今年もまた、春がきたよ
23年前。この時間だったかなぁ。もうあまり覚えていないのだけれど、当時の先輩から電話が来た。あの頃はスマホなんてなくて、家の電話。
開口一番、彼女は「あのひとを追いかけちゃ駄目だよ」そういうニュアンスの言葉をかけてきた。
なんて返答したかは全く覚えていない。いま、あのときの彼女とは連絡もしていない。でもまあ、漠然とどこかで元気にしてくれてたらいいなとは思ってる。
確か、アイルトン・セナのときは目の前で事故を観てた。あのときも、五月で、次の日の学校で訃報を聞いた。なけなかった。
ゆめものがたりのように、現実感がなかった。
hideちゃんのときは、ああ……あのヒトが、あのやさしい人がよっちゃん残して自分から、絶対に逝くわけがないって…………だから、だから絶対に【じさつではない】って今でも思ってる。後追い出来たなら、どれだけ救われただろう。
でも、いま。
ワタシは、いきてる。いきを、してる。
どれだけ自分が嫌いでも、嫌でも、この血筋を遺したくなくても、どれだけ、いきたくなくても。
理由?
そんなの、一つしかない。『hideちゃんが悲しむから』それだけ。それだけだよ。
たとえ抜け殻であろうと、たとえ生きることそのものが苦しかろうと、私は私を辞められない。そして、春が来るたびに不安定に揺れて凹んで、後悔しながらも、それでも。
23年前の5月。もういつなのかすらも思い出せない。でもお葬式の後なのは確か。夕飯として連れ出された寿司屋で食欲もないまま、つけられてたテレビ画面の向こう側をずっと眺めていた。画面の向こうでは、あまりにもあまりにもかなしいオトで彼の名を呼ぶ泣き叫ぶ声が聴こえていた。出来るなら、やって良いならばわたしも崩れ落ちて泣き叫びたかった。哀しさに悔しさに理不尽さに。
なんで、どうして、わたしは、ここにいるの?
あれから何回か献花しに行く機会があった。葬儀会場になった場所へは数回しか足を向けることはなかった。たとえ、職場が近くても、どうしても無理だった。ミュージアムには誰かしら友人が付いてきてくれて、ひとりで行くことはなかった。中に入った途端に、わたしをそっとしてくれてた。そのミュージアムも既にない。
そんな感じなので、お墓の場所は知っていても、いまだに足を運ぶことは出来ていない。いつか行けるかな。行ける日が、くるかな。わからない。
今年もまた、春がきてしまったよ。ねえ、hideちゃん。今年は、ぎりぎりでカラオケで【HURRY GO ROUND】を歌えたよ。去年より、少しはうまくなったかな。来年も歌えるように、どうかどうか見守って欲しい。
もしかしたらもう、どこかで生まれ変わっているのかもしれないあなたへ。
スマイルは0円です。 飲み物のセットは+100円となっております。 ご一緒にポテトはいかがですか?