『ハーバード×MIT流世界最強の交渉術』交渉は「競争」ではなく「共創」という話
どうも。一般企業で人事の仕事をしているサラリーマンのうみんちゅです。
人事の仕事をしていると、採用といった華々しい場面だけではなく、あらゆる組織内コンフリクトや労働紛争、裁判、退職といったセンシティブな「交渉」に日々囲まれて過ごすことになります。しかしそれは致し方のないことで、私たちがビジネスの世界に身を置き続ける限り「交渉」は切っても切り離せないものなのです。
そんな訳で、今回は「交渉」に関する内容です。ハーバード・ロースクール交渉学講座の共同創設者でMITのローレンス・サスキンド教授の書いた『ハーバード×MIT流世界最強の交渉術』という本をご紹介いたします。
本書はWin-Winという言葉を世に知らしめた名著『ハーバード流交渉術』の限界を指摘し、現代の最新研究と実践成果から6つの原則(①交渉の土俵に相手を導く②付加価値を想像する③予想外の結果を期待する④交渉相手の勝利宣言を書く⑤自分の立場を守る⑥リーダーシップを発揮する)で、複雑化・高度化するビジネスシーンにおける交渉場面に対し、具体的なアドバイスを提供している新しい「交渉のバイブル」です。私は今までWin-Win型交渉と聞くと、双方が均等に取り分を分け合うことをイメージしていました。しかし本書では、交渉の持つ「競争的側面という脆弱性」と、「合意内容ではなく、交渉そのものを上手くまとめようとする人間の心理的弱点」において、Win-Win型交渉の限界が指摘されています。
多数決は最悪の意思決定方法
私たちは物事を決める時、疑う余地もなく多数決に頼ってしまいます。私が思う学校教育の弊害の一つに「多数決主義」があります。文化祭の催し物から修学旅行の行き先まで、全ての「決定」を議論もせずに多数決に委ねます。マイノリティーの問題もそうですが、それ以上に問題なのが、日本の学校教育によって慣らされた私たちは「多数決以外の物事の決定方法を知らずに育つ」ということです。
社会を見渡すと、様々な政治的対立や宗教的対立が散見されます。しかし、ビジネスの世界では個人の信条や政治的立場に触れることはタブーで、あくまで中立でいる事が求められます。そんなビジネス界の姿勢を批判する学者や政治団体の方々をよくお見かけしますが、私に言わせれば、彼らこそが「社会で役立たない学校教育」の賜物でしょう。頭を上げて眺めてみると、社会を変える方法は意外とあります。政治家になったっていいし、新しい事業を社会に送り込み、経済のカンフル剤の役割を担ったっていい。投資家として社会にインパクトを与えられそうな事業に出資しても良いでしょう。私が新人の頃に言われたように、「提案なき批判には価値がない」のです。要するに、何の行動もせず、声を上げることなら誰だって出来るという話です。批判は常に建設的でなければいけません。
話が少し逸れてしまいましたが、自分の立場を延々と主張し続ける彼らとは違い、我々ビジネスマンはどんな状況下でも「決定」を下さなければなりません。
圧倒的多数による合意形成を目指す
本書では、主義・主張が対立する場面では、賛成派・反対派共同の調査によって事実を探ることが必要だと述べられています。これに基づき、多数決ではなく圧倒的多数による合意形成に持ち込む必要があるのです。
主義・主張が対立する場面では、お互いが自分たちにとって都合の良い情報のみを引き合いに出して対立する場面がしばしば見られます。お互いが共同で調査をすることで、情報に客観性が生まれ、自身が調査した情報であるならば、その事実に対する反論は出ません。また多数決で物事を決めると、意見が無下にされた少数派による強烈な抵抗や妨害工作に会う事が必須です。共同調査によって明らかになった事実をもとに、圧倒的多数による合意形成を目指しましょう。つまりは、全員一致の合意内容を取り決めなければならないのです。
簡単なことではないですが、多数決は将来の対立の火種に一時的に蓋をするだけで、むしろこちらの方が大きなリスクとなります。一度立ち止まって時間を取り、大多数が納得のいく形での合意形成をしましょう。この合意によって自身に不利益が被る場合には、受ける不利益を上回る利益を与える代替案を提示することが重要なのです。
一緒にパイ全体を大きくしていけばいい
交渉と聞くと次のようなイメージがありませんか?パイの取り合い、ゼロサムゲーム(一方が得すると他方が損する)、価値の均等分配、などです。事実、巷では「相手の心を操る方法」「相手にイエスと言わせる方法」というような「交渉の場は競争」という前提に立って、既にあるパイをいかにして相手よりも多く取るか、という点に議論が集中しているように思います。
しかし、交渉の場面において、実はもっとクリエイティブな選択肢があると知れたのが、この本の最も大きな収穫でした。本書では相手と協力してパイ全体を大きくする必要があると述べられています。付加価値を創造した上で、相手よりも多くのものを得ることが「交渉」の新しいスタンダードなのです。つまり、パイを「競争」で取り合うのではなく、パイそのものを大きくする方法を一緒に考える「共創」をしていきましょうよって話です。
「もし〜なら」という条件付きシナリオを提示することで、相手の食いつき度合いをはかり、状況が自分に対してどれくらい有利かを掴み、上手く質問することで交渉相手に手を貸し、交渉相手が社内に対し勝利宣言をできるよう、お膳立てをするのがベストです。こうすることで協力して付加価値を創造し、相手にとって悪くなく、自分にとって願っても無い価値を得ることができるのです。
いかがだったでしょうか。皆様も「交渉」に挑む時は、「競争」ではなく「共創」を考えましょう。今回の記事は、取っ掛かりにくいビジネス書に、少しでも興味を持っていただくために、あえてテクニカルな内容は省かせていただきました。本書では具体的な交渉のテクニックについても記載されていますので、ご興味のある方は是非、お読みいただければと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
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