『Starfield』航天日誌 5、6日目

【注意!】この記事はネタバレだらけです

航天5、6日目を終えて

 ネオンへ。街に到着したら、そこら辺を見て回りつつ、小さな人助けクエストを2、3こなしてみると、街のことがよくわかる。ここはバユーと言う市長がのさばり、巨大企業と癒着しつつ、まっとうな商売をしている個人商店経営者たち相手に法外な地代や税金をかけて左うちわで暮らしているらしい。全く以て嫌な親近感の湧く話だ。ドラッグを決めて踊れるラウンジが1階にある巨大なビルの前には、市長の姿をかたどった金ピカの像がある。そんな像を作ったと言うだけで、すでに死に値する罪だ。ホテルを経営している女性は、バユーのペントハウスのことを、彼の「自意識パフェ(ego sunday)」のてっぺんのチェリーだと言っていた。うまい表現だ。

 ストラウド氏の会社に行くと、彼の共同経営者であり妻でもある、イッサという女性と会うことになった。とびきりクレバーで魅力的で、少し怖い人だ。彼らの夫婦関係は独特で、どんな会話をしていても、ずば抜けて賢い人間同士が話す時特有の、真剣でつばぜり合いをしているような緊張感がある。良い夫婦だ。他の人間では会話の相手として不足なのだろう。
 結婚と言う制度がこの時代にもまだ残っているのは驚きだが、ネオンには意外にも素敵な夫婦が何組かいる。雑貨屋を営んでいる男女の夫婦の馴れ初めもかわいらしかったし、治安の悪い地域で素晴らしい料理店を営んでいる男性同士の夫夫も愛情に溢れていて、店の応援がしたくなった。

 いろいろあって、アーティファクトを手に入れるために金を払う以上の苦労をしなければならなくなった。ドンパチである。ストラウド氏が警備員相手に素手で立ち向かって行ったときには笑ってしまった。


 ネオンを離れると、スターボーンと名乗る謎の存在がコンタクトしてきた。しかし、そのコンタクトの方法は、頭の中に直接呼びかけるでもなく、変わった形の宇宙船に乗った存在として交信し、脅しをかけてくるというものだった。その技術は人間のものをはるかに超えているが、人間にとって全く理解不能な手段を用いているわけではない。

 以降、アーティファクトや聖堂のある場所に、スターボーンのガーディアンが待ち伏せをするようになった。強いが、強すぎると言うほどでもない。光のゆらめきのような存在であるが、像を結ぶと銃を持った人の形になり、こちらを攻撃してくる。この存在は、もともと人間に似た形態で二足歩行をする生物であり、光の揺らめきを通してこちらに干渉してきているのか、それとも全く別の形態の存在で、便宜上人間の姿を模倣して私の前に現れているのか、それは今のところ定かではない。できれば後者であって欲しい。この世界にはもうすでに人間が多すぎる。


 『Starfield』をやっていると、自分が本当に人間が嫌いであることがよくわかる。宇宙は広大で、厳しい環境下で生きている人間は、小さな拠点に少ない人数で点在している。宇宙の探索可能領域が広くなればなるほど、人口密度が減じ、人恋しくなるかと思えば、実は全然そうではない。むしろどんな過酷な星にも人間がシロアリのように巣食っていて、人影のある拠点を見つけるたびに、降り立った星が使い古されたぼろ布のように思えてしまう。『Starfield』の宇宙には、「引き合う孤独の力」が働いているようには思えない。私は1人で食事ができる場所を求めて大きな構造物の中をさまよっているのに、どの階段の下の空間にも、どの倉庫にも、どの屋上の室外機の裏にも先客がいる。そんな気分だ。人混みは得意じゃないが、それでも街中で人に会うほうがずっと良い。街とは、人がいることを定義の1つにしており、妥協と失望を前提とした空間だからだ。


【以降特に重要なネタバレあり】







 蒐集家からアーティファクトを奪取した後、過酷な展開に立ち会うことになった。〈アイ〉の修理に携わっていたメンバーがスターボーンに急襲され、サムが命を落とした。

 ロッジに〈アイ〉からの通信があった直後、ロッジの2階でストラウドの喉元をスターボーンが押さえ、銃を突きつけていた。私はそこへ駆け寄り、ストラウドを避難させたが、これはおそらくストラウドとサムの命を天秤にかける選択だったのだろう。私は近くで聞こえる悲鳴に向かい、ストラウドを助けた。それはとっさに取った行動であったがゆえに、後悔は無い。結果があり、それを悲しく思う気持ちがあるだけだ。

 血だまりの中で倒れているサムを見たとき、彼が短期間のうちにあまりにも多くのことを語り、あまりにも正直に心を開いてくれたのは、このシナリオがあったからなのだろうと思った。彼からはほんの少し前に、コラの母親に関する話を聞いていた。良い母親とは言い難い人物像が描写されていたが、きっと彼女にいつか会うことになるのだろう。サムにはこの物語の顛末を見せてやれないのか。何よりコラにつらい思いをさせてしまうことに胸が痛む。

 スターボーンに対する失望は決定的なものとなった。彼らが人間であれ、異性生物であれ、宇宙の外部から多元的世界を見下ろすことができる超越的な存在であれ、その言動は、最も悪しき意味において“人間的”だ。彼らの口ぶりには、高圧的で説明を拒む傲慢さがあるし、銃を撃ってくる際に発する言葉には明らかな暴力性が見て取れる。そして人間を殺すことをなんとも思っていない。街の無名の人々も殺された。
 要するに、彼らはつまらないのだ。彼らは訳知り顔で大仰な身振りをする退屈な存在だ。そのことに何よりも腹が立つ。この失望と怒りは2300年代の人間たちに対する「高い技術を持っているのにいまだにこんなことをしているのか」というぐったりとした気持ちを拡張したものだ。

アーティファクトは、もしかしたら、スターボーンを止めるために用意されたものなのかもしれない。

コラをコンステレーションの皆で守らなければ。

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