小学校3・4年生を境に指導のやり方は変える必要がある。 【発育発達編02/僕の仮説06】
日本に合った"ジュニアの年代別指導とは何か?"を問い始めて5年以上が経つ。
以前から漠然と「グループ戦術はいつから教えたらいいのか」「個人戦術と個人技術をどう仕分け、どのタイミングで指導すべきか」等々、ずっと考えていたが、今の自分から見ると「サッカーしか目に入っていなかったな。視野がせまかったな」と思う。まぁ、すべてを把握できているかと聞かれたら違うが、あの頃に比べたら深く掘り下げられているという実感はある。
2016年に企画編集者として「サッカー年代別トレーニングの教科書」という本を出版した。
当時は日本サッカーのために「ドイツの育成ノウハウをパクったろう」と、現地のA級ライセンスを取得した中野吉之伴さんを口説いた。版元事情もあり、企画を通してから約1年かけて"年代別トレーニング"という具体的な切り口にたどり着いた。これが転換点だった。
制作しながら気づいたのは「ジュニアの場合、心の発育発達という心理的なものが指導にかなり影響を与える」ことだった。
実は、中野さんに「書籍を出さないか?」と打診したのは、2014年にドイツがワールドカップに優勝する半年も前。それまでも一緒に仕事をしていて、ブンデスリーガのクラブにサッカー外の専門家が専任で常駐していることを聞いていた。だから、私はその頃から臨床心理士や脳科学者、メンタルトレーナーなどサッカー外の専門家を取材する企画をいろんなメディアに提案し、様々な意見に耳を傾けながら知識を取り込み、「心の発育発達と指導との関係性」を探った。
それを加味して編集し、ようやく本が出版されて「かなりの部数が売れるだろう」と期待したが、重版したのは一度だけだった。
編集者としてはノルマを果たしたに過ぎず、個人的には結果を出せなかったと感じている。部数が伸びなかった原因は2つ。当時の日本のコーチには内容が難しすぎたこと、本の発売が時期早尚だったこと。かなり中野さんにがんばってもらい、内容をかみ砕いてもらったが、そもそもコーチが子どもの性格や特徴を考慮してトレーニングを考えたり伝えたりする概念がその頃の日本にはあまりなく、「だから具体的にどうするの?」という反応が多かった。だから、年代別トレーニングの説明ではなく、練習メニューの参考として使用されていたようだった。
子どもの性質や特徴に関する情報は、私にとって育成と年代に応じた指導を考える上で革新的なヒントだった。これがあれば各学年のテーマも、1日の練習メニューの構成も、選手への伝え方も全部プランニングできると心躍ったのだが、日本のコーチとは広く深い溝があった。そういうことを自分の中で消化したのは、つい最近のことだった。それでも発売から2年間は「あれ、すごくいい資料だよ」と、数々の優秀なコーチから声をかけられてとても感謝した。しかし、これこそが売れなかった理由の裏返しだった。
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写真提供=佐藤博之
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