【読書学会24】(1) 日本読書学会「読書状況調査」というのをやっています
【国語世論24】記事でしばしば話題にしたのが,日本読書学会「読書状況調査」です。
9/22(日)に,第68回日本読書学会大会が東京都文京区にある「林野会館」で開催されました。読書学会は毎年ここで開催されています。
私も以下の「日本読書学会読書状況調査の概況報告」の共同発表者となっていますので,参加してきました。
井関龍太・小山内秀和・猪原敬介・福田由紀・濱田秀行・足立幸子・平山祐一郎. (2024). 日本読書学会読書状況調査の概況報告. 第68回日本読書学会大会, 2024.9.22, 東京.
この結果について,令和5(2024)年度「国語に関する世論調査」の結果と比較しながら,紹介したいと思います。いずれきちんとした論文として出版されると思いますので,まずは「こんな調査も行われています」という速報です。
日本読書学会読書状況調査とは
概要は以下の通りです。
◎調査時期:令和6年3月(国語世論調査は令和6年1~3月)
◎調査方法:ウェブ調査(国語世論調査は郵送法)
◎調査対象:18~29歳,30歳代,40歳代,50歳代,60歳以上の5区分それぞれに600人の合計3000人。性別は男女ほぼ同数。
2つの調査は単純比較できない。方法には一長一短ある。
すでにこの時点で,「日本読書学会読書状況調査」と「国語に関する世論調査」を単純比較することができないのは明らかです。
大きな違いは,調査方法が,国語世論調査が「郵送法」だったのに対し,読書状況調査は「ウェブ調査」であることです。
web調査に参加する参加者というのは,web調査会社のモニターに登録している人たちなので,日本人全体からみれば特殊な人たちであることは否めないでしょう。
読書状況調査にはDQS(Directed Question Scale)と呼ばれる「調査者が,参加者の回答する選択肢を指示する項目」が含まれていました。例えば,「この質問はダミーです。質問内容に関わらず,一番右の選択肢を選んでください」のようなものです。
web調査への参加者は,web調査会社からの報酬を目的の一つにしていると考えられます。そのため,報酬のための労力を最小化するために,不誠実回答をする参加者も一定するいることは織り込み済みで行う必要があります。DQSはそうした参加者を検出するための仕掛けになります。
読書状況調査では,DQS項目に指定通りに回答しなかった者は1,657名(35.6%)でした。この人たちを除外した上で,年代別に指定した人数(合計3000名)が集まるまで募集をしたわけですね。適切な回答の割合は64.4%ということになります。
一方で,国語世論調査で採用された「郵送法」も「送られてきた質問票に回答して,わざわざ返送までしてくれる人たち」なので,ある意味では特殊な人たちであることに変わりはありません。回収率は59.3%ということでした。
(「web調査における指定通りに回答しなかった参加者の割合(35.6%)」と「国語世論調査における返送してくれなかった人の割合(40.7%)」が近くて面白いですね。これは偶然なのだろうか。)
また,web調査では各年代の人数が一定数になるまで調査を継続するということができますが,郵送法では,送り返される質問票を調査社側がコントロールすることはできないので,年代ごとの人数が異なってしまいます。
実際,以下の記事での年代別不読率を算出した際にも,人数は年代によって異なっていました。
年代ごとに異なる人数のまま「全年代」の不読率を算出しているので,「国語に関する世論調査」における不読率は年代ごとの影響力が異なった数値になってしまっています。
何事も一長一短があるものです。
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続きます。
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