超自然的な力を持ち人々から「魔獣」と恐れられる生き物と闘う「魔祓いの巫女」のひとり、白峰アカネの冒険を絵本形式で描いていきます。
1.「魔獣」と「魔祓いの巫女」
2.ある日の小競り合い
アカネ:うわ、この破れ目は大きい。しかも、二人分の小さな足あと……子どもが「魔獣ゾーン」に入り込んだんだわ。魔獣と出くわさないうちに連れ戻さないと。
アカネ:止めなさい! 子どもたちには、指一本触れさせないわよ。ケガしたくなかったら、大人しく引き上げなさい!
魔 獣:グワーッ!
アカネ:それなら、これを食らいなさい。エイッ!
魔 獣:(テレパシーで)痛い、痛い! 降参です!
アカネ:えっ、もう降参なの?
アカネ:(魔獣に)あんた、泣いてるの? だから、止めろって言ったでしょ。(子どもたちに)さぁ、帰るわよ。わたしたち、「魔獣ゾーン」に無断で入ってるんだからね。急いで出ないといけません。
アカネ:二度と、子どもたちを恐がらせないこと。わかった?
魔 獣:(泣きながら)はい。
アカネ:わかったなら、よろしい。じゃ、さよなら。
3.魔獣の事情
魔 獣:あのぅ......お詫びがしたくて。
アカネ:お詫びなんか、いいです。子どもたちは、もう、あなたの顔を見たくないと、思います。
魔 獣:では、あなたに。
アカネ:そっか。「魔獣学園」の野外実習で、魔獣らしいことをしなきゃいけなかったんだ。
魔 獣:そうなんです。ちょっと恐がらせるだけで傷つける気はなかったんです。
アカネ:恐がったら、心が傷つきます。
魔獣:・・・・・・
アカネ:子どもを恐がらせるなんて、安直すぎ。発想が貧困です。
魔獣:そうでしょうか?
アカネ:そうよ。第一、カッコ悪い。もっとマシなこと、考えなさい。
魔獣:うーん、どんなのがイイでしょう?
アカネ:それ、わたしに聞くこと?
魔 獣:違いますよね……でも、他に相談できる相手がいなくて。
アカネ:先生とか先輩とか友だちとか、いるでしょう?
魔 獣:魔獣学園の方針は「完全自己責任・独りガンバレ」なんです。
アカネ:じゃ、なんで、わたしに聞いてるの?
魔 獣:おねえさんは、魔獣じゃないからです。
アカネ:あはは、あなた、面白いわね。笑わせてくれたから、ヒントだけあげる。でも、わたしは魔獣じゃなくて巫女だから、これが合ってる保証はないわよ。
魔 獣:(身を乗り出して)分かってます。失敗しても、おねえさんのせいにしないから、聞かせてください。
アカネ:うん、それはね……
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