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窓辺で手紙を読む女

「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行ってきました!今年は、メトロポリタン美術館展やスコットランド国立美術館展も開催され、西洋美術好きにとってはたまらない年です。

さて、今年の目玉の1つ、フェルメール作の「窓辺で手紙を読む女」です。こちらは背景の壁面に塗りつぶされていたキューピットの絵が、修復により復元されました。復元後の絵は、国外初公開という話題の作品です。

右が修復後の絵。

壁面にキューピットの絵が存在すること自体は1979年のX線調査でわかっていましたが、塗りつぶしはフェルメール自身が行ったと考えられていたため、そのままドレスデン国立古典絵画館に展示されていました。

それが4年前に、塗りつぶしはフェルメールの死後に行われていることが判明しました。作品の保護のために、表面に繰り返し施されてきたワニスを取り除く作業を行っているときに、塗りつぶされた部分の絵の具が、他の部分と溶剤の反応が異なることが分かり、更に調査を進めると、キューピットの絵と上塗りした絵の具の間に長年経過した汚れの層があることが判明したようです。科学の力はすごいですね。

誰がなぜ、塗りつぶしたのか? 驚くべき説が言われてます。この作品は1742年にパリのコレクターから、ザクセン選帝侯のコレクションに加わったことがわかっていますが、この時の資料に、「窓辺で手紙を読む女」は巨匠レンブランドの作品として記録されており、かつ、コレクターからザクセン選帝侯へ「寄贈」されたと書かれています。このコレクターは寄贈の見返りに、ドレスデンに新設されたギャラリーの責任者に推薦されました。つまり、コレクターが巨匠レンブラントの絵らしくするために、キューピットを塗りつぶして寄贈したという説が最も有力です。ひどい話です。いつの時代もどうしようもない奴がいるもんですね。

もう1つ、今回の絵画展で魅力を感じたのが、今回の作品は第二次世界大戦末期のドレスデン空襲を乗り越えたものだということです。特に、「窓辺で手紙を読む女」は戦利品としてソ連軍に接収されてしまいましたが、その後、無事に戻されたそうです。過去の惨劇を乗り越えた作品を、現在、東京で見ることができることを幸せに思います。



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