びっくりのインド ● 08 ● 命掛けの通勤
寝る というのは凄いことだ。
前の日に少々大変なことがあっても、寝て起きると気持ちがリセットされて 「よしっ」 という気になる。
インド2日目、初出勤。
ホテルから職場まで歩いて 25 分くらいだが、教材が入ったどでかいスーツケースがあったので、初日はスタッフがホテルまで オートリキシャ で迎えに来てくれた。
インドで生活するには オートリキシャ は なくてはならない 交通手段だ。
早い、そして 安い。
いわゆる三輪自動車で、後ろの席には、女性や子供、痩せた男性なら3人座れる。
オートリキシャに乗って何度も すったもんだ があったが、それはまた別の記事にするとして、インド人スタッフから聞いた情報では、オート は英語の auto、リキシャ は 力車 という意味らしい。
つまり、人力車は 人が引く から 人力車、オートリキシャはエンジンを使って 自動で引く から オート力車、それが転じて オートリキシャ だ。
しかし、オートリキシャが日本語からの造語だとインド人に言うと、理由は最後まで分からなかったが、皆 「そんなはずない!」 と頑なに拒絶反応を示す。
さて、そのオートリキシャが、巨大なスーツケースとデッカイ男 2 人を乗せて街を走ったのだが、ぎゅうぎゅうに詰めてもスーツケースが道路にはみ出してしまい、転げ落ちないように必死だった。
日本ならドアのない車から荷物がはみ出すと 道路交通法違反 で警察に止められそうだが、インドではそんなことは誰も気にしない。
それよりも、心配なのは 道路の状況。
これは、ほんとに、偽りなく、控えめに言って、毎日、こんな感じ。
信号は、あってないようなもの。
動画の途中、15 秒くらいの時に、赤と白のストライプのシャツを着た女性がまず中央まで歩き、一度止まってから渡りきる様子が映っているが、お見事!
これが 目指す渡り方 だが、数か月住んだくらいではこの技は怖くて試せなかった。
ホテルと研修所の間には、このような大きな交差点が 1 箇所あり、どうしてもそこを避けることはできなかった。
2 日目からは徒歩で出勤したので、まさに 命掛けの通勤 だった。
横断歩道を一気に渡りきるなんて、命を投げ出すようなもの。
勇気を持って一歩を踏み出し、私を轢き殺しそうになった車が止まってくれたら、少し進んで轢かれそうになりながら命を張って車に止まってもらい、そして次の一歩を踏み出し... を4~5回 繰り返してやっと横断が完了する。
いま思い出すと、一度も車に接触することなく、毎日よく通ったなと改めて自分に感心する。
その 魔の交差点 では、一度に何十人もの人が横断していたから、彼らを防御壁にして渡る 小技を習得したことも生還できた理由のひとつだ。
命掛けの交差点だけでなく、普通の道路も決して安全とは言えない。
ここは一方通行ではない。
車線もなく、片側に何台が走れるのか分からない。
大きな道路には車線があるが、3 車線に 5 台のオートリキシャが並走するのは当たり前だ。
この道路にインドで 神聖なる存在 の牛が寝ていると避けて通らないといけないので、さらに大混乱になる。
これは実際にわたしがオートリキシャから撮った写真だが、別のオートリキシャが シュッ とミラーを擦っていく音は何度も聞いた。
乗用車は、かなりの経済力がないと買えないので (一番人気は スズキ)、一家 が バイク で移動する光景も当たり前だ。
バイクの 3 人 乗りは 当たり前、4 人 乗りは 普通、5 人 だと ちょっと窮屈そう。
お母さんが子供を抱いているが落としそうで心配。
でも、お父さんと子供たちはドライブを楽しんでる感じ?
驚くことに、この乗り方はまだ マシ なほう。
サリーを着た女性 は バイクにまたがれない ので、必然的に 横座り にならざるを得ず、そのうえ乳飲み子を抱いていることもある。
手放し 乗り。
サリーの裾が何かの拍子に車輪に巻き込まれたら... と想像するだけで身が縮む。
自分もヒヤヒヤ、見ててもヒヤヒヤ、毎日 命がけの通勤 だった。
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