見出し画像

肥満論:サイズアクセプタンスの思想

現在、米国において軽蔑されている人々は‘喫煙者’と‘肥満者’だと言われている。両者とも自己を律することが出来ない‘意志薄弱者’であり、努力を怠った者として、米国の社会的信念である「努力する者は報われる」というアメリカン・ドリームに反する存在として、忌み嫌われているのが米国の現状のようだ。

しかし、‘喫煙者’は措くとして、‘肥満者’は両義的な存在であり、‘肥満’の原因は先天的な要素が7割で後天的要素が3割であるというのが、専門の研究者の間では定説になっている。(注1)  従って、肥満は、必ずしも意志薄弱で怠惰の結果であるとは言えない。この『肥満論』を書いている意図も、特にこのような‘肥満’に対する偏見や‘肥満者’に対する社会的差別の打破にあるのだと、序文で記した。⇒肥満論:序文 例えば、あくまでも生まれつきの体質の結果であるのに肥満していることで差別されるのは、黒人が「肌が黒い」という理由で差別されるのと同様に、まさに理不尽である。

ところで米国において「被差別者」の立場に立って、体型 (特に大柄) によって差別されず、それぞれの体型の持ち主の人格を個性として尊重する社会を形成しようと長年運動している人々がいる。彼等─ISAA(International Size Acceptance Assocation のスローガンは次の通り。

SIZE is relative...(「サイズ」は相対的だ...)
Every BODY is OK!! (どんな人のどんな体型でもオッケー!!)
The size of YOUR body should be nobody's Bu$ine$$.(「あなた」の体型のサイズについて、誰かにあれこれ言われるいわれはない、大きなお世話であり、金儲けの手段にされるべきでもない。)HP

Policies and Mission:
ISAA is dedicated to size acceptance and bringing an end to what it feels is unfair discrimination against large people. Its mission is "to promote Size Acceptance and fight size discrimination worldwide through advocacy and visible, lawful actions".
方針と使命:
ISAAは、サイズ・アクセプタンス(注2)を推進し、大柄な人に対する不当な差別に終止符を打つことを目的としている。その使命は、「アドボカシー(注3) 活動と目に見える合法的な行動によって、世界中でサイズ・アクセプタンスを推進し、サイズ差別と闘うこと」である。

ISAA has adopted a position of opposition to weight loss surgery (WLS) as dangerous and unnecessary and conducted a campaign against it in 2001. This is common with most other size/fat acceptance organizations.
ISAAは、減量手術(WLS)を危険で不必要なものとして反対の立場をとり、2001年に反対キャンペーンを行った。これは、他のほとんどのサイズ/太め容認団体と共通している。

ISAA also opposed the definition by the U.S. government of obesity as a disease.
ISAAはまた、米国政府による肥満を病気と定義することに反対する。

Other policies and positions include:
・Opposition to feederism and similar weight gain fetishes
・Encouraging fitness and low-impact exercise (swimming, walking, etc.)
・Encouraging self-respect and self-esteem
・Encouraging healthy body image
その他の政策や立場は以下の通り:
フィーダリズム(注4)や類似の体重増加フェチへの反対
フィットネスと負荷の少ない運動(水泳、ウォーキングなど)の奨励
自尊心と自己評価の奨励
健康的なボディイメージの奨励

(注1)
蒲原聖可・著
『肥満とダイエットの遺伝学──遺伝子が決める食欲と体質』(朝日新書)
『肥満遺伝子──肥満のナゾが解けた!』講談社ブルーバックス
『ヒトはなぜ肥満になるのか』岩波科学ライブラリー
『図解雑学 なぜ太るのかやせるのか』ナツメ社図解雑学シリーズ
肥満論:痩せるメカニズム──レプチン効果
(注2)
acceptanceの辞書的な意味は「容認」で、その反対語はrefusal(拒絶)。
(注3)
Advocacyとはどういう意味?
意見表明の支援や擁護、代弁すること。 ラテン語の「voco(声を上げる)」に由来する言葉で、権利を侵害されている人のために声を上げることを意味する。もっと詳しい説明はこちら
(注4)
feeder (フィーダー )- 肥育者。肥満嗜好者の中でも「他者を太らせていく」過程を楽しむ者を差す隠語。

肥満論:序文
共愉──クイアの難問を解く生き方
肥満論:からだに纏(まつ)わるオノマトペ

いいなと思ったら応援しよう!