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韓国マスオさん日記 〜お通夜に参列する〜
※今回は葬儀に関する内容になっています。さすがに斎場でカメラを使うわけにはいかなかったので、葬儀の写真はありません。タイトルの画像は記事の内容と関係ありませんが、なにもないのも寂しいので光州の風景でも…。
お通夜に参列することに
先日、わたしのハトコにあたる親族からカカオトークのメッセージが届きました。ハトコの伯母にあたる人が亡くなった、今日通夜があるけどお前も来るか? とのことでした。
在日コリアンの場合、朝鮮半島に暮らす親族との関係が完全に切れてしまったという人が多いと思います。わが家の場合は韓国の親族との繋がりがいまもあり、特に父方の祖父の田舎である光陽(クァンヤン)市はわたしの住む光州から車で1時間ちょっとの距離にあります。ご近所とはいえませんが、同じ全羅南道だし、そもそも東京よりは遥かに近い。そのため韓国の親族になにかあったときはわたしが連絡係を務めることになっています。
わたしの父や伯母からすると亡くなったおばあさんは従姉妹にあたります。父に訃報を伝えると「お前が代わりに通夜に参列し、お香典も渡してもらえるか」とのことでした。
ちなみにわたしも亡くなったおばあさんとは何回もあったことがあり、特におばあさんの息子さんは30年ほど前仕事の関係で日本に住んでいたことがあります。彼との再会を果たすという意味でも、わたしはお通夜に参列することにしました。
韓国でお葬式に参列するのは初めてではないのですが、お通夜はほとんど経験したことがありません。というのも、連れ合いの祖父母が亡くなったときはわたしだけ日本におり、訃報を聞いて航空券を用意している間にお通夜が終わってしまい、なんとか告別式には間に合った、という流れだったからです。
日本だとお葬式に参列するのは多少プレッシャーを伴います。年に何回も参列するわけではないので、葬儀でのマナーは忘れがち。「あれ、お焼香って何回やるんだっけ? 」などと迷ったことのある人も多いはず。わたしも「前の人と同じようにすればいいや」などとその場しのぎを繰り返してきました。
今回お通夜に参加するときも、とにかくハトコの真似をすればいいや、と軽い気持ちで臨みました。
韓国のお通夜について
光陽のバスターミナルに到着したのが夕方6時過ぎ。すぐにハトコが車で迎えにきてくれました。斎場はターミナルから車で5分ほどの距離。めちゃくちゃ便がいいです。
※光陽という街は日本ではあまり馴染みがないと思います。また別の機会に触れてみたいと思います。
斎場に着き、いよいよお通夜本番です。ここからは韓国の一般的なお通夜についての解説も交えていきたいと思います。
かなり昔の記事ではありますが、韓国の葬儀の流れについては上のリンク先がよくまとまっています。記事では病院に併設された斎場が出てきますが、今回わたしが訪れたのは独立した斎場でした。むしろこっちの方が珍しいかも知れませんね。
日本では弔問客が自ら香典袋を用意するのが普通ですが、韓国では斎場に備え付けの封筒に入れてもOKです。わたしも今回は備え付けの香典袋を利用しました。
服装もワイシャツ以外は黒で統一する日本と違い、質素であればなんでもいいといった感じです。今回わたしは慌てて喪服を引っ張り出してきたのですが、いざ光陽についてみるとハトコは白いTシャツに黒いズボン。他の参列者も青い柄シャツだったり、Tシャツだったりとさまざま。田舎だからかなのかはわかりませんが、割と砕けていたのが印象的です。
日本では仏教式の葬儀が多いかと思います。お通夜に参列する人は受付で記帳しお香典を渡した後、列に並んでからお焼香するというのが一般的でしょう。上のリンクを読む限り、韓国でもお香典を渡すまでの流れは日本とあまり変わらないようです。ただ、今回参列した葬儀は記帳もせずお香典も選挙の投票箱のような箱に入れます。あまりにそっけなくてちょっとびっくりしました。
日本の葬儀と違ってお焼香はなく、遺影に向かってクンジョル(※下のリンク参照)をした後、喪主に向かって挨拶します。儀式めいたことはこれでほぼ終わり。日本と違ってスピーディかつ簡素で少し拍子抜けします。
おじさんとの再会
喪主を務めるのは30年前日本にいたおじさんでした。彼は農業の研修を受けるために一時期静岡県に暮らしていました。東京に遠戚が住んでいるということで2回ほど東京のわが家に遊びに来たことがあります。当時わたしは中学2年生。それ以来の再会となります。
親族の中でわたしがいま光州に暮らしているということを知っているのはハトコ一人だけ。喪主もまさか30年前に数えるほどしかあったことのない日本の親戚が来ているとはつゆも知らず。ハトコに「ほれこいつ、日本の◯◯だよ。覚えてるでしょ」と言われて目を丸くして驚いていました。「もう日本語なんて忘れちゃったよ」と笑いながら話す喪主のおじさん。人の良さそうな笑顔は今も健在でした。
喪主への挨拶を済ました人から食事をします。日本の葬儀の場合、通夜式が終わってから通夜ふるまいを食べ始めますが、韓国では喪主への挨拶を済ませた人から食事をとります。そのため、わたしがテーブルに着いたときはすでに大勢の人が食事をしていました。さすがにどんちゃん騒ぎをする人はいませんが、かといって湿っぽい雰囲気という訳でもありません。そしてある程度食べ終わったらそのまま帰ります。
以前、友人の結婚式に参加したときもこんな感じでした。食事を済ませるとあっさりと式場を後にする人も多いので、「もしかしたら結婚式や葬儀と関係ない人もご飯を食べているのでは? 」と思ってしまうほどです。連れ合いいわく、冠婚葬祭は地域ぐるみでおこなうという認識がいまも残っているので、割とおおらかな雰囲気で行われるとのことでした。
ハトコはわたしに泊まって行けと言いましたが、子どもが風邪気味だったので最終のバスで光州に帰ることにしました。しっかりと親族としての務めを果たせたし、おじさんとも会うことができました。やはり冠婚葬祭は人と人を繋ぎ合わせる大事な場ですね(葬儀は少ないに越したことはありませんが)。これからも親族との繋がりを大事にしていきたい、そう誓った夜でした。