戦略プロフェッショナル 三枝匡|経営ノート
スッキリ好き
戦略は本当に実行可能か
立てられた事業戦略がいくら正論であっても、それを実行できなければ意味はない。意味がなければまだましで、有害になることもあるので厄介だ。私が好きで使っている言い回しに「正論が常に正しいとは限らない」という言葉がある。おかしな言い回しだが、自戒も込めて好きで使っている。
正論なので正しいことは大前提なのだが、そういう言い方をしたら理解はされないし、人の心を動かして行動に移すことはできないよ。だからその物言いは正しいとは限らないよ、という意味で使っている。そういう意味では、以下の引用文と同じ考え方である。
この本でも書かれているが、この考え方は現状に妥協しろというのではない。その通りだ。現状に妥協をしても成長はない。目的はどうやったら組織を動かして組織能力を高めるかということであって、正論を言い放つことではない。
そこを取り違えて正論ばかりを言って組織を動かせない人間にこそ「正論が常に正しいとは限らない」と言いたい。おそらく言っている意味は理解してもらえないだろうが。
そして、次の引用文がこの本のすべてを物語っていると考えている。しびれる一文だ。
良い戦略は極めて単純明快
この成功する戦略の検討プロセス11を挙げているが、そのすべての項目に「競合」と「絞り」の観点がついてまわっている。
仕事の優先度
全体市場の俯瞰
戦略製品の抽出
製品の差別化能力の確認
価格と利益構造のチェック
戦略ロジックの策定
組織の強み弱み
市場ターゲットの絞り
戦略展開の時間軸
価値観の「混乱化」
新戦略と実行プログラム
細かい説明は省略するが、競合を意識して戦いの場を絞り、リソースを集中させる。そう、選択と集中である。
こうしたプロセス(かなり緻密)を通して立てられた戦略が、最終的に良い戦略か悪い戦略か。判断基準は単純明快か複雑かである。良い戦略は極めて単純明快である。逆に悪い戦略は複雑な説明を要する。
この判断基準は、人に何かを提案する際にも重要な基準である。私自身も提案に際しては「この提案はシンプルか」を気にする。それでもシンプルになり切れていないことは、多くある。シンプルとは絞りを明確にすることなのだが、言うのは易し、カタチにするのは難しである。
提案先から「なるほどね、やりましょう」と言われるか「で?」と言われるか。このフィードバックを何度となく繰り返してきたが、それでも提案をシンプルにするということは今でも苦労をする。
最後にこの一文を引用するが、これは常に自問自答をしなければならない。
When confrontation is necessary , don't shy away from it. Confrontation is often necessary to achieve progress.