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絵本・白峰アカネの冒険/3. アカネ、頭が真っ白になりかける


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1.魔獣退治

 市役所を出たアカネの耳に、「ひぇ~」という悲鳴が飛び込んできた。声の方に目を向けると、箱を胸に抱えた老人が魔獣に襲われていた。
 アカネはバックパックを放り出し、右手を差し出しながら魔獣に向けて気を放った。アカネの首飾りの玉が紐から離れ、魔獣に向かって飛んでいく。
 魔獣は顔の前に両手をかざして玉を防ごうとしたが、玉は魔獣の手の上下左右から回り込んで魔獣の頭部に殺到し、魔獣はどっと音を立てて倒れた

魔獣を攻撃するアカネ

2.クレーム

 アカネが魔獣を封印しに近づこうすると、後ろから「てめぇ、止まれ!」と女性の金切り声が飛んできた。
 振り返ると、魔祓いの巫女の制服に似ているが、もっとドギツイ衣装に身を包んだ女性が、アカネたちが魔獣退治に使う宝剣そっくりな剣を手に駆け寄ってくる。女性は、アカネに追いつくと。剣をアカネにつきつけた。

剣を手にした女性に詰め寄られ驚くアカネ

女  性:あたしのシマで、勝手に魔獣を退治しやがったな!

アカネ:魔獣に襲われていた人を助けたんです。

女  性:魔獣がぶっ倒れてるじゃねぇか。退治したんだろうが。

アカネ:そう言われれば、そうですけど。でも、目的は人助けで……

女 性:うるせぇ! 巫女仲間のシマを荒らしたら禁固5年だってことを忘れたのか、このボケ! 

アカネ:え、あなたは魔払いの巫女なんですか?

女 性:そうやってボケまくってたら見逃してもらえるとでも、思ってるのか。

アカネ:いえ、何がどうなってるのか、本当に分らなくて。

 頭が真っ白になりかけているアカネの横で、女性はポケットから携帯電話を取り出すと、警察に連絡を取り始めた。
 そこに、紫の衣装をまとった長身の女性が現れた。

3.救いの神?


仲裁に入る紫の衣装の女性

紫の衣装の女性:サキ、警察をよぶ必要はないよ。

言葉遣いの荒い女性:あ、組長、いらしてたんですか。

紫の衣装の女性:役所で用を済ませて帰るところだよ。このお姉さんは山から下りてきたばかりで、ここの決まりは何もわかってないよ。私がちゃんと教えとくから、この場は見逃してやんな。おねえさんがやっつけた魔獣は、あんたの獲物として警察に届ければいい。

言葉遣いの荒い女性:じゃ、あとのこと、よろしくお願いします。

言葉遣いの荒い女性が、紫の衣装の女性に向かって深々と頭を下げると、魔獣が倒れている方へ歩み去って行った。

アカネ:どなたか存じ上げませんが、おかげで助かりました。

紫の衣装の女性:安心するのは、まだ早いよ。大事な話は、これからだ。

アカネ:はぁ...…

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