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任天堂のゲーム大会ガイドラインのポイントと若干の解説(速報)
2023年10月24日、任天堂から「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」が発表されました。
QAを含めやや長いガイドラインであり、混乱が生じている部分もあるようですので、速報的にガイドラインのポイントの整理を試みました。
何かの参考になれば幸いです。
※ 適宜修正を行う可能性があります点、ご了承ください。
第一 申請の要否
1.申請不要で開催できる大会
①日本国内で開催される大会or日本国内に居住する方が主催する大会
②出場者が個人または非営利のチーム
③営利を目的としない
④小規模(出場者がオンラインで300人以下orオフラインで200人以下)
かつ
⑤主催者が個人(またはA13で認められた学校のサークル)
②出場者について
いわゆるプロゲーマーや企業所属の配信者の方が出場可能か、との点が気にかかりますが、QAでは「法人や団体に所属する者でも、法人や団体の業務としてではなく、所属する法人や団体の立場を離れ、個人の活動としてコミュニティ大会を主催したり、コミュニティ大会に出場したりする場合は、このガイドラインの対象になります」との記載があります(A8)
そのため、いわゆるプロゲーマーや企業所属の配信者の方も、個人の活動としてであれば、このガイドラインの大会に出場することが可能と考えられます。
③営利目的について
④小規模との点について
⑤主催者が個人との点について
2.申請のうえ許諾を得て開催できる大会
①日本国内で開催される大会or日本国内に居住する方が主催する大会
②出場者が個人または非営利のチーム
③営利を目的としない
④小規模(出場者がオンラインで300人以下orオフラインで200人以下)
かつ
⑤主催者が法人or団体
全体
法人・団体が主催する場合、ガイドラインの規定への変更を申請することが可能です(法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請の申請フォーム参照)。どこまでの変更が許諾されるのかは不明ですが、ガイドラインで禁止されていることでも、法人・団体主催の大会であれば、許容される可能性がある点は、重要なポイントと考えます。
④小規模との点について
個人主催の場合とは異なり、申請時にガイドラインを超えた出場者数の申請フォームが設けられています(法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請の申請フォーム参照)。
許諾の基準は不明ですが、512名のオンライン大会が申請例として示されていますので、この程度の人数であれば許諾を受けられる可能性があるかもしれません(「ゲーム大会を計画、主催される方へ。「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開。」)。
申請について
「ゲーム大会を計画、主催される方へ。「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開。」が公開されており、参考になります。
「許諾申請後、おおよそ2~3週間以内には許諾の可否の返答がされる予定」とのことです。
「株式会社ポケモンから発売されているゲームソフトシリーズのタイトルはこの申請フォームの対象外」「株式会社ポケモンにお問い合わせください。」との明記があります(法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請の申請フォーム参照)。
その他は上記「1.」の注意点と同様です。
3.申請をしても開催できない大会
上記のいずれの条件も満たさない場合、開催ができません。
例えば、営利を目的とする場合、個人、団体、法人問わず申請を行っても開催ができない点は注意が必要です。
現在、営利を目的とするゲーム大会の許諾申請は受け付けておりません。
なお、現在、任天堂は、個人が主催する営利を目的とした大会への個別の許諾を行っておりません。ご了承ください。
また、許可されていない大会の例として、以下のような例も挙げられている点も注意が必要です(A3)(ただし、法人・団体が主催する場合、ガイドラインの規定への変更を申請することが可能であることは前述のとおりです)。
・YouTubeチャンネル等の配信チャンネルの登録やXアカウント等のSNSアカウントのフォロー、有料メンバーシップへの加入を参加条件や視聴条件にしている大会
・出場者に出演料等の費用が支払われる大会
・飲食物や商品の販売を伴う大会
第二 開催にあたっての遵守事項
1.出場料
・成人の主催者は、オフラインのコミュニティ大会の出場者から、一人につき税込み2,000円以下の出場料を徴収することができます。
オフライン大会のみ出場料を徴収可能である点に注意が必要です。
なお、法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請のページでは、出場料の規定について変更を申請することができ、法人・団体の主催大会では、2000円を超えても許諾される場合があるようです。
2.観戦料
・成人の主催者は、オフラインのコミュニティ大会の観客から、一人につき税込み1,500円以下の観戦料を徴収することができます。
※どのような名目であっても、オンラインのコミュニティ大会の観客から料金を徴収しないでください。
出場料と同様、オフライン大会のみ観戦料を徴収可能である点に注意が必要です。
なお、法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請のページでは、観戦料の規定について変更を申請することができ、法人・団体の主催大会では、1500円を超えても許諾される場合があるようです。
3.景品
・成人の主催者は、出場者に対する景品として物やサービスを提供することができます。ただし、現金や金券、電子マネー等の金銭と同様の価値のあるものや、市場価格で概ね総額で税込み50万円を超えるもの、Q17で別途指定するものは、景品として提供することができません。
※一人の主催者が直近1年間のコミュニティ大会を通じて提供できる景品の総額は、市場価格で税込み100万円未満にする必要があります。
(中略)
・法令遵守の観点等から、徴収する出場料および観戦料は、大会設営費用に充てる目的のみに利用し、景品購入費用には充てないでください。また、徴収する出場料および観戦料の総額は、大会設営費用の総額を超えないようにしてください。
・出場料または観戦料を徴収する場合、主催者は、出場者および観客に対して、徴収された出場料や観戦料が大会設営費用に充てられることを明示するとともに、出場料、観戦料や景品購入費用を含む大会の開催費用に関する全ての会計書類を、誰もが閲覧可能なウェブサイトやSNSに直ちに掲載し、公開してください。
A4では、より具体的な指示があり、最大出場者数、最大観客数の設定を行い、出場料・観戦料を掛けた金額が大会設営費用を上回らないようにすること、超過した場合は還元することが求められています。
こちらは、刑法(賭博罪)と風営適正化法を意識した記載と見受けられます。
ごく簡単に説明しますと、出場料を集め、ゲームの勝敗でこれを奪い合うような構造(賭けゲーム的な構造)になりますと、賭博罪が成立する可能性があるため、「出場料はあくまで運営費であり景品購入費用ではない」という形式を取る必要があります。
風営適正化法では、オフラインの大会で出場料を得て、ゲームをプレイさせることがいわゆる「ゲームセンター等営業」に当たる可能性がありますが、出場料が運営費に充当されていれば問題ないとされています。
これらは、(任天堂ではなく)参加者・主催者が刑罰を受ける可能性があり、その意味で、参加者・主催者を守る意味合いもある規定と考えます。
なお、景品表示法を想起される方もいらっしゃるかもしれませんが、ゲーム会社が提供する景品ではありませんので、景品表示法は無関係と考えます。
4.対価・スポンサー
・このガイドラインで明示的に認められた場合を除いて、コミュニティ大会に関連して対価を受け取ることはできません。
(中略)
・コミュニティ大会の開催において、スポンサー等の第三者から物やサービス、金銭等の提供を受けることはできません。
営利目的での運営はNGとの点を別の観点から記載したものと考えられます。
なお、法人・団体が主催する場合、ガイドラインの規定への変更を申請することが可能であり、例として、「第三者であるXXXから、大会運営に必要となるXXXという物品の提供を受けたい」といったものが挙げられています(法人・団体によるゲーム大会への個別許諾申請)。
どこまで許諾されるかは不明ですが、法人・団体の主催については、第三者からの物品提供を一定程度、許容するようにも見えます。
5.大会動画の収益化
・出場者から事前に同意を得た場合に限り、主催者は、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」に基づき、個人のアカウントを通じて、コミュニティ大会に関する動画や静止画等の投稿を収益化することができます。
※一人の主催者が直近1年間にこれらの投稿から得る収益の総額は、税込み100万円未満にする必要があります。
いわゆる配信ガイドラインに準拠して収益化可能とのことですが、100万円未満との上限に注意が必要です。
なお、A7には、「YouTube等の配信プラットフォームによって挿入される広告を除いて、配信する動画や静止画等に広告(特に、第三者の広告やロゴ等)が写り込むことのないようご注意ください。」との記載もあります。
6.掲出事項
主催者は、コミュニティ大会の会場内やウェブサイトその他の告知物に以下の事項を掲載してください。
・「この大会は、任天堂の協賛・提携を受けたものではありません。」という文言。
・「コミュニティ大会への出場および観戦に関する規約」という文言と以下のURLへの誘導。
https://www.nintendo.co.jp/tournament_guideline/rules.html
7.大会名
・事実に反して、任天堂がコミュニティ大会に関与、協賛または提携していると示唆したり、大会が任天堂の「公式」・「公認」であると表示したりすることはできません。
・コミュニティ大会の名称の中に、任天堂の社名やロゴ、ゲームタイトル等の商品やサービスの名称、キャラクター名等の任天堂のゲームから採用された名称その他の任天堂の商標や知的財産のほか、これらを省略または改変したものを使用することはできません。
大会名についてもやや細かいルールが定められています。
「ゲームタイトル等の商品やサービスの名称…を省略または改変したものを使用することはできません。」との点は少し気になる方も多いかもしれません。
ただ、「ゲーム大会を計画、主催される方へ。「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開。」では、「社会人スプラエンジョイ大会」との大会名が例として入力されており、「スプラ」との表記は許容される可能性もありそうです。
※現に大乱闘スマッシュブラザーズシリーズの大会について、「●●スマ」「スマ●●」といった大会名が許諾されたとの報告もあるようです(2023/10/25追記)。
大会名については、Q5,Q6にも記載があり、参考になります。
・「コミュニティ大会の大会名として、第三者の法人名、団体名、商品・サービスの名称、屋号等をつけることはできません。」(A5)
・「任天堂の商標や知的財産を大会の名称の中に使用することはできません。」(A6)
・「ただし、コミュニティ大会でどのゲームがプレイされているかを示すための説明文の中でゲームタイトル名を使用することはできます。同様に、コミュニティ大会の大会名に任天堂のキャラクター名を含む名称をつけることはできませんが、例えば、使用可能なキャラクターを挙げるための説明文の中でキャラクター名を使用することはできます。」(A6)
8.告知
・コミュニティ大会においてプレイされるゲーム名に言及する場合を除き、コミュニティ大会での活動や告知に際して、ロゴやキャラクターのイラスト等の任天堂の商標や知的財産を使用することはできません。
告知に任天堂の知的財産を使用してはならないとの記載があります。
ただ、A2では「任天堂のゲームからキャプチャーした映像やスクリーンショットをコミュニティ大会の告知物に掲載する場合を除き、 任天堂のゲームのロゴやキャラクターイラスト、イメージイラスト、音楽や効果音等は、コミュニティ大会の告知や会場の装飾、会場のBGMにはご使用いただけません。」との記載があり(太字筆者)、キャプチャしたものの告知物への利用は許容されるようです。
以上、ざっとポイントごとにガイドラインの記載を整理いたしました。
参考になれば幸いです。
なお、分量の都合上、適宜、内容は捨象して記載しておりますのでご了承ください(例えば、法令違反の大会が許されないことや、海賊版や改造版が利用できないことなど)。
大会を開催する際には、改めて最新の「ゲーム大会における任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」をご確認ください。