【国語世論24】(1) 調査設計者の視点でみると「国語に関する世論調査」のセンスが光って見えた
*【Kim06】記事を始めたばかりですが,割り込みでこちらの記事をアップロードします。
「国語に関する世論調査」は,平成7(1995)年度から文化庁が毎年実施しているものです。
昨日(9/17),最新版の令和5(2024)年度「国語に関する世論調査」の報告書が出たので,さっそく読んでみました。
調査の概要
概要は以下の通りです。
◎調査時期:令和6年1~3月
◎調査方法:郵送法
◎調査対象:全国16歳以上の6000人に郵送し,3559人(59.3%)から回答を得た
調査項目のカテゴリとしては以下の4つがありました。
(1)国語への関心
(2)ローマ字表記・外来語の表記
(3)読書の在り方
(4)慣用句等の意味・言い方
この記事では主に「(3) 読書の在り方」を取り上げます。
なんてセンスのある調査項目なんだ……
この調査結果は大変興味深いものです。それについては何回かに分けて詳細をみていきます。……が,その前に,私はこの調査報告書をみて「なんてセンスのある調査項目なんだ……」と感動してしてしまいました。
というのも実は最近,大規模読書調査の調査設計に携わらせて頂く機会があったからです。日本読書学会「読書状況調査」です。
タイムリーなことに,今週末の日曜日に開催される読書学会(猪原も参加します)にて,その結果が報告されます。この報告についてもまたnoteにまとめたいと思っています。
さて,調査設計の際には,その調査がどんなコンセプトなのか,誰に向けてのものなのか,どんな分析をするつもりなのか,予算はどれくらいなのか……など,多くの要因を踏まえて「どんな質問項目を入れようか」を議論します。
何度もミーティングを行って,最終的に「よし,これでいこう!」という質問項目が出来上がるわけですが,調査結果を分析していると「ああ,こういう項目にすれば良かった……」「質問の意図が伝わるように,注意書きを入れておくべきだった……」など,後悔は絶えません。
まぁ,これは仕方がないことです。それを差し引いても読書状況調査の結果はとても面白いですので,乞うご期待,です。
「国語に関する世論調査」のセンスの良さも,1995年から繰り返し行ってきたことの賜物で,センスはその過程で磨かれたのだと思いますし。
調査設計者の視点ですごいと思ったところ
そうしたことが最近あったもので,研究者というよりも,調査設計者の視点から令和5年度「国語に関する世論調査」を見てしまいます。
まず以下にやられました。報告書概要の「Ⅲ 読書と文字・活字による情報に関する意識」セクションの冒頭にある,
の部分です。
読書とは何か,本とはなにか。これらは明確ではなく,人によって定義は違います。しかし,調査においてはそれを統一したい。なるべく違和感のないもので,かつ,分析の都合も考えて,決めなくてはならない。
その点で,この「注意書き」で「本には雑誌と漫画を含まない」「電子書籍とは~などで読む本のことだ」と明確に定義した点は,非常に良かったと思います。特に近年,電子書籍の使用割合が増えて,そこを考慮しないとおかしな調査結果が出てくることがあるのです。
不読率について
実際,今回の調査結果が公開されたことに気づいたのは,以下の記事がXで回ってきたからでした。
不読率は分かりやすい指標なので,よくメディアで取り上げられます。今回,問7「あなたは現在、1か月に大体何冊くらい本を読んでいますか。電子書籍を含みますが、雑誌や漫画は除きます。」という質問に対して「読まない」と回答した割合が62.6%となったことが取り上げられたわけです。
最初にこの記事をみたときは「たぶん電子書籍が入っていないな」と思ったのです。しかし,その部分は上記の「注意書き」できちんと整理されていました。
確かにこれはちょっと高い……と思います。2019年の読書世論調査の不読率が51%ですので,それよりも10ポイント以上高い。
今日の記事では時間切れ。次回以降,各項目について少し詳しく見てみたいと思います。
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続く。
ちなみに,どうでもいいのですけど,下記のシンボルマークは「文化庁へのリンクを貼る場合のみ使用可」だそうです。この記事のヘッダーに使いたかったのだけど。
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