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【コラム】外国人が感じる日本にないもの

先日、宮城県内を走る仙石線という電車に乗りました。
この電車は、仙台と塩釜・松島・石巻などを結ぶもので、その路線特徴から観光客も多く利用します。

これらは宮城県を代表する観光地ですが、その中には石巻にある「石ノ森章太郎萬画館」に訪れる外国人観光客も多く、昭和を代表するアニメ文化に触れるため、仙台駅から1時間以上をかけて移動する方も多くいらっしゃるそうです。

1日に数台しか来ない「石ノ森章太郎特別塗装車両」がホームに入ってきた時には、大勢の乗客が携帯や一眼レフのカメラを車両に向けていて、その光景に根強い人気を感じました。

現代を代表する日本のポップカルチャー。
ゲームや映画、アニメ、漫画、音楽などに限らず、オタク文化も含まれるようなサブカルチャーも含めて、その全てが全世界的にウケています。

10年ほど前、友人に連れられて行った「コミックマーケット(通称コミケ)」。


東京ビックサイトに入りきれないほどの人が溢れ、その中には本格的にコスプレなどを楽しむ外国人も多く、その認知度と人気に圧倒されました。

今年も8月に開催されるそうですが、インバウンド旅行者数の回復も相まって、今年も大きく盛り上がりそうです。

このような旅行のことを、専門用語で「SIT」と言います。
「SIT」とは、「Special(特別な) Interest(興味) Tour(旅行)」の略で、「特別な目的に絞った旅行」を意味します。

最近では、「アニメツーリズム」という言葉もあるくらい、その舞台になった場所への聖地巡礼や、アニメイトに行って好きなアニメのグッズを買うなど…それを目的にした旅行客も多くいるのです。

驚くことに、アニメでみた日本の景色や日本人の人柄に惚れて、日本への留学や移住を決める人も少なくないようなのです。

ITの進化から、世界のどこにいても日本の情報や文化に触れることが出来るようになり、また、飛行機に乗って外国に行くことへのハードルが昔に比べて下がったことも、その「行動力」を助ける要因になっているのでしょう。

どのようなきっかけであれ、日本人として自国に関心を持ってもらえることは、シンプルに嬉しい限りです。

しかし最近、少し残念な、そして「そうだよなぁ…」としみじみ考えさせられるような記事をしばしば目にします。

それは、日本に憧れや、日本文化へのリスペクトを持って訪日(来日)された外国人からの率直な感想です。

「日本には余裕と愛がない」

この言葉を見た時、「うーーーん」と思わず唸ってしまったと同時に、
「本当そうだよなぁ」と納得せざるを得ない感情でいっぱいになりました。

とある外国人Aさんは、新海誠作品に感銘を受け、その作品に描かれている東京の街並み、特に新宿の街並みを実際に見たいと来日されました。

その中でも描かれている、朝の通勤ラッシュの様子を見学したいと新宿に行ったAさんは、リアルな光景に足がすくんでしまったそうです。

少しの隙間もないほど人で溢れた電車内。
そしてみんなどこかイライラした表情。
近くに高齢者や妊婦さんがいても席を譲らない状況。
そして、驚くほど正確に次から次へと来る電車に、驚きを超えて少し不気味さすら感じたそうです。

「自分には無理だ…」

余裕がないからどこかイライラしているし、余裕がないから人に優しくできない。

本当、仰るとおりです。

この記事を見て、正直私は、自分が日々「当たり前」としている日本での過ごし方に対しての警鐘を感じました。

前職時代、飛行機に関わる仕事をしていたこともあり、「定時制」へのこだわりが今でも抜けずにいます。

日本の鉄道・航空は本当にすごい。
特に鉄道は、寸分の狂いもなく、毎日「当たり前」に定時運行がなされ、1分でも遅延が発生する際には、その理由とお詫びのアナウンスが何度も入ります。

それは飛行機も同じで、そもそも航空会社の格付けランキングの中にも「定時制」というカテゴリーがあるほど、「オンタイムはお客様とのお約束」だと当たり前に言い続けてきました。

10分以上の遅延が予想されると、必ずその理由とお詫びを何度もお伝えすることが徹底されていました。

そうなるとお客様にも申し訳ない気持ちになりますし、もちろんクレームをいただくことも増えます。

そのような状況を避けるためにも、自ずと遅れないように焦って仕事をしていたし、仲間同士もタイムプレッシャーのもと、十分なコミュニケーションが図れない状況が発生することもありました。

それが私にとっての「当たり前」でした。

現在、私は日々の生活での移動にバスを利用していますが、道路状況や天候、時間帯によって、大幅に遅延することが頻繁にあります。

残念なことに、そのような状況でも運転手の方から、その理由やお詫びがないことも多く、その度に「人の時間をなんだと思ってるんだよ…」とイライラしてしまうのです。

「余裕」がない。
まさにそれが招いた感情なのだと思います。
そればかりでなく、「愛」や「感謝」も足りないのだと思います。

インバウンド旅行者に限らず、日本人観光客であっても、せっかくの余暇を非日常で楽しみたいとワクワクしている時に、「余裕」や「愛」のないところに誰が行きたいと感じるでしょうか。

タイが「微笑みの国」と称されるように、心の余裕や豊さから醸し出される「微笑み」や「愛」を求めて、「あの国に訪れたい」となるはずなのに。

日本人の勤勉さは本当に素晴らしい素質であると自負します。
しかし、それによって相手を「窮屈」にさせているのであれば、それは本末転倒以外の何者でもないと、改めて痛感しました。

「バズる」の語源、「バズバイラル・マーケティング」。
夏の夜、電灯に虫が集まる様子と同じく、人は楽しくて明るくて心地の良いところに集まります。

その地をバズらせたいのであれば、まずはその地に住む我々の心に「余裕」と「愛」、「感謝」を持って、なぜか引き寄せられるような環境づくりを、まずはするべきなのかも知れませんね。

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