【深い社会】10 労働者たちの夢は、花火のように①
「構成主義」という名前を初めて知ったのは、大学での美術教育からでした。
当時は、その意味も、歴史的背景もわからず、そんなグループがあった、と言うほどのものでしたが、今回の調べ学習で、やっとつながった気がします。
日本での人気が高いピカソですが、ロシアにも大きな影響を与えていました。
ピカソが破壊した「美しい事が重要とされる芸術」、
とくに、貴族や、資本家が中心となって消費していた「芸術」を、
労働者のもとに返そうという運動です。
「ロシア構成主義」:ロシアアヴァンギャルドと言います。
アヴァンは「前」、ギャルドは「防衛」。前で防衛して戦うから、「前衛」。
「前衛芸術」という概念はこの時生まれました。
写真はウラジミール・タトリンの「第三インターナショナルの塔」。
新しい概念が生まれ、新たな対概念が誕生し、その上で、上位概念が作られ、らせんを描いて高まっていく。
まさしく、カント・ヘーゲルが生み出した「構成主義」です。
ロシアの若者たちの夢、希望がそのまま形となっていると言えるでしょう。
しかし、それも長くは続きませんでした。
構成主義の手法により生まれた、労働者たちの夢
「共産主義社会」。
夢を実現するべく、立ち上がったのがレーニンとクルプスカヤです。
レーニン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウラジーミル・レーニン
クルプスカヤ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ナデジダ・クルプスカヤ
二人はマルクス主義に学んだ革命家。
活動が激しすぎるとロシア政府に逮捕され、シベリア送りにされました。
二人は夫婦となりました。
フランスでは、庶民が何度も貴族社会に立ち向かい、共和政府を立ち上げました。
ところが、ロシアでは皇帝が国を治め、どんなにレーニンたちが活動を繰り広げても変化しなかったのです。
なぜなのか。
レーニンとクルプスカヤは、マルクスの著作を研究しました。
中でも、マルクスが書いた手紙に注目します。
他の社会主義グループが作った「綱領」へのマルクスの感想文、
「コーダ綱領批判」です。
マルクスのいた国、ドイツも皇帝によって治められていました。
なぜ、ドイツは変われないのか、マルクスなりの分析をしていました。
労働者が立ち上がる。
↓
民主主義にのっとり、自分たちの派閥を作る。
↓
多数派を取って、政府を作る
↓
議会で話し合うが、貴族たちが文句をつける
↓
つぶされる
だめだ。だめだ。
そもそもの貴族勢力が強すぎて、労働者たちが協力してもすぐに戻されてしまう。
ん~、
そうか。一時的にでもいいから、完全に労働者が権力を掌握し、
すべての抵抗勢力をぶっ壊して安定させないと、変わらないぞ。
「資本主義社会と共産主義社会とのあいだには、
前者から後者への革命的転化の時期があり、
その途中における政治上の過渡期においては
プロレタリアートの革命的独裁以外はありえない」
マルクスのこの考え方を「プロレタリア独裁」と言います。
この考え方にレーニンとクルプスカヤは注目します。
そんなときに起きたのが、第一次世界大戦です。
この対戦で、中心となって戦ったのが、当時のヨーロッパの中枢にいた貴族階級たちです。
貴族同士でお金を使い、貴族同士で戦いました。
たくさんの貴族たちが戦闘とそこから生まれた疫病で死亡しました。
これにより、ヨーロッパの貴族階級の影響力が著しく低下したのです。
ロシアでも、大戦の戦費がかさみ、負担が、民衆に課されました。
社会不安が増大し、デモ行進が増えました。
民衆を押さえようと、帝国はたくさんの政治犯を逮捕し、運動を鎮圧しようとしました。
そして、それは起きました。
当時の皇帝、ニコライ2世が、あまりの社会不安に権力を次の皇帝に移譲しようとしました。
ところが、皇帝候補が、みな皇帝になることを拒否したのです。
皇帝の座は空位となりました。ロシア帝国が終焉したのです。
政治犯は解放されました。
レーニンとクルプスカヤはすでに脱出して国外にいたのですが
ロシアの中央に戻ります。
さあ、権力の空白の中、だれが政府が作るのか。
まず、ロシアの資本主義グループが政治派閥を作りました。(2月革命)
議会を運営しようとしますが、上手くいきません。
次に、第二派閥であったレーニン・クルプスカヤたちが運営します。(10月革命)
なんとかなりそう。
ここで、「プロレタリア独裁」。
敵対するグループを次々とつぶしていきました。
国は内戦状態となります。(ロシア内戦)
このとき、レーニンたちのグループが使った旗が「赤旗」です。
火を意味します。最初は「血」じゃなかったんです。
だってロシア寒いし。
彼らは赤軍と呼ばれました。
対して2月革命を起こした資本主義グループは白軍。
彼らが使った旗が今のロシア政府の旗です。
他にも、緑軍、黒軍などたくさんのグループが権力をめぐって争いました。
まさしく、「カラー戦国時代」です。
結果的に勝利したのが、レーニンたちの赤軍です。
彼らが作ったのが、労働者たちの、労働者たちによる、労働者たちのための国。
「ソビエト連邦」です。
世界初の、労働者により作られた国でした。
神から託されたわけではない、人の手によって生み出された構成主義の国。
なんだか夢のある話だと思いませんか。
ところが、その内実は、どろどろしていました。
とにかく、みんな意見がバラバラ。
せっかく国を作ってもいつ、また革命が起きるかもしれない。
レーニンたちは秘密警察を作ったり、反対派をどんどん逮捕・処刑したり、
「プロレタリア独裁」により、強圧的に行動しました。
そして、レーニンから次の世代へ、権力が引き継がれるとき、
「プロレタリア独裁」は、さらに暴走していくのです。
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