スタンフォードならではだと思うこと②:教授、メッチャ賢い
気付けば半年、何も書かないままでした。。。その間にもたくさんの方に新しくフォローいただいて、ありがとうございます!まだまだコロナが心配な世の中ですが、自分の留学体験についてお話しした人が海外の教育大学院に合格したり、Twitterではスタンフォードの学部に合格した日本人高校生をみかけたりと、明るいニュースもあって嬉しいです。
さて、これまでの自分の記事を見返していて気づいたのですが、
「スタンフォードならではだと思うこと」
について、今まで、一回しか書いていませんでした。笑
一番大事なことはこちらの記事で書けたように思っていて、帰国してからもすごく活きているのですが、
もちろんスタンフォードの魅力はそれだけではありません!
綺麗で広大なキャンパス、
温暖な気候、
使い放題のジムやアウトドアグッズのレンタル、
ヨセミテ国立公園に日帰りできるロケーション、
…
と、環境の良さを挙げればキリがないのですが、やっぱりスタンフォードの価値の源泉は
「人」
です。
特に自分が衝撃を受けたのは、教授陣。
教育大学院と公共政策プログラムの2つの修士課程を経験して、その間にはMBAの授業も取りましたし、開発経済、コンピューターサイエンス、健康医療など、色々な分野のセミナーを受講しましたが、教授の人たちは全員、それはもう聡明でした。
英語だから難しくて高度に聞こえるとかではなく、むしろ、英語なのに極めて簡潔かつ本質的なので、すっと頭に入ってくるという感じです。
こればかりは実際に行かないと伝わりづらい部分もありますが、自分が特に印象的だった教授を二人紹介します。
①Prashant Loyalka
教育経済学の准教授です。こちらでわかるとおり沢山の論文を出していますが、研究に夢中なタイプではなく、学生の教育にも熱心でした。
統計学や経済学の理論にとても詳しく、教育分野における統計・定量的分析の授業を担当していたのですが、この人の凄いのは、そんなバリバリの理論系であると同時に、研究内容がものすごく明快であることです。
最近も研究内容が記事になっていますが、
「アメリカの学生は大学に入ってからの思考力の『伸び』が大きい」
「中国の学生は入学時のスキルは高いが『伸び』は鈍い」
などなど、意義や結論が一言で分かるような研究を実践しています。
これは口で言うと簡単ですが、「キャッチーな結論」と、学問的な誠実さ・分析の正確さを両立させるのは、実際のところものすごく難しいです。自分自身も留学中に痛感した点なので、それをあっさりと実現しているのは、尊敬の一言です。
そしてこの教授、教育大学院(1年目)での、自分のアカデミックアドバイザーでした。ICE/IEPAでは、プログラムディレクターや博士課程在籍中のコースアシスタントとは別に、こういった教授がアカデミックアドバイザーとして、一人一人に割り当てられます。月に1回くらいを目安に、自分の論文についてアドバイスを受けに行く感じです。(TOEFLのリスニングで出てくるような、教授との研究相談トーク、本当にやりますよ!笑)
自分の研究テーマは、Prashantが当時取り組んでいた研究とは全然違っていたのですが、1年目の自分の相当つたない英語を聞いて、何がやりたいのか一瞬で理解し、読むべき論文や見るべきデータについて提案してくれたり、分析のために足りない視点を補ってくれたりと、本当にお世話になりました。また、プログラム後半になって、統計学についての自分の理解が深まり始めると、分析ソフトで使うべきコーディングについても具体的に教えてくれるなど、学生の理解にあわせて伴走する、お手本のような教授だったなと今でも思い出します。
つい最近も、新型コロナウイルス感染症関連で、「事実ベースの短いビデオより、理屈入りの長いビデオの方が、人々の行動変容に効果的」という論文を出しています!直観だと意見が分かれるようなトピックに対し、実際に実験で答えを出す、しかも有用性が明確である、という意味でこれもお手本のような研究です。
二人目はこちら。
②Eric Bettinger
こちらも教育経済の教授です。(他大の動画しかありませんでした…笑)この人は知識の幅が広い。授業のタイトルだけ見てもこれだけあります。
Statistical Analysis in Education: Regression(教育における統計分析:回帰)
Economic Policy Analysis for Policymakers(政策形成者のための経済政策分析)
Topics in Brazilian Education: Public Policy and Innovation for the 21st Century(ブラジルの教育におけるトピック:公共政策と21世紀に向けたイノベーション)
Experimental Research Design and Analysis(実験的アプローチによる研究デザインと分析)
The Economics of Higher Education(高等教育の経済学)
教育、高等教育、公共政策、経済学、統計学と幅広い分野に精通しています。自分は統計と公共政策関係の授業を受けたのですが、どれもとても分かりやすい。高等教育関係の授業の資料も知り合いに見せてもらいましたが、これまた分かりやすい。ついでに、スペイン語と中国語も話せます。ブラジルのトピックの授業を持っているということは、きっとポルトガル語もできるんでしょう…
自分では「教育が研究対象」と言っていて、南米での「教育バウチャー」の効果を調べたり、「奨学金の複雑な申込手続きを手伝う人を、保護者に派遣する」ことで、その子どもの大学進学率などが上がるか?(上がります)といった研究が主軸です。が、その他にも、スポーツスタジアムへの補助金の効果分析、ヘルスケア、州政府と連邦政府の関係など、授業で扱うトピックは広範でした。
以前にこちらの記事でご紹介した、ノーベル経済学賞2019の内容も、Ericの授業がかなりベースになっています。EricとPrashantがいなかったら、「留学で勉強してきた!」とは胸を張って言えなかったかもな、とさえ思います。
インプットとアウトプットのバランス
さて、なんで自分はこの二人を紹介しようと思ったのだろう?と考えてみました。Prashantはまあ、アカデミックアドバイザーとして良く知っているから…というバイアスがあるのかもしれませんが、二人の授業でとりわけ顕著だったのは、「学生がインプットする時間と、アウトプットする時間がバランスよく配分されていたこと」かなと思います。
課題のリーディングや講義を通じて新しい知識がいくつも得られますし、それを正しく使えているかチェックするための演習問題なども、節目節目で用意されています。かといって「詰め込み」で授業が終わるのではなくて、自分の興味関心を深め、クラスにシェアするためのプレゼンテーション、ディスカッションの時間もしっかり用意されています。
「アメリカの大学の授業はアウトプット中心で~~」といったよくある話は、それなりに真実なのですが、若干、アメリカというよりMBAの印象に引きずられている感もあって、インプット中心の授業も実際はたくさんありました。(逆に日本でも、MBAなどでインタラクティブな授業を展開されている方は結構いますしね。)
そもそもアウトプット中心の学びが成長につながるのは、①これまであまりそれを経験してこなかった場合か、②参加者が、大学内外で既にたくさんのインプットをしてきている場合、のどちらかだと思います。日本人の、大学受験でバリバリ勉強して、仕事も経験した層は、十分インプットしてきたので、アウトプットの時間が刺激的に感じます(自分も感じました)が、慣れてくると、アウトプットばかりの授業は、感想交換して終わってしまったな…?みたいに思うことも正直ありました。
要するに両方大事!という中で、両者をバランスよく授業の中に織り込んで、しかも、自分自身が出す研究アウトプットは一流、学生のアウトプットに対して出すコメントは洞察に満ちている、というのは、すごいことだったよなあ、と今でも思い出します。とても多様な学生陣に対し、「メッチャ賢いこと」を教授陣みんなで提供し続けている、だからみんな学びに向かっていけるのかな、などと思いました。
とにもかくにも、スタンフォードの魅力の源泉は「人」です!
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