【国語世論24】(2) 不読率62.6%が高いかどうかは……「分からない」
前回の続き。
月に何冊本を読むか,という質問に対して「読まない」の割合である不読率が62.6%であり,確かにちょっと高いなぁ,という話でした。
ちなみに,書き忘れましたが,「国語に関する世論調査」では,読書についての質問項目が毎年あるわけではありません。前回は平成30年(2019年)に問われた模様です。また,尋ねている読書冊数であり,読書時間などは尋ねていません。
過去に比べて不読率が高まったかどうかは「分からない」
さて62.6%は猪原の感覚からすると「確かにちょっと高い」のですが,客観的にみて高いかどうかは,けっこう判断が難しいです。
まず,下図の平成30年度以前と比較して「高い」かどうか。
これは一番下の注釈にあるように,2020年度からは調査法が変わっているので,比較には注意が必要です。具体的には,
ということです。
「面接聴取法」とは何か,ということになるのですが,詳しいことは2019年度の報告書にも書かれておらず「調査員による面接聴取法」となっています。しかし内閣府の下記のページなどから推察するに,「対面でのインタビュー方式」ということだと思います。
2019年度(令和元年度)の47.3%と比較して,2024年度の62.6%が高いのか。これはやはり「分からない」ということになります。読書は一般的に「社会的に望ましい」行動と言えますので,対面のインタビューでは「1冊も読んでません」と言いにくいかもしれません。その分,2019年度以前の不読率が低くなっていたことは十分に考えられます。
他の調査と比べて高いかどうかも「分からない」
前回「2019年の読書世論調査の不読率が51%ですので,それよりも10ポイント以上高い。」と書きましたが,読書世論調査では,まず
という質問によって,各メディアへの「接触率」を出しています。
そのうちの「書籍」において「読まない」と回答した率が,51%だったわけです。ちなみに,その後には「1日あたりの接触時間」を尋ねています。
つまり,少しでも本を読んでいれば「書籍に接触した」ということになり,「読まない(不読)」にはなりません。その意味で,不読率は低くなりやすい,と言えます。
一方,「国語に関する世論調査」では「1か月に読む本数」と期間を限定していますし,「読んではいるが,1冊読み終えられなかった」場合に「0冊」と回答している人もいることを考えると,読書世論調査よりも高く出ることは十分考えられます。
この点から言っても,やはり他の調査と比べて高いかどうかも「分からない」ということになってしまいます。
分からないづくしで申し訳ないのですが,やはり,調査で同じ形式のものを継続することには大きな価値があるなぁと思わせます。
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続く。
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