マイケル・ポーターの競争戦略 ジョアン・マグレッタ|経営ノート
スッキリ好き
戦略には選択が必要不可欠
まったくその通りで、これは決断するということにつながる。結局、何でもあり、AとBのどちらも行うという決定は決断ではない。決めることから逃げているに他ならない。
トレードオフが存在するところでは、両立はない。一方を選択すれば、他方は必ず排除されるか、損なわれる。これを理解した上で、腹をくくって一方を選択することが決断であり戦略であると考える。さらに言うと、これからはこのトレードオフを超えるトレードオンの考え方が求められるが、それは別の機会で。
日本の未来は、あらゆるものが減少してくる。人口、生産年齢人口、需要など。その一方で負担は増加する。高齢者人口、医療費、国の借金など。このどうしようもない状況は、今から40年ほど前(つまり1980年代)には予測ができたはずだ。1980年代から少子化が進み、1990年代には生産年齢人口は減少に転じている。その未来が見えていながら決断をしてこなかったのが日本国であり、日本の企業である。
機能しなくなった古いシステムを、何とか意味のあるものにしようと延命することに尽力をする。英断をすることなく決定を先延ばしにした結果、生産性を落としてきたのが今の日本だと考えている。
過ぎたことにとやかく言っても過去は変えられないので、今からは二股をかけている場合ではないということだ。これ以上の後退は許されない。今こそ、本物のトレードオフが他社と異なるバリューチェーンをもつことになり模倣者を寄せつけないことを証明する時ではないか。
そう考えると鍵は、経営の決断→トレードオフ→競合他社と異なるバリューチェーン=優れた戦略であると考える。起点は、経営の判断である。
何をやらないかを決める
で、トレードオフというと「何をやるか」に焦点があたりがちだが、それと同じくらい重要なことは「何をやらないか」を選択することだ。これは本当に重要である。でも、現実はこの「何をやらないか」を選択することは勇気がいることであり、この決定を守り抜くことは難しい。
どうしても多くのことに対応できるように多機能になっていき、誰に対しても何にでも対応できる全方位を求めたくなる。しかし結局「何でもできます」は裏を返せば「何も一流にはできない」ということになる。
経営に携わるようになったら、私はまずこの「何をやるか」の選択と「何をやらないか」の選択をしたい。必ず反対意見は出てくる。全方位型をとりたい人間は、トレードオフが競争優位を生み出すことを信じない。その反論を覚悟した上で、それでも決断しなければ、前には進めない。
松下幸之助氏も「道をひらく」の "断を下す" で断を下すことの尊さについて次のように述べている。
これからは次の引用を信じて、前に進む勇気が必要だ。
Move with confidence. It gives your work force and substance.