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毛糸玉もあなたも「なにもの」にだってなれる。(ミドルエイジはチャンスタイム)
買ったときはとってもお気に入りだった服も時が経つとなんとなくしっくりこなくなったりします。
特にデザインが凝ったものだとなおさら。
しっくりこない理由は、ただ単に飽きちゃったということもあったり、歳を重ねたことがその理由だったり・・・その服によってさまざまな理由はあります。
あなたはしっくりこなくなった服をどうしていますか?
私は15年ほどアパレル企業に勤めていたことがあります。
そのときは、とにかく新作を短いスパンで着回し捨てていく、ということをしていました。
それも仕事のひとつだと思ってたから、そのときは仕方ないと思っていました。
今思うと、もったいないことを繰り返していたと思います。
実はその仕事から離れてからの方が、服を大切にするようになりました。
離れてから大切に思うなんてね。
今はリメイクしたり、着られなくなれば小さく切って端切れにして、お掃除に使ったりと最後まで使い切るようにしています。
そういうことをするようになったら、服の中でいちばんサステナブルなものはセーターだということに気づきました。
セーターって、1本の糸を編み込んで作っているので、ほどけば1本の糸に戻ります。しかもほどきやすいから、簡単にほどけます。
なので、セーターはすぐに捨てずに糸に戻すようにしています。
先日も「しっくりこない」と感じたセーターをほどくことにしました。
セーターをほどきながら、ふと「毛糸玉って人生やライフキャリアみたい」なんて思いました。
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とっても可愛らしいデザインですが、
広がっている袖口と「可愛らしい雰囲気」が
歳を重ねた今の私にはしっくりこなくなりました。
「ほどくこと」を後退とは思わない。むしろ前進。
セーターをほどくという行動は一見「完成形になっていたものをいったん全てゼロに戻す」行為に思われます。
でも、これは決してゼロへの後退ではないのです。
この毛糸玉は、セーターになって誰かを暖かくして喜んでもらったという実績はあるのですから、セーターになる前の毛糸玉とはひと味もふた味も違います。
現状の形でできることは成し遂げました。
でもなんかしっくりこなくなってしまったから、また改めてしっくりくる形に変えていきましょう。
そのための第一歩目の行動が「ほどく」なのです。
セーターという形が消えたとしても、セーターとしてやったことも、セーターの原型である「毛糸」はそこに残っているのです。
人生もキャリアも同様に、いつだってしっくりこないという違和感があったら、立ち止まって、必要であれば自分をほどいてあげて、いったん原型に戻り、より今の自分に合う形へと編み直すことができるのです。
とはいっても、完成されていたものをほどいてしまうのは不安なものですよね。
でも、そこにあなたのこれまでの実績とあなたの核となるものは必ず残っていますから、大丈夫です。
しっくりこないまま進んで、本来の自分との乖離が大きくなるほど苦しいことはありません。
もししっくりこないなぁと思ったら、まず少し立ち止まって、自分そのものに目を向けてみるのは大切なことです。
さらに「しっくりこない理由を見つけること」もとても大切。
理由がわからないまま次に進んでも、すぐにしっくりこなくなってしまいます。
あるものを生かして新しい形を作ってみよう。
「人生」「キャリア」という毛糸玉は、過去の経験や学びが詰まった、自分だけの素材です。
それを使って、次はどんなものを編もうかと考える時間は、とても豊かでワクワクしますね。
毛糸の素材はウール、アクリル、カシミヤ、レーヨン、ナイロン・・・
ウール100%のものもあれば、さまざまな素材が混紡されているものもあります。
その混紡率によって糸の持つ特性が変わってきますから、どんな製品を作るかも変わってきます。
あなたのキャリアの毛糸玉には、どんな素材が入っていますか?
それから、それぞれの素材にどれだけの時間やエネルギーを費やしてきましたか?
その掛け合わせによって、あなただけの混紡率がみつかります。
それを知っていると、とっても心の力が強くなります。
それが自信となります。
ぜひ、あなたの素材(スキル、経験、アイデンティティなど)をじっくり考える機会を作ってみましょう。
かつて大切にしていた考え方や、幼い頃に思い描いていた夢がふと蘇ることもあるでしょう。意外にそこに自分の本来のアイデンティティや、やってみたいことが埋もれていたりするかもしれません。
遠くに置いてきた夢を実現するチャンスも見つかるかもしれません。
ちょっと話は逸れますが、私は先日、子供の頃の「空色のお茶碗が欲しい」という夢を叶えようということで、陶芸体験教室に足を運び、空色のお茶碗を作ってきました。
そんな小さな夢を実現するだけでも、心はとっても豊かになりました。
(これについてはまた改めて記事にしてみたいと思っています。)
自分の素材を改めて知り、整理することで、次にどんな作品(=キャリア)を作るかもイメージしやすくなります。
考える時間は、ワクワクしますね。
そのワクワクを特に大切にできる世代、それがミドルエイジという時季だと思います。
自分にとって心地よい形を編み直してみよう。
毛糸玉を眺めながら、次は何を編もうかと考える時間は、その毛糸玉に込められた過去を思い出すと同時に、自分の未来をデザインする時間ともいえます。
『今度は、どんなデザインがいいだろう?』
『どんな編み方なら、より長く大切にできるだろう?』
大人になってからここまでの選択肢は、子供の頃の自分が思い描いていたものとはまったく違っていたかもしれません。
違っていることにどんな感情をあなたは抱くでしょうか?
少しの寂しさをもしも抱くようでしたら、ぜひ思い描いていたものの断片でも構いません。実現させる時間を持ってみませんか?
これまでの経験をどのように活かすかを考え、自分にとって心地よい形を「編み直す」ことができます。
経験値が高い今だからこそ、それが可能なこともあるのです。
もしかしたら、まったく新しい職業に挑戦するかもしれないし、今の仕事の中で役割を変えるだけで実は子供の頃に夢見た自分に近づくかもしれません。
どんな選択をするにせよ、一度ほどいて編み直すことで、よりしっくりくる形は必ず見えてくると、私は信じています。
転機を恐れず、編み直す勇気を。
セーターをほどくのは、少し勇気がいることです。
形になっているものをほどいてしまうことでもったいない気持ちになることもあります。
でも、そのまま着なくなって捨ててしまうより、ほどいた毛糸という素材を使って新しく編み直した方がずっと使い続けられることも多いのです。
キャリアも実は同じような考え方ができます。
「このままでいいのかな?」という違和感や「このままでどこまで働けるのかな?」と違いう不安を感じることがあったら、一度立ち止まって、今の自分に合う形を考えてみるのも大切なことなのです。
たとえ今すぐ答えが出なくても、自分の中にある毛糸玉(経験やスキル)は必ず次の一歩を支えてくれるよい材料となることは間違いありません。
一見大きな方向転換と思うようなことも、これまでの経験やスキルの活かし方は必ずあるものです。
大切なのは、ほどくことを恐れないこと。
そして編み直す勇気を持つこと。
そうすれば、きっと今の自分にぴったりの新しい一枚が生まれるはずです。
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人の手の持つ可能性ってすごいものですね。
「計画された偶然」も大切にしてみよう。
さて、セーターもどんどん毛糸玉になってきました。
ほどいた毛糸は『来年の自分』のために使おうと思っています。
ネックウォーマーとベストにしようかな。
それとも編み込みがたっぷり入った大判のストールにしようかな。
それともまたセーターにしようかな、でも次はシンプルで長く着られるようなデザインがいいな。
何にしようか考えていると本当にワクワクします。
『来年の自分は何を必要としているのかな』
もしかしてネックウォーマーを編み始めたけど、少し失敗しちゃったからマフラーに変更しよう、なんてことも起こっているかもしれません。
それで結果的に、ネックウォーマーより使う頻度が高くなったりするかもしれませんね。
人生もキャリアも思うように進まないことは多いですが、そのつまづきをきっかけに大きく前進することもあったり、方向転換したらすごくしっくりきて「あーよかったな」と後になって思うこともたくさんありますね。
それは実は偶然に起こったことではなく、計画されていたものだった、というキャリア理論があります。
偶然と思う転機って、実は人生の大切なスパイスですよね。
あなたもぜひ偶然を大切に、これからの人生、ますます自分らしく、ワクワクとお過ごしくださいね。応援しています。