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【長編小説】私がホス狂と呼ばれるまで #9
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主な登場人物
福井玲奈:26歳のOL。柔らかい雰囲気と愛嬌で人に好かれる性格だが、どこか流されやすい一面もある。中学時代からの親友・友香を大切にしており、周囲からの評価も良いが、プライベートでは孤独を抱えている。
レン:本名、島崎廉也。ホストクラブの人気ホスト。客の心を巧みに掴み、お金を引き出すプロフェッショナル。表向きは明るく魅力的だが、本心は計算高く、冷静に利益を優先する人物。
田辺友香:玲奈の中学時代からの親友で、数少ない信頼できる存在。明るく気さくで、困っている人を放っておけない性格。社会人になっても玲奈との関係を続けており、彼女を心配している。
9-1 錯綜する心
玲奈はスマホを握りしめ、画面に映る送信前のメッセージをじっと見つめていた。
「レンくん、明日の同伴、いつもの時間で空いてる?」
送信ボタンを押そうとするが、なかなか押せない。佐藤の言葉や、友香の心配そうな顔も浮かぶ。それでも、レンへの渇望が玲奈の心を支配していた。
レンくんに会いたい ――
その瞬間、スマホが振動し、友香からの着信が画面に表示された。
玲奈は驚き、一瞬身体が固まる。今出たら、友香にまた引き止められるのではと思う反面、無視することへの罪悪感もあった。結局、数秒間の逡巡の後、通話ボタンをタップした。
「玲奈、今大丈夫?突然電話してごめんね。」
友香の声はいつもより少し緊張している。
「うん、大丈夫。」
玲奈は平静を装ったが、心臓がドキドキしていた。
「良かった…。なんかね、玲奈のことがやっぱ気になっちゃってさ。ちょっと話せる?」
「…うん、大丈夫だよ。」
友香は慎重に言葉を選んだ。
「玲奈、あのカウンセリングのこと、どう思ってる?私や佐藤先生が玲奈を逆に追い詰めてないかなってちょっと心配で…。」
「別に…私が感情的になりすぎただけだから…。」
玲奈の言葉にはどこか冷たい響きがあった。
「そんなことないよ。でも、玲奈の状況が少しでもいい方向にいけばいいなって、ただそれだけで…。」
その言葉に、一瞬玲奈の心が揺れたが、すぐに頭を振って意識を切り替えてしまう。
玲奈の頭の中には、友香の言葉よりもレンへの想いが渦巻いていた。「今すぐレンくんに会いたい」という気持ちが抑えられない。
「玲奈、今度一緒に何か楽しいことしない?昔みたいにカフェ巡りとかさ。最近良さそうなカフェ見つけたんだよね!」
その提案に、玲奈は少し考えた。昔はそんな普通のことが楽しかったはずなのに、今では何も魅力を感じられなくなっている自分に気づき、答えに詰まった。
「…あ、うん。ありがと。考えておくね…。」
玲奈が通話を切った後、再び画面にはレンへの送ろうとしていたメッセージが表示されていた。
(…私にはやっぱり……)
玲奈の指と送信ボタンの距離は確実に近づいていた ―――
9-2 玲奈の幸せ
玲奈は送信ボタンを押した瞬間、胸の中に湧き上がる高揚感を抑えきれなかった。しばらくして、レンからの返信が届いた。
「ありがとう、玲奈ちゃん!俺はイタリアンとか食べたいかな~?」
「イタリアン!玲奈も食べたかったの!もちろんレンくんと!!」
レンの期待に応えるべく、玲奈は評判の良い高級イタリアンを予約した。ネットで雰囲気やメニューをチェックしながら、「レンくんが喜んでくれるかな」と自分の中で何度も確認した。
結局、玲奈の日常はレンを中心に再び回り始めた。仕事中も、ふとした瞬間にレンの笑顔を思い出しては、幸せな気分に浸る。レンのために服を新調し、ネイルもレンの好きなカラーに整えた。
(レンくんと一緒にいる時間が、私の全てなんだ…。)
その間も、友香からのメッセージが頻繁に届いたが、玲奈はあえて元気な文面で返した。
「最近どう?無理してない?」
「大丈夫だよ!ホストも辞められそうだし、今ちょっとずつ落ち着いてるの!」
玲奈は嘘だと分かっていながらも、友香を安心させるために明るい言葉を並べた。そして、「またカフェとか行こうね!」と友香の誘いを巧みにかわし続けた。
玲奈の中では、レンとの約束の日が最優先だった。友香に心配されることで、もしレンに会うことを妨害されるような事態になれば、それこそ耐えられないと感じていた。
(友香には申し訳ないけど、私はレンくんとの幸せを優先したい…。)
不思議と、この気持ちだけは迷いがなかった ――
続く
(この物語はフィクションです。実在する名前及び団体とは一切関係ありません。)
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