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【コラム】過熱する「外国人価格(二重価格)」論争
最近、メディアでも取り上げられる機会が増えている、インバウンド旅行者向けの二重価格について。
通称「外国人価格」。
日本ではこれまで、外国人に向けた価格を分ける施設はあまり聞いたことがありませんでした。
「おもてなし」優先型の日本では、相手が外国人でも、日本人と同じサービスを同じ価格で提供していたところがほとんどで、ある意味それが一つの「日本名物」になっていたところもあります。
「どのような人にも平等な対応を」
私もCA時代、耳にタコが出来るほど聞いた&伝えていた言葉です。
日系の航空会社は2社とも、イギリスのエアライン格付け(リサーチ)
会社、SKY TRAX社の評価で、最高評価の5スターを何年も継続して受賞しています。
ミシュランの格付けをイメージしていただけるとわかりやすいのですが、SKY TRAXでも同じように覆面調査員が色々な便・色々なクラスに搭乗され、それを元に評価を受ける仕組みです。
毎年、その評価とともに、評価理由が伝えられるのですが、もちろん
「5スター」を獲得していても課題はあって、その理由の大半が「外国人
対応」に関するものでした。
日系の航空会社で課題として挙げられるのが…
「日本人のお客様と同じサービス・アプローチ・会話・提案を外国人旅客にも差異なく実施できているか」
「英語・多言語でのアナウンスが高い品質で提供できているか」
の2点です。
これを見ると、「ホスピタリティ」の質ではなく、「サービス」の質に評価の軸があるとわかります。
「いつでも・どこでも・誰でも・誰にでも」平等に、支払われた金額に対して提供される「べき」ものである「サービス(商品価値)」。
「私だけが・あなただけに・今だけ」特別に提供される、商品を超えた価値提供である「ホスピタリティ(感動価値)」。
「サービス=pay」ですので、「サービスの質」に対して課題があるということは、「支払われた価格に見合っていない」と感じるということでもあります。
では、冒頭の「外国人価格」問題に戻ると…
確かに世界各国の観光地では、「外国人価格」を導入している施設が多くあります。
私も経験したところでいうと…
パリのルーブル美術館やハワイのダイヤモンドヘッド。
中国の成都にあるパンダ動物園でも入場料は「外国人価格」でしたし、
インドのタージマハールでもそうでした。
東南アジアでは、タクシー料金も車の色別に設定されているところがあり、
「外国人は〇〇色のタクシーに乗って」と言われることもあります。
つまり、これも「外国人価格」と同じです。
正直、「支払う側」として、「外国人価格」が設けられている料金表を見ると、少し嫌な気持ちになりました。
けれど、「外国人価格」を設定しているところは、少なくても英語でのメニューがあったり、一部のアジア圏では日本語で書かれたメニューを出してくれるところもあります。
タクシーにおいては、料金が少し高い代わりに、運転手さんが英語対応できたり、遠回りしない約束がついていたりもしたのです。
加えて、「オーバーツーリズム」問題。
特に観光地・観光施設に関しては、外国人が多く訪れることによる「観光公害」を防止したり、対策をするための費用としても、「外国人価格」には意味があります。
そこで最近話題に挙がるのが…
「飲食店への外国人価格導入への賛否」
う〜ん。どちらか一方の答えを出すのは難しい話題ですよね。
もちろん、「利用者」としてだけ考えると、「ちょっと嫌だな〜」と思ってしまいますが、「お店側」として考えると、「アリかもな〜」とも思えます。
例えば、先ほど例に挙げたメニュー対応を充実させることもそう。
単純に外国人のお客様にも満足いただけるサービスを提供するには、費用も労力もスキルも必要です。
日本人のお客様と同じようなサービスを、外国人のお客様にも提供できるようになるためには、スタッフへの指導や挑戦も必要で、これって言葉で言うよりもすごく大変なことなんですよね。
本当にその「外国人価格」によって得られる利益を、そのような対策に
回し、最終的に「商品価値」が上がるのであれば、やる意味はあるのかもしれません。
しかし、中長期的視点で考えるとどうでしょうか…
「この店は外国人価格があるから、なんか嫌だな〜」が、そのお店の看板にならないことだけを祈ります。
どのような試みもやってみなければ分からない。
否定するのは簡単ですが、どのような事業であれ、リスクはつきものですし、試行錯誤しながら都度形を変えることは当然のこと。
立ち止まったらそこで終了ですからね。
まだこの問題は、東京などの都市部での話ですが、近い将来、地方都市でもこのような話が出てくる可能性があると思います。
その土地・環境・状況にあった解決策を、街全体で話し合って行けたらいいですよね。
《余談というかひとりごと…》
シンガポールやマレーシアで、“Market price(=時価)”と書かれたシーフード料理。
チリクラブとかがその代表格ですが…
あの“Market price”も実は「外国人価格」だったりしたのかなぁ?