3月1日。採用活動がはじまる日に思うこと。

「内定がゴールではない。ゴールは生き生きと働けること。」というコンセプトを掲げて、私が就活支援サークルをやっていた16年前と比較しても、残念ながら就職活動に大きな変化は起きていない。「就職企業人気ランキング」も当時と同じ企業が並んでいる上に、「3年3割問題」といわれる新卒社員の3割が3年で辞めるという実態も変わっていない。

人手不足の中で、企業側は「質」より「量」を求めた採用活動になり、自社のPR活動に躍起になっている一方、学生は「一般的ないい会社」を探し求め、「自分にとってのいい会社」に気付かぬまま就職活動を終えてしまう。

技術革新によって、企業の口コミサイトが一般的になり、ビジッツのような就職活動の新しい出会い方も増えてきている。が、企業と学生の間に厳として存在する「情報の非対称性」は、それだけではなかなか埋まらない。

インターンのような実務経験の提供も一定の効果があるものの、1~2社のインターン経験によって、400万社以上もある企業から1社を選び抜くのは難しい。

当時私が就職活動を行っていた時にも、それらの事は既に経験していた。インターンも複数社経験したし、毎日2~3人くらいはOB訪問をして、口コミもかなり参考にしていた。必死に就職活動したが、それでも一般的な解にしか到達しなかった。

自ら書き留めていた就活ノートが5冊目に差し掛かったある日、杉並区和田中学高の元校長先生の藤原和博さんの言葉が心に刺さった。「人生に勝ち組と負け組はない。あるのは納得組と不満組だ。」

正解を求めるのはやめて、納得解を探そう。そこから本当の就職活動がはじまった。最後に辿り着いたのは経営コンサルタントという道だった。だからといって就職してから順風満帆ということではなく、大きな挫折を繰り返すたびに辞めようと思った。

そのたびに振り返るのは、就職活動を通じて自分で納得して決めた選択だったということ。踏みとどまるうちに経営コンサルタントという仕事の真のやりがいを分かっていった。

様々なツールも重要だけれど、会社選びで最も重要な事は自身の「生きがい」や「働きがい」を見つけ、「自分にとってのいい会社」を見出すことだと思う。

昨今は「働き方改革」という名のもとに、ワークライフバランスだったり、裁量労働制の拡大だったり、プレミアムフライデーといったキーワードがバズワードのように語られ、世論を形成している。危うさを感じるのは、就活生にとってそれらのキーワードが「一般的ないい会社」に置き換わっているということ。働くことの価値観は色々あってしかるべきだし、多様性を求めたはずが逆に画一的な方向性に帰結することは避けなければいけない。

あれから16年後の私は、人事担当役員として就活生と日々向き合っている。当時とは逆の立場になったが、学生時代の鮮明な記憶や手触り感を頼りに、出会った学生一人ひとりの納得解を探すお手伝いをしている。

3月1日の今日から、就職活動が本格的にはじまる。

「内定がゴールではない。ゴールは生き生きと働けること。」今も昔も何ら変わりはない。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO27533780R00C18A3EA1000/

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