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「若き見知らぬ者たち」を観た。
※ネタバレがあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1729689687-kmD6ApLRK1hv2iw9z3afFbNO.jpg?width=1200)
…終わりから振り返ってみると、最後の日向の笑顔は怖い。
お母さんと日向、二人で食卓を囲むシーン。
お母さんは、涎を垂らしていたように見えた。
症状が進んだか、別の病気が現れた兆候なのかもしれない。
そのシーンで日向は笑っていたのだ。
彼女は病気のことをちゃんと理解しているだろう。
だからお母さんはもう長くないことを悟った安堵の笑顔に見えた。
あの笑顔は、恐ろしい笑顔なのかもしれない。
とはいえ、鑑賞者が日向の感情を推し量れるものではない。
日向の生きている環境は凄まじいものだ。
彼女にしかわからないことなのだ。
序盤は登場人物の関係性が掴みにくかった。
彩人と壮平は顔が似ているように見えた。
どっちだ?と思うシーンもあった。
結局、全然違う人物なのですぐにわかってきた。
心が抉られるような瞬間が多かった。
ときには自分を重ねて、悲しみや恐怖を思い出した。
映画と現実が地続きに思えた。席を立ってもくらくらした。
しかし映画だ。エンドロールの決まり文句「この作品はフィクションであり…」のとおり、これはフィクションだ。現実ではない。
映像によって感情が煽られて、彼らの味方でありたいと願っても、どれだけ手をさしのべたいと思っても、これは映画だ。なにもできない。
むしろ、目を背けたくなる現実の瞬間に向き合おう。
映画の中に自分や家族、友だちを見つけたなら、
自分にこそ、彼らにこそ、味方であり、手を差し伸べるべきなのだ。
劇場には私を含めて三人しかいなかった。
上映後に全員が「はあ〜」と深い溜め息をついたのがはっきりと聞こえた。