見出し画像

【読書学会24】(2) 国語世論調査24と比較をしてみたものの……やっぱり調査間の比較は難しい

前回の続きです。


読書状況調査の不読率についての結果

さて,今後まだ論文化する予定もあるので,あくまでも読書学会での報告内容に基づく議論に限定したいと思います。報告された中で,不読率に関するものは以下の2つの結果がありました。

◎「総合」における「0分(読まない)」という回答が32.20%
◎「紙の書籍(雑誌・漫画以外)」における「0分(読まない)」という回答は59.20%

「総合」の不読率について

「総合」というのは,「紙の書籍・雑誌・漫画本・電子書籍・新聞のすべてを含む」です。【国語世論24】(3)-(4)で話題にした「雑誌漫画含む不読率(全年代:20.6%)」に近いですが,新聞が含まれている点が違います。

「総合」の「不読」には「新聞だけを読む人」は含まれないわけですから,読書状況調査の「総合」の不読率>国語世論調査の「雑誌漫画含む不読率」と予想されます。

そして,実際の結果も予測通りでした。

◎読書状況調査の「総合」の不読率(32.2%)>国語世論調査の「雑誌漫画含む不読率」(20.6%)

書籍読書についての不読率

読書状況調査の「紙の書籍(雑誌・漫画以外)」の不読率とは,紙の書籍を読んでいる人だけを「読者」とみなし,それ以外はすべて「不読者」とみなします。電子書籍だけ読んでいても「不読者」です。不読者の範囲が広く,不読率が高くなりやすいはずです。

国語世論調査の「書籍のみ不読率(全年代:62.6%)」は,電子書籍で書籍(雑誌・漫画は除く)を読んでいる人も「読者」とみなします。その分,「不読者」の範囲が狭く,不読率は低くなりやすいはずです。

したがって,予想としては,読書状況調査の「紙の書籍(雑誌・漫画以外)」の不読率>国語世論調査の「書籍のみ不読率」と予想されます。

しかし,実際には,わずかに逆の結果でした。予想を覆す方向でのわずかな差ですので,実際にはかなりの差があるものを推察されます。

◎国語世論調査の「書籍のみ不読率(全年代:62.6%)」>読書状況調査の「紙の書籍(雑誌・漫画以外)」の不読率(59.2%)

つまり,国語世論調査の不読率が予想以上に高く出ているか,読書状況調査の不読率が予想以上に低く出ているか,どちらかなわけです。

調査間の比較は慎重に

このように,調査間には少なからぬ差があり,それが「不読率」といった数字に大きく影響します。一方で「国民の読書行動」が短期間にそれほど大きく変化することは稀です。

(コロナ禍ぐらいの出来事がない限り。あるいは,それほどの出来事があったとしても。)

そのため「国民の読書行動が変化した」という主張をする場合には,調査間の特徴の違いを神経質なほどに挙げ切らねばなりません。そういう意味では,(少し前にも書いたことですが)同じ調査を継続するのは大事,ということになります。

++++++++++

読書状況調査の話は終わりですが,あと一回読書学会の話が続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?