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役者が揃い、役者が違った。 〜第67回オールスター競輪〜

役者揃いのG1。
それがオールスター競輪である。

強いのはもちろん。強さと同時に魅せる競輪ができるか、人々を熱狂させる力があるのか?オールスター競輪にはそんな意味も込められているんだっけ?
と、勘違いするくらい連日熱狂した開催になった。


初日から大熱狂


一次予選シードのドリームレース
ファン投票人気上位9名である。SS班が多く選ばれ、例年GPの再戦のような出走表になるが今年は山口拳矢が漏れ、代わりに今年の宮杯を制した北井が入った。
北井が入ったことが、大熱狂の最高のレースへと豹変したのだ。

まさに力と力のぶつかりあいだった。
北井と新山。清水と深谷。深谷と脇本。赤板からゴールまで見所しかない。素晴らしいレースであった。

競輪特有の人間臭さ、非情さがでた


力と力がぶつかり合ったレースを制したのはなんと王者松浦だった。
前年のGP王者として1番車を纏い、このスター集団を相手に勝つという難しさに加え役者が違うと言わんばかりに勝って見せたのはさすがである。
筋書きがあるのでは?と思うくらいよくできていた。

力と力の勝負が繰り広げられる一方で競輪の難しさや人間くささがでたシーンがあった。北井とやり合い先行争いに敗れた新山。もう見るからに力は残っていなかったにもかかわらず、番手の佐藤慎太郎は新山が隊列に戻れるようにスペースを作り、向かい入れたのだ。
向かい入れたからといって、新山に再度仕掛けられる力も残っていない。となると佐藤にとってはただ位置を下げただけになる。これが決勝なら間違いなく違っていただろう。

頑張った仲間を向かい入れるということはどういうことなのか?向かい入れてもらった新山はどう思うのか?を考えれば明白である。

不穏な空気のゴールデンコンビ


一方で対象的だったのはかつてゴールデンコンビと言われた松浦と清水裕友のコンビである。GPの時と同様に松浦が清水に早々と見切りをつけ切り替えたのであった。松浦は勝利したというものの清水がどう思ったのか?それも2度目となると…
レース後のコメントでは位置が悪いと1番車の松浦の位置取りに対しての苦言?とも取れるコメントもしていた。それに最近、清水は松浦に前を任してもいない。
かつてゴールデンコンビと呼ばれた2人の連携を見たいものだ。

走る者、観る者の価値観 番手とは?勝負とは?


決して佐藤の判断が良くて、松浦の判断が悪いということではない。
それぞれの立場や役割あっての判断であり、これは観る人の価値観によって変わる。ということ。それが競輪の素晴らしさでもある。

一見、仲間想いの佐藤のようにも見えるが、競輪はあくまでも勝負であって、結果はライン揃って7、8着だ。中には佐藤の車券を買っている人もいるだろう。

一方で松浦はまだ脚が残っている清水を見切り、早々に切り替えたものの自らは1着を獲った。

熱いレースの裏で勝負とは?番手とは?を考えさせられた。
これは良い悪いの話ではなく、誰の走りを応援するか?誰の走りが好きか?ということになってくるのだろう。競輪とはとことん面白い競技である。

凄まじさは続く シャイニングスター賞と準決勝


関東をかすめる台風が来て、悪天候でも開催された二次予選とシャイニングスター賞。台風の影響でバンクコンディションがコロコロ変わる状況、選手も自身の状態が全くわからない。というコメントがあったくらいだ。

その状況でもシャイニングスターの名にふさわしい輝きを放ったのは深谷であった。
初日ドリームで清水と脇本とやり合った脚がここでも爆発。
赤板で新山につっぱられ、後方に下げられるもバックで7、8車身あった差を一気に差す剛脚を魅せた。

シャイニングスター賞覇者深谷を敗退に追い込んだ新山の強烈な先行とそれを支えた”番手”佐藤慎太郎


これ優勝するんじゃね?という空気感も漂うほどに強かった深谷をなんと準決勝で敗退に追い込んだのは新山だった…

2周先行の大逃げ誰も前に出ることなくそのままゴール線を切った。
それもライン3人でワンツースリー北日本完封劇。
この勝ち方を、強者集うG1の準決勝でするのはさすがSSと言わざるを得ない。
この攻めの走りを、果敢に実行する決断力と判断力だけでも一流である…

実は新山がG1でこの勝ち方をしたのは初めてではない。
23年平塚ダービー。これまた準決勝でライン3人で独占。

この時も番手は佐藤慎太郎だ。偶然じゃないだろう。
佐藤の初日にみせた先行選手への想いを日頃から受け取ってかどうか。佐藤への信頼がすごく見えた先行だった。


ドリームレース覇者松浦を追い込んだ近畿勢と”番手”古性


3番手に九州の荒井がついた変則3車となるも、打鐘すぎに荒井が捌かれ、2車となった近畿。それも3番手には松浦が入る最悪な展開…
最終2センターでは外には捲ってきた北井と郡司、内には松浦…
いくら古性でも…という状況でもこの男は違った。外に牽制をしつつ内の松浦にブロックをするという離れ技を繰り出した。毎度、見るものの度肝を抜いてくる…
インタビューでは松浦の動きを読んでこの動きをしたのいうコメントを残した…

もちろん窓場がかかっていたのいうのも大きいだろう。窓場がタレていたら前に踏むしかなくなるわけで、窓場のかかりも松浦を敗退に追い込んだ要因だ。

一体誰がこの男の横(ヨコ)を通過できるのだろうか。


役者が違った 決勝



決勝では北日本4車を前に出し、準決勝で完封劇をみせた新山の先行に迫り、佐藤慎太郎のブロックを受けながらも乗り越えた窓場。それを差した古性。
近畿でワンツー。
岸和田G1で神奈川勢にやられ、平塚G1でやり返す形になった。いかにも近畿らしい。決着はGPか?

今年ここまでG1未勝利の古性。
昨年は年間最多に迫る3勝。そしてオールスターファン投票堂々1位で乗り込み、最高に盛り上がったオールスター競輪を締めくくった古性優作。


まさに役者が違った…


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