リチャード・H・スミス 著 澤田匡人 訳『シャーデンフロイデ』読了
『シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇(ISBN:9784326299270)』
この本は、「シャーデンフロイデ、即ちメシウマって、なんなの?」
それを解説してくれる本です。
コロナウィルスのせいなのかなんなのか、最近ギスギスした空気がどこにでも感じられるというか。
誰か「炎上」すると、もうありとあらゆる人がフルボッコにしにいくっていうような。
自分と敵対する相手、もしくは妬む相手が偶然にも不幸になるとなんでシメシメって思うのか。誰しもあると思うんですよ。私もあります。
でも、それ、放ったらかしたらますますギスギスしちゃうんじゃないのかなと思ったから、読みました。
読んで良かった。だって、シャーデンフロイデを生み出すもとになる妬みが募りに募ってホロコーストまで、テーマがいっちゃうんだから。
ホロコーストのような歴史上大きな出来事のみならず、身近なシャーデンフロイデにも言及されています。例えばスポーツのファン同士の小競り合いとか。熱心なファンだと、敵チームのメンバーの故障にニヤリとしたり。そういうところ。
じゃあ、どうやってメシウマを感じずにすむの?というところには、なかなかいきません。そもそも感じちゃうんだから仕方ない。ただ、それをエスカレートさせずに済む努力はできる、とある。
私たちには、他者の行動の原因を、どうしても内的なものに求めたがるのと同時に、状況要因を無視しがちであるという二つの傾向があると自覚できれば、それらが該当するようなケースでもうまく立ち回れるようになる。もちろん、これはかなりの困難を極める。(p227-228)
他人と比べないっていうのはハードル高すぎるから、私は無理苦笑。
もし、シャーデンフロイデを感じたら、それは自分が相手に妬みを抱いていたり、自分の正義を基準にしていたりするのだ、と俯瞰する。
相手に対して敵意を抱きそうなとき、相手の背景を想像してみる。そうすることで、メシウマを感じる機会をそもそも減らせる(敵意が減るので)。
言うは易し、なんですが「溺れすぎないこと」これが大事かなと思いました。
今後、もっと息苦しい社会になったとき、悲しいかな必ずどこかにスケープゴートが出るでしょう。
その時、自身にストップをかけられるように、
もう一度、第5,6章 あたりから読み返そうかな。
個人的に、第7章の「屈辱エンターテインメント」はリアリティショーについて書かれているから、TVを見たときに違和感を覚えた人が読んだら、しっくりくるかもしれない。
つらつら書いててなんか私何を熱く語ってんだみたいな感じになってるんですけども、
本書そのものは語り口が軽妙で、例えも多く(シンプソンズ出てくる笑)、海外の人にありがちなユーモアもあって読みやすいです。あとね、索引と、脚注が良い。これちゃんとできてる本はいい本。
参考文献読みたくなったもん(積ん読が増える)。
「なんか最近ゴシップでしか笑ってないな…荒んでるかも?」って思ったら、是非読んでみて下さい。