地域おこし協力隊になって思うこと ーこれからやるひとがいたらー
地域おこし協力隊の人たち(OBOG、その他関係者含む)の話を聞いて。
まちづくりだとか地域おこしの分野で、なんで自分はイベントやレジャーや宿泊なんかの形があるものをやりたがらなかったのか。形あるものを提供するサービスに、自分は全く魅力を感じないのか。時間や物に対して対価を払うサービスを提供したいと微塵も思わなかったのか。
「続かない」からだ。
自分がいなくなったら誰がやるの?
誰もそんなこと考えない。
自分がやりたいことはなんだろう、自分ができることはなんだろう。自分の人生80年ないしは100年を考えて、自分の仕事だったり趣味だったりを考える。
それは良い。
その人の生き方にまで口を出すつもりはない。「自分は起業して、1ヵ月で5000万稼ぐんだ!」でも別にいい。それで本人が幸せだと思うなら。(周りも幸せにできたらなお良いが、まぁそれは別の話になるので一旦置いておく)
でも、それもなしにまちづくりだの地域おこしだの語るのは少し違和感を感じる。
好きなことをやった、好きな人たちのために頑張った、その結果がまちや地域に還元された。それならしっくりくる。出発点が『自分』だから。自分のためにやってるんだと堂々と言えばいい。別に自分がいなくなったところで、まちやら地域やらを気にする必要はない。まちづくりだの地域おこしだのは所詮、副産物的なものでしかないのだから。
でも、出発点が『まち』だの『地域』だのになると、話は変わってくる。
『まち』や『地域』って、一人の人生で成り立ってるものじゃない。これまで何百、何千、何万という人の人生が関わっていて、残ったもの、消えていったもの、その積み重ねが今の『まち』や『地域』をつくっている。もっと言えば、これからもそうして積み重ねられていくものだ。自分の人生だけでは到底追いつかない、答えは探しても見つからない、なんならゴールさえないかもしれない、そういうものだ。
地域おこし協力隊の人たち、ないしはそれに関わる人たちの多くは、「まちのため」「地域のため」と語りがちだ。(自分も人前ではそう言ってるけど)
じゃあ、そう語るってことは、何をするのがまちや地域にとって"いいこと"なのかも考えてるんだよね?
「まちのために、自分はカフェを開くんだ」
「地域のために、資源を掘り起こして発信するんだ」
で、どうなる?
カフェを作って、まちに人が来ました。
まちにお金が落ちるようになって、雇用も創出して、まちにとっては"いいこと"がたくさん生まれました。
あなたは死ぬまで、その土地でカフェを続けるの?
途中で辞めることになったら、誰がそれを引き継ぐの?
資源を掘り起こして、地域の魅力が色んな人に伝わりました。
観光客は増え、地域の人たちはその魅力を誇りに思って積極的にPR、住民一丸となって地域おこしに取り組みます。
誰が旗持ちやるの?(きっと積極的にやりたがる地元住民は多くない)
あなたがいなくなったら、誰が資源を掘り起こすの?
仮に80年、カフェを続けたところで、終わって5年もすれば忘れ去られる。
カフェがなかった未来(パラレルワールド)とほぼ同じだろう。
町の魅力だって同じ。
今は魅力に感じても、"慣れ"てしまえばまた新たな資源の掘り起こしが行われる。言っておくが、資源だって豊富にあっても無限にあるわけではない。ある種の延命、どころか資源を使い果たした時、ほんとに悲惨な心情を芽生えさせるかもしれない。
とてつもなく長い『まち』や『地域』の文脈からすれば、カフェをつくるだの資源を掘り起こすだのは、ほんのわずかな出来事に過ぎず、協力隊員が嫌う単発のイベントとほぼ同義だ。
200年後の人からすれば、過去の数多ある人生の一つにしか見えないし、その時の人たちは、きっとそんな誰かもわからない人の人生から何かを学ぶことはしないだろう。(口伝レベルで伝わることは万に一つあるかもしれないが、当時を知る人がいなくなった時点で口伝も形骸化する(本質はそこで途絶える)と考えたほうがいい)
だから、最初から「まちのため」「地域のため」になにかやったところで、それって果てしなく遠い世界の話になるんだけど、みんなそこまで考えてるの?って聞きたくなるのだ。
ただ、ほんの少しだけ意味を持つことができる......可能性がある。
カフェに通った人、資源の掘り起こしに関わった人が、何かしらの感銘を受け、それを別の場所もしくは別の時代で始めることだ。
種を受け取った人が、その種を自ら育て、花を咲かせ、そこで生まれた種をまた別の人へ託す。それが繰り返されることを祈るしかない。
種を受け取ったけど、育てるのは放棄した。育てたけど、花は咲かなかった。花は咲いたけど、種は取れなかった。種は取れたけど、託す人がいなかった。続かなくなるきっかけなんてめちゃくちゃある中で、なんとか生き残って続くことって、めちゃくちゃレアケース。しかもその結果は、始めた本人がいなくなってからでないとわからない、なんなら、いなくなってから何十年後になってようやく繋がったりもする、その繋がりさえも突然切れることもある、そんな偶然の連続で起きた末の"ラッキー"が、まちづくりや地域おこしなんだと思う。
「まちを元気にする」「地域に貢献する」と公言するってことは、そんな果てしなく長い道のりに自らを置く行為だと、自分は思っている。
それってもの凄くしんどい。
自分はまちのためにやってる、地域のために頑張ってるって言っても、所詮は"ラッキー"でしかないのに、そこに人生をかけようとするんだからきついよね。いつ報われるかもわからない。まちや地域にいる間か、生きている間か、はたまた死んでからか、死んで50年後か。
だから「まちのため」とか「地域のため」とかは、考えるのは面白いけど、そのために生きるのはやめたほうがいい。それでもその道に身を置きたいなら、その人は相当のどえm...フロンティア精神満載のチャレンジャーかもしれない。
でもみんなチャレンジャーなんてことはない。
だったら地域おこし協力隊なんて、自分のために使い倒せばいい。
「こんなことやりたいから」「このまちで暮らしたいから」「この地域で死にたいから」「お金が必要だから」
いいじゃないか、それで。
自分のために協力隊になって、その結果、たまたま自分のいるまちや地域に還元された。それでいいじゃないか。いいってことにしよう。隊員も、採用する自治体も、受け入れる地域も。
ただ、僕はそれでも、その"ラッキー"を信じてとてつもなく長い道のりに身を置きたいと思っている。
でも、"ラッキー"を「ただただ信じて待つ」なんて不安定な状態はきらいだから、"それ"を少しでも手繰り寄せ、自らデザインしていきたい。少しでも、種を受け取った人に「次の人へ種を託したい」と思ってもらえるようなことがしたい。
だから『教育』に手を出した。
「伝える。渡す。使う。」
この一連の流れを続けるために、『教育』は切っても切り離せない関係にある。カフェでも資源の掘り起こしでも、教育的な観点から考えることはできる。ありとあらゆるものに関係してくる。だから僕は『教育』に興味を持ち始めたし、『教育』を通してなら"ラッキー"もラッキーじゃなくできるかもしれないから、不確定要素満載のまちづくりや地域おこしにも関わってみたいし、関わるという選択肢を取っている。
今の自分は「子どもの居場所づくり」という建前で、教育的なことを考えながら地域おこしに携わっている。
子ども達はこれからどんな世の中を生きていくのか。
あわよくば、この『まち』や『地域』で、自分のやりたいことを見つけてほしい。でも、まずは自分が今立っている場所で、地に足付けて、地に縛られず生きていくことができる力を身に付けてほしい。
僕がやっていること、これからやっていこうとしていること、その片鱗でもいいから、彼らが受け取って、育てて、使ってほしい。それをまた次の世代へ渡してほしい。初めは僕からじゃなくてもいい。色んな人や、色んな出来事を介して、まずは何かを受け取ってほしい。
もしかしたら、それが結果的に『まち』や『地域』のためになるかもしれない。そう考えると、わくわくしてくる。
僕の協力隊としてのプロジェクトは「土台をつくること」
今はその土台を作っている最中だ。だから、土台が作れたら協力隊としてのプロジェクトは終わる。
けど、僕自身のプロジェクトはこれじゃない。
僕自身のプロジェクトは「みんなが幸せに生きられる世界をつくること」
みんなと言っても、あくまで自分と何かしら関係のある人で、顔も名前も全く知らないはるか遠くの人までは考えてない。というか、考えられない。が、顔も名前も全くわからない自分の子孫が幸せに生きてほしいというのはある。
生きている間にそのプロジェクトは達成できないかもしれない。それでも、未来を考えるとわくわくしてしょうがない。自分の想像をはるかに越える未来が、自分のいなくなった後に待っているかもしれない。
永遠に生きていたいが、それは現代の技術ではまだ不可能なので、その想いは誰かに託したい。
僕自身はいなくなるが、僕の想いが誰かに引き継がれ「続ける」よう、今を生きてる。だから『教育』なんだ。※さっきも聞いた
『教育』なら、過去も、現在も、積み重ねられた人の想いも、未来に繋げることができる。
積み重なってつくられたものが『まち』や『地域』なら、つくるために積み重ねていくものが『教育』だ。
僕が地域おこし協力隊をやっているのは、僕自身のプロジェクトのために利用させてもらっているだけで、みんなを幸せにしたいとかいう僕のわがままのためで、地域おこし協力隊は僕の興味関心をすべて網羅できるものだから、つまりは自分のためでしかないということをご理解いただきたい。
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