のみに尋ねた。なお、日本テレビでは、ドラマの契約の実務面については専門的知見を要 するため、コンテンツライツ部というコンテンツ制作局とは別の部署が担当している。

「コンテンツライツ部」という名称からピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが。
要するに、「コンテンツにまつわる各種法的権利rights」の部署ということです。
にも関わらずですよ?回答者の半数以上が

・理解できているか自信がない
・契約書を読むことはほとんどない

って、どういうことでしょう?

普通の企業だったら、「法務関係の書類を読まずにプロジェクトを進める」ということは、まず考えられないと思います。万が一訴訟になった際の法的リスクが、あまりにも大きすぎる。
民事裁判で「民法上の不法行為」として損害賠償問題になった際に、「契約書を読んでいませんでした」なんて言ったら、まず敗訴になるでしょうね。
それくらいの重過失です。

(不法行為による損害賠償)
民法 第七百九条
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

つまり、「原作者の意向を尊重すべし」と考えつつ、一方で「契約書を読んですらいない」ということ?
どう考えても、矛盾しています。つまり、「原作者を尊重する」というのは、あくまでも「建前」ということでしょうか。

そして、もっとひどかったのが「報告書本文」。
詳しくは公表された文章を読んでほしいですが、

・最初から(使用)契約書を締結していなかった
・原作者を「難しい人だ」と最初から決めつける論調
・最後まで脚本家が「自分の名前をクレジットとして入れるようごねていた」

原作者をとことん軽視していた様子が、克明に報告されています。

そして、原作者が関わったのが「途中から」というのも、おかしくないですか?
この点も、あまりにも「著作権法」上の「原作者の意思尊重」の方針を、ないがしろにしています。

総じて思うのが、「じゃあ、なぜドラマ化のオファーを出した?」ということでしょうか……。
本当に、ドラマ制作者側の虫が良すぎる
ここまで齟齬があるならば、小学館側も「ドラマ化を断って良かった」案件なのではないでしょうか。


実は、私も「原作者の意思の無視」を原因として、noteでは封印した作品があります。その経緯については、ざっくりとこちらで説明しました。

法的問題の性質としては、割と今回の芦原先生の事件と似ているところがあります。
「封印」したおかげで、逆に「違法性」が証明されたようなものですが……。

そして、私が「封印」に踏み切ったのは、この朗読作品だけではありません。
一部の方には事情をお話しましたが、現在アルファポリスに出している「白露」についても、ちょっと思うところがありました。

賞の受賞如何に関わらず、手元保存用&ファンサービスとして非流通ルートで発行したのが、「スピンオフ」集です。
(商用ルートに乗せていないので、アルファポリスの規定には抵触しません)

わざわざ「非商用」「こちらから連絡した方のみ」に限定にしたのは、ネット上で「白露」について茶化すような書き込みがあった……という報告を受けたためです。

ご存知のように、戊辰戦争の悲劇は、作者にとっても扱うには非常に重たいテーマです。今でも時折遺恨が勃発する問題でもあり、書く方も非常に気を使います。
それを「面白半分に」茶化されたのでは、作者としてはたまったものではありません。

その一方で、非公開の「スピンオフ」についての存在もあり、一部の方とは情報を共有させていただいていました。そして、できれば「公開」にするべし!というありがたいご意見も頂いていたのです。

これらをどう両立するか?
熟考した末の判断が、「こちらから指名した人のみ読めるようにする作品集」という手法だったわけです。


原作者にとっては「作品は我が子同然」の存在です。
それを知りながら、なぜ「あたかも自分の所有物のように扱う」「茶化す」などの行為を、平然と公共の場で行えるのか。
私には到底理解できないですし、それが行われそうになったならば、とことん私が持てる限りの知恵を振り絞って、作品を死守するでしょう。

ですが、芦原先生の場合はそれが許されなかった……。
それを思うと、現在の「コンテンツの二次利用」について、一石を投じずにはいられません。

日テレのドラマについては、一定の理解は示していましたし、時には楽しむこともあります。
それでも、今回の調査報告書は元々大して期待はしていなかったものの、あまりにもひどいと思う。

元々、滅多にドラマを見ない私のことです。当分は、日テレ制作のドラマを見ることはないでしょうね。

最後に、改めて芦原先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

#二次利用
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