お客様を犬と思え
私は29歳。
岐阜市と名古屋市で飲食店を経営している。
noteではブランド構築や、サービスとは何かについて書こうと思う。
まずはサービスに関して。
5年前に大好きな先輩から言われたタイトルのこの言葉が今でも頭に残り続けている。
第一章ではこの先輩のことについて話そうと思う。
彼には初対面の時から一気に引き込まれた。
そんな彼から言われた何気ない一言がある。
「お客様は犬と一緒」
当時名古屋の駅ビルのレストランでバリスタとして働いていた私にとって、この言葉は響きすぎた。
なぜなら、当時働いていたレストランは私からしたらお客様から高い料金を頂く高級レストランの部類だったからだ。
それまで私は自然とどこかで見たような、また、見てもいないような想像の高級レストランのスタッフとして接客することが当たり前と思っていたし、その為の勉強もした。
それがこの一言で人間としての経験値の差を突き付けられた。
何となく聞くと失礼な事に聞き取られかねない。
だが、この言葉の真意が私にはすぐ伝わった。
誰しもが皆初めて接客するときは正解なんてわからない。
だが、接客業を長年続けていくと自分なりの正解が出来てくる。
・周りが見れる
・マルチタスクが出来る
・損益や原価の計算が出来るようになってくる
・専門的な知識を持っている。
その中で自分が接してきたお客様の経験値が活きてくる。
これを若手の時に正解だと思ってしまう。
もちろん周囲のスタッフとはその仕事内容で信頼を得ることはできるかもしれない。が、一番大切なお客様からの信頼は得ることが出来るだろうか。
お客様は時に残酷だ。特に新規のお客様。
お支払金額が多ければ多いほど当然お客様はサービスに過敏になる。
しかし、上記の4つの点を仕事をしないで新規のお客様に伝えることが出来、信頼を得ることが出来る最強のアイテムが1つある。
それは「役職」である
これはどんな業界でもそうであると思う。
いきなり責任者が接客するだけでお客様は安心感を感じることもあれば、
少し不満があると責任者と話をしたいと思う。
しかし、飲食業に関してはこれがひっくり返ることがあるのです。
私はそんな瞬間を何度も見てきた。
タイトルの言葉は10代から30歳まで同じレストランでずっと働いていた先輩からの言葉だ。
そんな彼の役職は
「アルバイト」
彼には肩書きなんて関係なかった。
店舗責任者がいるのにお客様から頼りにされるのは彼で、お客様から愛されていた。
チップもたくさん貰い、一番自由だった。
よくいる長年アルバイトしている「自由風」の人とは全く違った。
彼の言葉に嘘がなかったからだ。
なにより彼には経済力と豊富な人生経験値があった。それは信用にもつながり、お客様との接点にもなっていた。
彼の店での行動や立ち振る舞いが彼の飲食業への愛情がお客様に伝わっていたのだ。
今思い返しても彼は常にお客様から見られていることを意識していた。
こんな人に接客されたらお客様は嬉しいに違いないという自分の考えとその理想像に自信を持ち、それを演じ、彼そのものを創り上げていた。
まるでロックスターの矢沢永吉のようだった。
それを感じたお客様は彼がお客様にオススメするものを信用して注文する。
そして彼は店全体を把握し、スタッフとコミュニケーションを取り、店も円滑に回るように時にはお客様の要望を聞くだけではなく、店の都合も嫌味なく伝えていた。本当の意味でお客様と対等に仕事をしていたのだ。
これは信頼関係が無いと成り立たない。
皆さんはこのタイトルの言葉を聞いてどう感じましたか?
私はタイトルの言葉で彼の根本にあるものが一気に明確になり、変わろうと思った。
私に響いた理由をヒントとして1つ挙げるなら
「私にしか響かなかった」
ということである。
自分が接する全てに対する愛情
これが彼の根本にあるものだった。
彼は私が愛犬家なことを知っていた。
そして彼も愛犬家だった。
だから犬が好きな人の気持ちが分かるから私にこの言葉で伝えてくれたのだと思う。
愛犬家は大体自分の飼い犬が一番かわいいと思っている。
しかし生き物を育てることは簡単ではなく、人間と違って話が出来るわけではない。
犬の目線になって考えてみると少しこのタイトルの意味に近づくだろう。
犬が飼い主の言うことを聞くのは自分のことを引き取ってくれたからではない。餌を与えて、お水を交換し、寝るところを用意し、トイレのお世話をする。そういった愛情が伝わるから飼い主の言うことを聞くのだ。
家族の中でも言うことを聞く人と聞かない人が明確に分かれているのがその証拠である。
犬も人間と同じように水が飲みたければ飲みたそうな顔をするし、餌が欲しい時は欲しい顔をする。また、悪いことをした時には気まずい表情をする。
タイトルの意味
これは何通りも答えが存在する。
犬の表情に気付くことが出来るなら人間のお客様に対しても、いち早くお客様の要望に気付くことが出来るだろう。それぐらい相手の気持ちを理解しようとしなよ。とも思えるし、自分を信用してもらえるようにコミュニケーションを取りなさい。とも思える。
ビジネスの観点を強めて考えると、自分が飼い犬の餌の時間に帰れないことを予測して、あらかじめ多めにご飯を置いておく。
つまり、こちらの都合の通りにお客様に動いてもらう、そして自分と店の仕事の流れに沿って追加オーダーを取ったりすること。これには今、対応を出来ないタイミングでお客様から呼ばれないように仕事を済ませておくことにも繋がる。
しかし、これら全てに共通することは相手の気持ちを理解することである。
それには自分のお客様側での経験値と、愛情が必要なのだ。
私は自分の気持ちをさらけ出さずに相手の本心を探ろうとする癖があった。
それにその本心を外さないことに自信をもっていた。
お客様がどんな人なのか、今日一日をどう過ごしたのか、お連れ様とはどんな関係なのか。こういった情報も大体すぐに分かる自信があった。
そしてクレームを起こさない言わば守りのサービスをしていた。
しかしこの言葉を聞いてから、それだけではダメだ。まず相手に聞くことから始めようと思えた。
もっとお客様の活きた声を聞こうと。
愛犬に対しては、常に話をしながらお水を替えたりお世話をしていたからだ。
そして美味しそうに水を飲んでいると凄く幸せを感じたのだ。
お客様に対してもそうあるべきだと思えたし、潜在的に望んでいることを叶えてあげることのためによりフラットに接し、お客様が望むよりも早くお客様の要望に気づくことの大切さを感じた。
みんなハッピーじゃないと意味がない
彼はきっと私以外のスタッフにはその人に合った話をしていただろう。
そんな彼の口癖は
「みんなハッピーじゃないと意味がない」
もしも前職で保育士をしていたスタッフがいたらまず保育士の仕事について彼から理解しようと話をし、そのスタッフのことを知り、この本質を伝えていたのだと思う。
彼の中ではスタッフもお客様も同様に対等なのだ。
彼の根本にあるのはこの自分も含め、いま周りにいる全ての人への愛情だ。
そこに私は人間臭さと自分の理想を語ることの素晴らしさ、そして相手を認める潔さを学んだのだ。
今回は初めての記事を書かせて頂きました。
最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。
今後も彼から言われた言葉や、私なりの経営とサービスの基盤となった考えを投稿していきたいと考えています。
次回も是非読んでくださいね。
林 幸佑
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