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アトピーが教えてくれた「本当の自由」
序章:不自由から始まる自由の物語
アトピー性皮膚炎(以下、アトピー)は、私の人生にとって避けて通れない存在だった。かゆみ、炎症、赤み、そして他人の視線。それらはまるで鎖のようにまとわりつき、自由とはほど遠い世界に私を閉じ込めているように感じた。
「自由になりたい」
そう願ったことは一度や二度ではない。しかし、ふと考える。そもそも自由とは何なのか? そして、なぜ私は「自由がない」と感じていたのか? その問いを深めるうちに、私はあることに気づいた。
アトピーという「不自由」を通じて、私は「本当の自由とは何か」を学んできたのだ、と。
第一章:アトピーがもたらす不自由
アトピーを持っていると、多くの制約に直面する。
1. 身体的な不自由
かゆみがひどいと、夜中に何度も目が覚める。掻きむしれば皮膚は傷つき、朝にはシーツが血に染まっていることもある。肌が荒れると外出が億劫になり、暑さや乾燥などの環境にも敏感になる。食べ物や衣類、スキンケア製品まで気を使わなければならず、「普通に生活する」ということが一筋縄ではいかない。
2. 心理的な不自由
アトピーが目立つと、「肌を見られたくない」と感じる。夏場に半袖を着るのをためらったり、温泉やプールに行くのを避けたり、無意識のうちに行動を制限してしまうことが多かった。人の視線が気になり、「どう思われるだろう?」と考えてしまう。それがさらにストレスとなり、症状が悪化するという悪循環を生んだ。
3. 社会的な不自由
学校や職場でも、アトピーが影響を及ぼすことがある。特に幼少期には、周囲との違いを意識させられる場面が多く、劣等感や孤独感を抱くことも少なくなかった。仕事では、ストレスや生活習慣の変化によって症状が悪化することがあり、「普通に働く」ということすら難しいと感じる瞬間もあった。
私は「不自由」だと感じていた。自分の身体が思うようにならず、他人の目を気にし、社会の中で生きづらさを感じる。こんな状態で、どうやって自由を感じられるのだろう?
第二章:自由とは何か?
「自由」という言葉を辞書で引くと、「束縛を受けず、自分の思うままにふるまえること」と書かれている。しかし、本当にそうなのだろうか?
哲学者のジャン=ポール・サルトルは「実存は本質に先立つ」と述べた。これは、「人間は生まれながらにして何者でもなく、行動によって自らの本質をつくる」という意味だ。サルトルはまた、「人間は自由であるがゆえに責任を持つ」とも言っている。
つまり、自由とは「何の制約もないこと」ではなく、「自ら選択し、行動すること」なのではないか?
ここで、私はハッとした。アトピーによって多くの制約を感じていたけれど、それは「自由がない」ということではなかった。私には、アトピーという制約の中で、自分なりの選択をする自由があったのではないか?
第三章:アトピーの中で自由を見つける
アトピーを通じて、私は少しずつ「自分なりの自由」を見つけていった。
1. 身体との対話が生み出す自由
かゆみや炎症があるとき、私は「なぜ今、症状が出ているのか?」と考えるようになった。食べたもの、睡眠の質、ストレスの有無。こうして自分の身体と向き合うことで、「自分の身体を知る」という新たな自由を手に入れた。
例えば、ある食べ物を食べた後に症状が悪化することが分かれば、それを避けることができる。睡眠の質が重要だと気づけば、生活習慣を見直すことができる。アトピーを「敵」として戦うのではなく、「対話する相手」として接することで、自分自身の選択肢が広がったのだ。
2. 他人の視線から解放される自由
「肌を見られたくない」という気持ちは、私にとって大きな制約だった。しかし、あるとき気づいた。「他人は、私ほど私の肌に注目していないのではないか?」と。
もちろん、無関心でいられるわけではない。でも、他人の目を気にして何かを諦めるよりも、「自分がやりたいことを優先する」という自由を持とうと決めた。半袖を着ること、温泉に行くこと、自分の好きな服を着ること。少しずつ「自分のために」選択することで、私は他人の視線という不自由から解放され始めた。
3. 自分の人生を楽しむ自由
アトピーを持っていることで、「やりたいことを我慢しなければならない」と思い込んでいた時期があった。症状を気にして、外出やファッション、趣味など、本来楽しめるはずのことを後回しにしてしまうことも多かった。
しかし、あるとき気づいた。「アトピーがあるから」と諦めるのではなく、「アトピーがあっても楽しめる方法」を探せばいいのではないかと。
「やりたいことを制限する」のではなく、「楽しめる形に工夫する」。そう考えることで、アトピーがあっても、いや、アトピーがあるからこそ、より自分らしく人生を楽しむ自由が広がっていった。
第四章:「不自由の中の自由」に気づいたとき
アトピーは、確かに私に多くの制約を与えた。しかし、私はその制約の中で「選択」し、「行動」することで、自分なりの自由を見つけることができた。
不自由の中でこそ、自由の価値が際立つ。もし、何の制約もない人生だったら、私は自由の意味を考えもしなかったかもしれない。
「何もかもが自由ではない。でも、その中で自分にできることを選び取る。」
これこそが、アトピーが教えてくれた「本当の自由」だった。
結び:あなたにとっての自由とは?
もし、あなたが「不自由だ」と感じているなら、一度問いかけてみてほしい。
「本当に、自分は自由を失っているのか?」 「その中で、自分が選べるものは何か?」
アトピーは、不自由の象徴ではない。それは、「本当の自由とは何か」を気づかせてくれる、人生の教師なのかもしれない。
あなたにとっての自由とは何だろうか?
有料記事「アトピーと生活デザイン」は「AtoD method」の元となった僕がアトピーと向き合った約5年間の記録です。
アトピーと向き合った1人の人間の内面の葛藤や生活の様子について知れる内容になっており、「AtoD method」への理解を深められる情報コンテンツになっています。”how to 本”と”生活エッセイ”を組み合わせた形式で作成しました。アトピーと向き合う上での”新しい発見”があれば幸いです。
「AtoD method(エートゥーディー・メソッド)」
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