ハノイを思い出すブンチャー(ベトナム)
ベトナム料理と言ったら、フォーやバインミーが思い浮かぶだろう。もちろん、それらも好きだが、私はブンチャーを答える。ブンチャーは私が一番食べた料理なんじゃないかと思う。
ブンチャーとはつけ麺のようなものだ。ブンは米粉でできたそうめんに似た麺のことで、チャーは炭火で焼かれた豚肉が存分に入ったつけ汁のことだ。もっと具体的に言うと、ベースはベトナム料理には欠かせないニュックマム(魚醬)を使った甘辛い味付けのスープに先程述べた炭火の焼き豚や豚肉のハンバーグ、そして大根と人参の漬物が入っている。さらにもう一点、カゴに入った山盛りのサラダがついてくる。サラダの中身はお店によって変わるが、たいていはパクチー、ミント、レタス、もやしが入っている。野菜はお代わりをサービスで無料にしてくれる場合もある。うまい、早い、安い、健康にいい、と4拍子揃っている。ベトナムにいた頃はこれを最低でも週3は食べていたんじゃないかと思う。
ブンチャーとの出会いは、現地の日本人の友人の紹介によるものだ。私の当時のアパートから2分のところに日本人が経営するレストランがあった。そこのイベントで出会った人がブンチャーをすごく推していて、一緒に食べたのが始まりだ。その友人は少し前まで私のアパートの同じ部屋を借りていたということが分かり、すごく縁を感じた。今はYoutuberをしているので、こっそりと応援している。
初めてブンチャーを食べたときから虜になった。太っ腹な量の肉が空腹感、満足感を満たしてくれる。肉だけなら脂っこいと感じるかもしれないが、そこで大量の野菜の出番だ。パクチーとミントの清涼感が口の中をすっきりさせてくれる。ブンもお米が大好きな典型的な日本人である私にとっては欠かせないお肉のお供になる。
ガッツリ食べたいときにもブンチャー、野菜をたくさん取りたいときにもブンチャーに頼っていた。気が付けば週に4回食べてしまうこともザラにあるのだ。
ベトナムでは日本語のALTとして活動していた。日本と違い生徒、先生問わず、お昼休みに家に帰る人が多い。私も昼休みに家に帰っていた。自炊をする時間はないので屋台で食べることが選択肢に入る。初めて連れられて食べたブンチャーのある店は家のすぐ近くだった。自然と足がそこへ向かってしまう。
肉を焼く担当は恰幅の良いお姉さんで、おいしさの説得力を増している。隣では春巻きをあげている。揚げ春巻きは定番のサイドメニューだ。春巻きを甘辛いつけ汁につけてもおいしい。これだけ頼んでも350円ほどなので嬉しい。
家の近くだけではなく、ハノイではいたるところにブンチャーの屋台があり、炭火で焼いた豚肉のにおいがした。ホーチミンに行ったときも屋台を探したが、見つからなかった。食べることはできるのだそうだが、ブンチャーはハノイの名物で主に北部のソウルフードだそうだ。ブンチャーだけを目的にハノイを訪れるのもよいだろう。
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