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無駄だけど、無駄じゃない

僕の好きなものは実態のないものばかりだ。

音楽、小説、アニメ、映画。

これらは全て虚構でしかなく、
何をしても実態を表すことは不可能だ。

自らの意思では動くことのできない、
いわば操り人形でしかないといえる。

しかし、それらは人間という実態をもつものから創り出されたものであって、どこか、現実と繋がりを持っている。

人から紡ぎ出されたきめ細やかな描写、
美しい音の旋律、
安らぎをあたえてくれる言葉の連なり。

実態はないものの、
人から生み出されたものである以上、
温かみをもって私たちをゆたかにしてくれる。


現実にないものを好きになっても無駄でしかない。

なんて、言われたことがある。


そんなものに愛を注ぐぐらいなら、
もっと自分自身を磨いて社会的成功を掴み取れと言いたいのだろう。

確かに正しいかもしれない。
そうした方が自らの富は増え、
別の意味でゆたかになるかもしれない。

そんなことはわかっている。
そのうえで、僕は虚構を愛し続ける。


どれだけそれを愛していたとしても「無」
でしかない。

でも、僕は現実逃避をしているとは思わない。

その「無」は心に内在し、自分の現実へと必ず影響を及ぼすからだ。

「無」から勇気をもらえば、現実の行動が変わる。

「無」から喜怒哀楽を受ければ、
現実の自らの感情を増幅させ、
より大きな感慨となる。

無駄ではあるけど決して無駄じゃない。

そう信じて、僕はこれからも虚構と肩を並べ、
この生きづらい現実を歩いていくだろう。

#15

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