失敗量と組織的なパワハラ
スポーツ選手は試合時間よりも練習量が多い。高校球児はたった数回の公式戦向けて、3年間と言う青春を練習時間に捧げる。他のスポーツもほぼほぼそうだろう。
仕事に関してはどうだろうか。ITエンジニアとしての本番は、実業務における日々のタスクがそうだ。毎日が本番であるが、必要なトレーニングを積む時間が極端に短い傾向にある。
なぜなら仕事として現場を回さなければならない以上、失敗している暇がないからだ。業務上のタスクをこなすよう指示しなければならず、「3回まで失敗していいので成功させてください」といった指示はなかなかできない。
では、いつトレーニングを積めばいいのか。
家に帰ってからやりなさいと言うのもはばかられ、プライベートな時間を業務のために費やすかどうかは個人の自由という考え方が広くあるためだ。残業して学習していきなさいとなれば、能力を身につけるために残業させるブラック企業とみられるだろう。
つまるところ、圧倒的にトレーニング量が少ないにもかかわらず、本番での失敗は業務上のミスとしてカウントされてしまう。これはなかなかにしんどい所業であると言える。
成功するためには失敗の量がモノをいう。
私は失敗したことがない。
ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。
- トーマス・エジソン
ではいつ失敗経験を積んでおけばいいのか、これは業務上の時間内に失敗体験を与えられないため、自分でこっそり自宅などで自習するしかない。自宅での学習での質問に付き合ってくれる先輩たちもいなければ効率良く学ぶことも難しいだろう。業務時間外に先輩にメッセージを送って質問するような根性のある人材ならよいが、大半は遠慮してコミュニケーションがとれず籠りがちになるだろう。
なによりその所業を楽しいと思うことがなかなかできないだろう。仲間もいなければ、どうしていいかもガイドラインがないので、成功体験にたどり着くまで当てずっぽうな学習を繰り広げることになる。いつかその体験が結び付くことは想像できても、それは果たしていつになるのか確証を得られることはない。
「業務上でのミスとカウントされないように、危機感を抱かせて自習させる」しかも「その時間帯は給与も払わなければ、組織的に能動的な支援をする約束はできない」、というのが多くの企業の在り方だ。
これは、組織的なパワーハラスメントと言っていいのではないだろうか。
せめて、教育用の教材を提供をしなければならないのだが、多くの企業ではその教材を提供する先輩社員の時間も勤務時間には設けることを許されない。一人前として立ち上がるまでの技術力をつけるための教材は、内製化することが難しい状況にあることが多い。
つまりは外注せねばならないのだが、多くの経営者はこの教育に投資する点について抵抗を示すきらいがある。世の中には多くの勉強会が開催されており、ハンズオン形式での勉強会も多く開催されているが、その場でたくさんの失敗経験が得られるメリットがある。
これらの勉強会向けのサイトでは毎日のように数多くの有志による勉強会が開催されており、なかにはぐだぐだなものもあるようだが、それはそれで失敗体験が積めるので良い機会だと考えている。
私も社員に自腹で受講費を支援して赴いてもらったのだが、まさにそういうレベルだったようだ。初心者向けの勉強会なども多くあるので、小さなトラブルに主催者が翻弄されているうちにタイムアップ!なんてこともあるようだ。その経験も重要で、時間という有限資産について考えるきっかけとなるだろう。
これからITエンジニアを目指す人にはぜひこういった会への参加をお勧めしたい。組織的にもどんどんこういった勉強会への参加費用を負担し、外部の風に触れてくるような社員を育成したほうがよいだろう。
閉鎖的なパラハラ組織こそ、ブラック企業そのものだ。
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