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絵本・白峰アカネの冒険/1. はじまりはじまり

超自然的な力を持ち人々から「魔獣」と恐れられる生き物と闘う「魔祓いの巫女」のひとり、白峰アカネの冒険を絵本形式で描いていきます。


1.「魔獣」と「魔祓いの巫女」

 ここは、地球をはるか離れた銀河系の地球型惑星ヒダカミノⅡ。この星の北半球に位置するヤシマ国の白峰山(シラミネヤマ)には、太古の昔から超自然の力を持つ種々の生き物が生息していた。生き物たちは、しばしば山を下りてふもとの人々に危害を加えたため、人々から「魔獣」と呼ばれて恐れられるようになった。

白峰山(ヤシマ国)

  一方、人々の間には、ごく少数ながら魔獣に対抗できる特殊な力を持つ者が存在した。この能力はなぜか女性にだけ現れ、魔獣と対等に闘える女性は「魔祓いの巫女」と呼ばれ人々の畏敬の対象となった。 
 300年前、時の国王は、国中の魔払いの巫女を集め白峰山の中腹に移住させた。彼女らの力で魔獣を永久に封じ込めようとしたのだ。 
 その後200年にわたり魔払いの巫女と猛獣の間で激烈な闘争が続いた。しかし、勝敗の決着はつかず、双方ともが疲弊していった。 
 100年前、両者は停戦条約を結び、白峰山の五合目を境に、そこから上を魔獣、下を魔祓いの巫女で棲み分けることとした。魔祓いの巫女たちは五合目の山体斜面に沿って幅20メートルの結界を張り、両者の境界線とした。 
 しかし、結界は不安定で、ひんぱんに破れ目が現れ、そこを通り抜けた魔獣と魔祓いの巫女の間で小競り合いが耐えなかった。結界を抜けた魔獣の一部がふもとの人間社会に現れ人々に危害を加えることもあった。

2.ある日の小競り合い

 ある日の朝、魔祓いの巫女・白峰アカネは、結界の点検中に破れ目を見つけた。

結界の破れを発見したアカネ


アカネ:うわ、この破れ目は大きい。しかも、二人分の小さな足あと……子どもが「魔獣ゾーン」に入り込んだんだわ。魔獣と出くわさないうちに連れ戻さないと。

 破れ目をくぐろうとしたアカネの耳に子どもの悲鳴が飛び込んできた。悲鳴の元に駆け付けると、一匹の魔獣が子どもたちに襲いかかろうとしている。アカネは、子どもたちと魔獣の間に割って入り、魔獣を大声で制した。

「魔獣」を威嚇するアカネ

アカネ:止めなさい! 子どもたちには、指一本触れさせないわよ。ケガしたくなかったら、大人しく引き上げなさい!

魔 獣:グワーッ!

アカネ:それなら、これを食らいなさい。エイッ!

 アカネが気を発すると、首飾りの赤と青の玉が、玉をつなぐ紐から離れて宙を飛び、魔獣の顔面に殺到した。猛獣は最初の二発をくらったところで悲鳴を上げた。

魔 獣:(テレパシーで)痛い、痛い! 降参です! 

アカネ:えっ、もう降参なの?

アカネは慌てて残りの玉を手元に引き戻した。戻った玉は首飾りの元の位置に自分から収まっていく。
「魔獣」は、エンエンと泣き出した。

アカネ:(魔獣に)あんた、泣いてるの? だから、止めろって言ったでしょ。(子どもたちに)さぁ、帰るわよ。わたしたち、「魔獣ゾーン」に無断で入ってるんだからね。急いで出ないといけません。

子どもたちがアカネの手にすがりついてきた。アカネの身体の陰から、こわごわ魔獣の様子をうかがっている。アカネは子どもたちと結界に向かう前に、泣き続けている魔獣の肩をたたいて話しかけた。

アカネ:二度と、子どもたちを恐がらせないこと。わかった?

魔 獣:(泣きながら)はい。

アカネ:わかったなら、よろしい。じゃ、さよなら。

魔獣に言い聞かせるアカネ


3.魔獣の事情

アカネが子どもたちを結界の破れ目から「巫女ゾーン」に戻すと、アカネの頭のなかで「魔獣」のテレパシーが聞こえた。

魔 獣:あのぅ......お詫びがしたくて。

アカネ:お詫びなんか、いいです。子どもたちは、もう、あなたの顔を見たくないと、思います。

魔 獣:では、あなたに。

アカネは「私が詫びてもらって何になるんだ」と思ったが、魔獣の声には無視できない気配があった。自分は結界の破れ目を直すからと理由をつくり子どもたちを先に村に帰らせると、アカネは魔獣のもとに引き返した。
魔獣はアカネに子どもたちを脅かすことになった事情を話すのだった。

魔獣の悩みを聞くアカネ

アカネ:そっか。「魔獣学園」の野外実習で、魔獣らしいことをしなきゃいけなかったんだ。

魔 獣:そうなんです。ちょっと恐がらせるだけで傷つける気はなかったんです。

アカネ:恐がったら、心が傷つきます。

魔獣:・・・・・・

アカネ:子どもを恐がらせるなんて、安直すぎ。発想が貧困です。

魔獣:そうでしょうか?

アカネ:そうよ。第一、カッコ悪い。もっとマシなこと、考えなさい。

魔獣:うーん、どんなのがイイでしょう?

アカネ:それ、わたしに聞くこと?

魔 獣:違いますよね……でも、他に相談できる相手がいなくて。

アカネ:先生とか先輩とか友だちとか、いるでしょう?

魔 獣:魔獣学園の方針は「完全自己責任・独りガンバレ」なんです。

アカネ:じゃ、なんで、わたしに聞いてるの?

魔 獣:おねえさんは、魔獣じゃないからです。

アカネ、岩からずり落ちる。

アカネ:あはは、あなた、面白いわね。笑わせてくれたから、ヒントだけあげる。でも、わたしは魔獣じゃなくて巫女だから、これが合ってる保証はないわよ。

魔 獣:(身を乗り出して)分かってます。失敗しても、おねえさんのせいにしないから、聞かせてください。

アカネ:うん、それはね……


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