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絵本・白峰アカネの冒険/10. アカネ、「組長」の力の正体に興味を持つ


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 アカネは、老人とアキト、「組長」の関係を知りたかったが、そういうプライベートなことを質問できるほどには二人と親しくないと思い、控えた。
 アキトと老人の会話から、アカネはアキトがフリー・ジャーナリストで、以前からフモトノ市の不正を追及していることを知った。アキトはフモトノ市にいると監視の目がうるさいと言って、隣町に借りているアパートに引き揚げていった。
 アカネは老人の厚意に甘えて店に残ることにした。老人は、力持ちのアカネがいてくれるので懸案を片付けられると喜んで書棚の再配置プランを立て、次の日からアカネが作業に取り掛かることになった。
 次の日の午後、本を入れ替えていたアカネは、老人が嘆く声を耳にした。

アカネ、老人の歎きを耳にする

老人:あの子は、すっかり変わってしまった。確かに、もともと気は強かったが、心が真っすぐで、なにより弱い者イジメが大嫌いな子だったのに。

アカネ:もしかして、「組長」のことですか? 昔からお知り合いなのですか?

老人:あの子の名前はミネノ・リンと言ってね。一家でアキトの家の隣に住んでいたんだ。二人は幼馴染だ。リンちゃんが14歳のときに一家が突然姿を消した。10年後にリンちゃんが独りで戻ってきたが、そのときは、もう、ああなっていた。

リンの力の正体を考えるアカネ

老人:どうして謎なのかな?

アカネ:白峰山では、魔祓いの力は白峰山で生まれ育った女子にしか現れないと言われています。それが事実とすると、ふもとで生まれ育ったリンさんが身につけた力は、魔祓いの力に似た別の何かです。

老人:なるほど。

アカネ:でも、白峰山に私が知らない特別なコースがあって、外から受け入れた人間に魔祓いの訓練をしていないとは言い切れません。その場合は、リンさんの力は、私たちの魔祓いの力と同じものかもしれないし、訓練コースが違うのだから別の力かもしれません。

老人:気になるかね?

アカネ:気になるというより、興味があります。私たちの魔祓いの力の他にも似た力があったら、面白いと思います。

老人:しかし、そうなったら、魔獣退治を独占できなくなるよ。

アカネ:魔獣を倒せるのは今のところ私たちだけです。でも、だからといって、私たちが最適任とは限りません。実際、私たちの力では封じきれない魔獣もいるんです。リンさんが私たちとは別の力を持っていて、その力で私たちが抑えきれない魔獣も封印できたら、その方が、この国にとって安全安心です。

老人:そうなったら、君は失業してしまうかもしれないよ。

失業は困ると訴えるアカネ

アカネは笑いながら仕事に戻るのだった。

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