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なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか ポール・レインワンド/チェザレ・メイナルディ|経営ノート
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ちょっとスッキリするが、あまり好きではない
戦略と実行の溝
この本は、個人的には「まわりくどい」という読後感であった。結局、独自性のあるケイパビリティ(組織能力)を一貫性をもって日常業務に落とし込みなさい、と言っているだけだと思っている。それ以上のことは頭に入ってこなかったし、そのことをいろいろと言葉を変えて長々と説明しているように感じてしまった。なので、あまり好きではない。
私の読解力のなさと辛抱強く読み進められなかったことが原因だろうが、副題(原題)が結局は一番わかりやすかった。
How winning companies close the strategy -to- execution gap
(成長している企業は、どのようにして戦略と実行の溝を埋めているのか:個人訳)
結局のところ、この「戦略と実行の間に存在する溝」がどの現場でも大きな問題なのである。この溝を埋められなくて、苦労をしている組織が世の中には多く存在する。
この点は、三枝氏も「戦略プロフェッショナル」で断言している、
事業戦略はその会社の組織能力に見合ったものでなければならない。
と根っこは同じような気がする。
本書でも、冒頭部分で以下のように「成長している企業がどのようにして戦略と実行の溝を埋めているのか」を説明している。
コヒーレンス(一貫性)を有している企業であれば、戦略と実行のギャップを埋めることに苦労する必要がない。最初からギャップが存在しないからだ。自社の商品・サービスはすべて自社固有の特徴あるケイパビリティに支えられていて、同じ価値提供を実現する。つまり、もともと戦略に実行可能性が備わっているのだ。
もともと戦略と実行に密接な結び付きがあって、そこに一貫性があればギャップなど発生しないということだ。何とも拍子抜けする一文だが、真理だと思う。もともと戦略に実行可能性が備わっている、というのはとても重要なことである。
戦略がケイパビリティ(組織能力)に見合っていなかったり、戦略に実行可能性が備わっていないと戯言でしかない。
文化の力は強い
また文化の話になってしまった。結局のところ、経営や戦略、またその実行を考える時に、企業文化・組織文化の話は避けて通れない。プラスの面もあれば、マイナスの面もある文化。そう簡単には変わらないし、そう簡単に模倣もできない文化。これは立派な無形の経営資源である。
彼ら(企業幹部ら)は文化のマイナス面を排除して新たな面を構築するための「文化の変革」に取り組むが、報われないことが分かる。文化は簡単にあるいは急速に変化しないのだ。組織の文化は多面的で複雑で、強い影響力を持つ。そこには、その企業の人々が共有する行動、思考、感情、価値観、考え方が蓄積されている。
本当にその通りだ。文化はケイパビリティ(組織能力)同様、簡単に急速には変化しない。というか、組織文化と組織能力は一体だと考えている。組織文化が組織能力の大枠を定めて、その枠の中でケイパビリティ(組織能力)が構築されていくのではないだろうか。
企業文化・組織文化がケイパビリティ(組織能力)の大枠を決めて、そのケイパビリティ(組織能力)に見合った戦略の中で業務が実行される。もしもその戦略と実行の間に溝が存在する場合は、それを埋めようと調整するが、その時も "見えざる手" のごとく企業文化・組織文化の力が働く。
それは "「神の」見えざる手" というよりは、そこで働く人々が作り上げた行動、思考、感情、価値観、考え方の蓄積による "見えざる手" なのだ。だから最終的な調和の仕方は、各企業(企業文化・組織文化)によって異なる。
今まで出てきた戦略、実行、ケイパビリティ(組織能力)、文化の4つを変化しやすいものと、変化しづらいものに分類すると以下のようになる。
変化しやすいもの
戦略
実行
変化しづらいもの
ケイパビリティ(組織能力)
企業文化
そして、この変化しやすいものと変化しづらいものは、相互に依存している。最終的には、変化しやすいものが変化しづらいものに影響を受けて "いびつ" に変化をする。この "いびつさ" が、「戦略と実行の間に存在する溝」の一因ではないだろうか。
組織の根っこに蔓延る文化は、組織を成長に導くこともあれば停滞をもたらすこともある。ただ文化に関してひとつ言えることは、検証して、ダイナミックに修正していかなければならないということだろう。
組織文化は奇妙なものだ。文化は信条ではなく行動の積み重ねなので、思った通りには絶対にいかない。だから「一度決めたら放っておく」のではダメなのだ。
Welcome difficult assignments. Progress lies in accomplishing difficult work.