雄平は春が嫌いだ。夏は冷房で暑さを凌げる。冬は暖房で寒さを越せる。秋は過ごしやすい。だけど、花粉はどうやっても防げない。 「ま、窓開けようか」 「花粉症ひどいのに無理してやらなくても」 雄平はすぐに床が見えない部屋を片付け始めた。麻子が部屋に入ってきたからだ。二十歳になった麻子は幼い姿から綺麗な女性へと変わったけれど、声色も顔の雰囲気も彼女の面影が残っている。 「ごめん、ベッドくらいしか座るとこないや」 「アポ無しで来たのはこっちだし、長居するわけじゃないから大丈夫だよ」