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【長編小説】私がホス狂と呼ばれるまで #12
【↓↓↓ 1話からどうぞ ↓↓↓】
主な登場人物
福井玲奈:26歳のOL。柔らかい雰囲気と愛嬌で人に好かれる性格だが、どこか流されやすい一面もある。中学時代からの親友・友香を大切にしており、周囲からの評価も良いが、プライベートでは孤独を抱えている。
レン:本名、島崎廉也。ホストクラブの人気ホスト。客の心を巧みに掴み、お金を引き出すプロフェッショナル。表向きは明るく魅力的だが、本心は計算高く、冷静に利益を優先する人物。
青木透:玲奈の職場の先輩社員。誠実で温厚な性格だが、やや気弱な一面があり、玲奈に好意を寄せている。しかし、玲奈との距離を縮めることに苦労している。
12-1 狂う算段
月曜日。
玲奈は、週末に使い果たしたお金のことを思い出し、青木のデスクへ向かっていた。既に頭の中では、青木との食事の席で、どうおねだりしてどれくらいのお金を要求しようかというシミュレーションをしていた。玲奈にとって、青木はそういった予想を裏切らない存在だった。
「青木さん、こんにちは!」
玲奈は笑顔を作り声をかける。
青木は書類から顔を上げて、いつものように微笑み返してきたが、その表情にはどこかいつもとは違う空気が漂っていた。
「あぁ、どうしたの?」
玲奈は、その微妙な違和感を少し気に留めるも、とりあえず本題に入ることにした。
「青木さん、今日の夜、ちょっとご飯行きませんか?またちょっと仕事のこととか相談したいことがあって…。」
玲奈は、全力で可愛さを振りまく。
だが、青木の反応はあまりに予想外だった。
「あー、今日はちょっと…ごめん。」
青木は軽く眉をひそめるような仕草を見せながら答えた。いつもなら玲奈が話しかけただけで、わかりやすくデレデレする青木だったのに、やっぱり今日はどこか冷静で、一歩引いた雰囲気だった。
玲奈は一瞬戸惑ったが、すぐに自分を取り繕った。
「あ、そうなんですね。すみません。また今度、空いてるときにお願いします!」
なんとか明るい声で返し、作った笑顔でその場を立ち去った。
(どうしよ…。早くお金くれないとレンくんと会えないじゃん!ってか普通に生活費もヤバいのに…!)
はしごを外されたような感覚になり、一気に不安が押し寄せてきた。
12-2 値引きと玲奈と
玲奈はスーパーの袋を片手に帰宅する。手を使わず靴を脱ぎ散らかし、鞄をベッドに放り投げた。そのままレンジで、値引きされた総菜を温める。静かな部屋にレンジの音が響く中、玲奈はストッキングを脱ぎ捨て、床に無造作に放り投げた。
「はあ…」
小さくため息をつき、椅子に腰を落とす。
レンジが「チン」と鳴り、総菜を取り出してテーブルに置く。目の前に置かれたあまりに貧相な食事に、呆れを含んだ笑みがこぼれた。
(あ~あ。また焼肉でも連れてってもらおうと思ってたのになぁ…。)
青木に断わられたことを思い返し、少し苛立つ。
「ふぅっ」というため息と共に苛立つ気持ちを放出し、スマホを開いた。
検索〈 食事 誘い断られた どれくらい空ける 〉
そう打ち込むと、検索結果にはいくつかのブログやサイトが並ぶ。玲奈は上位に表示されたブログを選んで読み進めた。
《誘いを断られた場合、しつこい印象を与えないためにも、最低1週間前後は空けるのが無難です。》
(えぇ…1週間かぁ…長いなぁ…。)
玲奈は右手に箸を持ったままぼんやりと考えた。
(それってレンくんにも、一週間以上は会えないってことだよね……。)
続く
(この物語はフィクションです。実在する名前及び団体とは一切関係ありません。)
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