成年向けゲーム『ナツイロココロログ』感想
10月頃だったかに、ファンザのセールで安くなっていたので所謂エロゲを3つ購入し、試しにやってみることにしました。そのうちの1本の感想です。ちなみに1500円になっていました。
ネタバレを全く受けずにこのゲームの筆者の評価を知りたいという人向けに、このゲームをプレイする価値はどこにあると筆者が思うかを先に書いておきます。妹キャラ、実妹キャラが好きな人は絶対妹のルートをやってください。その他の人は、紹介ページを見て気に入る部分があったら買ってみてもいいんじゃないですか?という感じです。以下ではストーリーの話も絡めながら書いていきます。
攻略可能キャラは基本的に主人公も所属する電脳研究部部員で、先輩と後輩と幼なじみと妹。サブヒロインで先生も攻略できる。他の部員に攻略不能だが顧問の先生の弟がいて、女の子みたいな外見という設定があります。
このゲームの世界の中では電脳空間がすごく発達していて、意識をそのまま電脳世界に移動させるようなことができています。物語は、電脳研究部(実態はほとんどゲーム部みたいな、よくある感じ)に所属する学生の男主人公と4人の女の子達が、顧問の先生が開発中の「リアルリンクプロジェクト」という電脳世界でバーチャル身体(アバター)を使って行う恋愛シミュレーションゲームのテストプレイに参加することになったことをきっかけに動いていきます。バーチャルと言っても、感覚的な経験までそこでできてしまうというなんともすごい世界です。また、ここがキモなのですが、なんと女の子は、自分以外AIであると思っている、すなわち、自分以外にバーチャルアバターとして参加している女の子達と主人公のことを、本人の性格や思考パターンや行動パターンをコピーしたAIであると思いながらプレイしています。ややもすると主人公=『ナツイロココロログ』をプレイしている我々が、ヒロインの内心を知りながら安心して恋愛シミュレーションに没頭するための装置になってしまいそうなこの設定がどう扱われていくのかが各ヒロインの攻略シナリオの評価の鍵になりそうと思いながらプレイしていました。もうひとつ、なんとアバターとして現れたヒロイン達は現実の本人達と性格がかなり異なっています。バーチャル世界で性格が異なるのはどうしてなのかも、見所のひとつです。最初はデートが主人公とヒロイン全員(のアバター)で行われていくのですが、テストプレイの進む過程で、最終的に相手役を一人に絞りたいと先生から提案され、ここで誰を選ぶかがルート決定のための選択肢の一つとなり、個別のルートへと進んでいきます。
この段階で気になってくるのは、女の子達が他の女の子の性格が現実と異なるのをどう思っているのか、一人でも他の女の子にこのゲームのことを話しちゃったら破綻してしまうのでは、というようなことですが、この辺は最後まで触れられずに終わりました。途中でやめることになった子達はどう思ったのかなどの話も、ほんの少しだけあると言えばありますが、物語上重要な役割は果たしません。このあたり無理してるなあという感じがしました。
個別ルートの話をする前に、そこに至るまでの全体外観を軽く。まず主人公が電脳研究部に入るきっかけから始まり、途中で各ヒロインのことを少し知るパート、リアルリンクプロジェクトへの参加を頼まれるパート、全員での電脳世界におけるデート、部費不足からの活動実績作りとしての地元夏祭り協力パート、電脳水着イベント、現実水着イベント、1対1でのリアルリンクプロジェクトの相手選び(実質ヒロイン選択)という流れ。ラブコメストーリーの王道を抑えた感じ。ここで気になったのは、電脳世界での全体デートに入った時点で各ヒロインから主人公への好意がすごく大きいこと。幼なじみと妹はストーリー上過去話が絡まると予想できるからまあいいとしても、他のキャラは特にそんな仲が大きく深まるようなことしてたかな、という疑問がわく。恋愛シミュレーションゲーム内だからそれっぽく振る舞ったのだ、と割りきることもできるけど、でも、という感じ。
以下プレイ順に各ヒロイン個別ルートの感想です。内容にめちゃめちゃ触れつつシナリオ批判的なこともバリバリやりながら好き放題書いていくので、気にせず読んでください。
小都音(後輩)ルートについて
共通ルートの中の最初のイベントCGで花壇の世話をしてるシーンが出てきます。そこで園芸部がいないから自分が世話をしているのだという話が出てくるのですけど、園芸部なにしてるの?という気持ちがすごく生まれました。この子は花にすごく詳しいけどなぜ園芸部ではないのか?については、内気で主人公の妹に誘われるまで部活に入れなかったから、でまあ許します。
この子の電脳世界でのアバターは「ライ」という名で、現実の小柄で控え目な姿とは全く違う出るところの出た姿で、性格も内気で引っ込み思案な本人とは全く違い明るく積極的で自分の気持ちに素直です。このライは電脳世界では有名なアイドルという設定が出てきます。あの子が実はアイドル!?というありがちな展開です。そこでアイドルに関係あるイベントでも起こるのかと思ったらなんと特にありませんでした。スポンサーとかいるの?とかダンスや歌のレッスンはいつやってるの?とか疑問がわくのですが本当に何も出てきません。なぜか、主人公とデートしてるのをファンに見つかったときファンサのかけらもない雑な対応をするシーンはあります。アイドル設定のリアリティーが薄すぎるというか、この設定本当に必要だったか?と思いました。
先にも軽く書きましたが、電脳世界で恋愛シミュレーションをする際、小都音はライのアバターを用いて行います。そして、主人公はライと親密になっていきセックスまですることになります。筆者はマジで?と思いました。小都音と親密になっていくルートなのだから、姿も性格も違う存在とそういうことになるのにすこしは躊躇したり悩んだりしないのか、というところに疑問を持ちました。というか、筆者はプレイ中、最初そういうシーンになりそうだなと察したとき、断って男見せるのかな?と想像してたら主人公はあっさり受け入れてしまって、拍子抜けしました。恋愛シミュレーションのテストプレイに参加中だから、で済んで、二股とか浮気みたいなことにはならないのだろうか?と思います。最後の方で小都音が主人公に「ライのことしか見てない」みたいに言うシーンがあるのですが、それはそう思って当然だろと思いました。この台詞で二人の心が離れたあと最後は和解することになるのですが、ライも一緒に愛されることを受け入れるに至る理由がよく分かりませんでした。姿と性格が全く異なるが記憶は共有する存在はどの程度同じと言えるかと問題化すると哲学っぽくなり考えるだけなら面白いですが。ライは小都音が生み出した電脳世界のキャラクタ―であり、演じる対象でもあり、小都音の相談相手にもなれると本人の一部とはいえかなり独立しています。ここをどう考えるかがこのシナリオの評価の分かれるところと思います。
ついでに完全に筆者が言いたいだけのことを書くのでここは無視していいのですが、エロシーンについて、このゲームでは電脳アバターと現実の本人の二種を何個かずつ各ヒロイン用意されることになるのですが、ライと小都音は外見が全然違うので電脳と現実の二種あってお得!みたいになりません。ライと小都音と主人公で3Pのシーンがありますが、ライがかなり目立って書かれます。小都音と主人公が1対1でセックスするシーンは物語上一回しか出てきません。俗っぼい表現で言うとライはいわゆる巨乳キャラ、小都音は貧乳キャラであるのですが、巨乳キャラのエロCGを多く出せばいいというような考えを製作陣が持っていたとしたら、即刻改めてほしいと思います。
話を戻して、幼少期に主人公と小都音は会ったことがあることを主人公が思い出す場面があり、この手のエピソードは安易といえば安易なのですが、個人的には結構好きです。でも、小都音も持っているはずのこの思い出に対して小都音側の感情が全然描写されないので、この設定いりました?となってしまいました。
最後にはライが小都音に吸収され、小都音が電脳世界でアイドルになっています。ライがアイドルって設定になんの説得力も感じてなかったので、そうですかという感じでした。消えてしまったライのやってたことをなぜ引き継げたのだろうと思います。外見が違いすぎて普通引き継げないだろうと思ったので。アイドルと付き合ってる特別感を与える効果以上のものはないと思ったので、この設定は本当に要らなかったと思います。
花言葉がちょいちょい出てきますがあんまり活きてない感じだったのが残念でした。電脳世界の主人公アバターが実はAIでないことをどうシナリオに活かすかについては、主人公と先生が会話してるのを初期段階から偶然聞いて知ってたで終わりました。まあ一人くらいはそういう風に処理してもいいでしょう。
小都音はビジュアルとキャラクターが二番目に好きだったので早めに攻略して、シナリオを進めてる最中は、ははーとか思いながらやってたはずなのですが、あとから振り替えるとシナリオの気になるところが目立つ結果になってしまいました。
綺新(きさら)(先輩、部長)ルートについて
この子も最初のCGが突っ込みどころありで、実は格闘技の師範代であり空手部と組み手をしているシーンなのですが、それを制服でしていたため蹴りを入れるときパンツが思い切り見えていて、それをなぜか本人が気づいてないという。このシーンを書いた人は女性をなんだと思ってるのだろうかと。馬鹿にしてるのだろうかと邪推してしまいます。CGでなぜか見える構図になっているだけというのではなく、本文中でも言及されているんですね。読者はエロゲの感想でそんなポリコレとかキャンセルカルチャーみたいなこと言うなと思われるかもしれないけれど、こういう非現実というか常識的な感覚がなさすぎるシーンがあると、キャラクターを生きた存在として捉えることに支障が出て十分楽しめなくなってしまうので、敢えて書きました。
主人公と親密になるまでの過程にはだれそうになりました。ヒロインが美人とか可愛いとか女らしいとかを本人は自覚してないけど主人公にはじめて指摘されて………みたいなのをフックにして物語を動かすのは禁止にしましょう。あと不良の出し方が安易すぎでした。不良はこの後別に物語に絡まないし、なんなんだと思いました。初デートの内容として唯一思い付くのが組み手であるのはおかしいと思ったのですが、一応後半に活きるので不問と。
電脳アバターの性格がやたら性的に積極的だった理由が、本音を代わりに発信してくれるという開発中のツールを使用していてそれが未完成で不具合を起こしてるからで済まされるのはなんかがっかりしました。電脳世界の性格も本人の一部として現実の性格とどう絡み合っているかが見たかったのて。
一回心が離れてから和解するまでの流れはまあ良かったと思います。ただその和解する場所が公園で、そこでセックスする流れになると、ん?となりました。それというのも、公園でセックスはプレイの一環としてまあいいとして、人が周囲に誰もいないのもご都合としてまあいいとしても、この公園はなんと小都音ルートで、小都音がきれいに手入れしてる場所なのです。小都音はキレていいと思います。
最後に出てくる父親の声が好きでした。あと、リアルリンクプロジェクト設立の経緯が明らかになるところは結構好きです。物語に慣れてる人なら先を読めるっちゃ読めるとは思いますが。
梅宮先生ルートについて
綺新ルートでリアルリンクプロジェクトの設立の話が出たのて、先生ルートにも関連した何かあるのではないかと思ってこのタイミングで進めました。が、特になにもありませんでした。裏話がもう少し見たかった。
先生と生徒だからとかそういう葛藤は思ってたより軽めでした。実は主人公のことがかなり前から好きで、主人公がどんな人を好きになるか知りたくてリアルリンクプロジェクトの女の子アバターを電脳研究部員のものにした、と告白するシーンは意味がわからなかったです。思いが間接的過ぎませんか。
久遠(同級生、幼なじみ)編
お嬢様キャラも兼ねてます。幼なじみ枠なので主人公に恋する理由の説得力が強めでした。というより上に書いた人が弱すぎました。生徒会に入ってますが、別に生徒会が深く関わるイベントはなかったです。でもこの設定はいらないとまでは言えなかったです。
主人公は過去にこの子を助けるために背中に傷を負って今も痕があると明らかになります。そんな大事なことを個別の話で言わないでほしいのですが。他のルートでセックスして裸を見られるときどう説明するんですか?
主人公が無意識に背中を掻く癖がこのルートで急に描写されはじめて、久遠は電脳世界で主人公がAIでないということをこの振る舞いをきっかけにして気づきます。AIならそういう癖こそちゃんと学習するものじゃないのですか?やたら幼なじみだった過去の思い出を知ってることあたりから気付くんじゃないかと想像しながら読んでいました。科学技術のレベルがどうなってるのかは分からないのですけれども。
電脳世界で正体がばれ思いを伝えあったあと主人公は昔久遠が好きだったからという理由で誕生日にエメラルドを送ることにします。学生の発想じゃないと思うのですが。登場人物は全員18才以上だからいいのかもしれないけど。そして誕生日会イベントを迎えることになります。幼なじみがお嬢様で身分違いで誕生日会と来たら次来る話は親が決めた結婚相手系だろうなと予想できて、どう外してくるのかと思ったら外してこなかったのですが。二人の距離が離れてるあいだに、主人公は亡くなった久遠の母エレナとの約束を思い出します。この約束が他のルートでどうなってるのか気になるので思い出さないで欲しかったです。その後はなんやかんやあって久遠の家のプライベートビーチで想いを交わしあってセックスすることになります。砂とか気にならないんですか?はまあいいとしても、行為中に久遠が主人公の背中の傷の痛みと破爪の痛みを並べて語るのはなんか、そういう交換で意味付けされたら嫌じゃないですか?と思いました。でその後はなんやかんやそうなるのは知ってました的な展開へ進んでいきます。テンプレート展開に亡くなった母との思い出を重ねてオリジナリティーを出そうとしている感じです。形見や手紙が出てきて、その中で久遠と主人公の関係に言及されてたりするんですが、この手紙別ヒロインのルートの時空で発見されたら久遠はどんな顔になるんだろうと思いました。このルートにだけ現実で結婚式を行う描写がありCGでも主人公の顔がかなりはっきり描写されていたのですが、このルートがトゥルーエンド想定ということなのでしょうか。筆者はエロゲ素人なので分かりませんでした。
鈴(実妹)ルートについて
筆者は妹キャラが好きなので、このルートを一番楽しみにプレイしてました。なので評価甘めになることは自覚しているんですが、それ抜きにしても描写の丁寧さや物語の進め方が一番上手いと思いました。
でも気になったところを書きます。この手の話にありがちな、両親が海外にいるやつなので家事は兄妹で分担してするのですが、共通ルートの最初の方に、主人公が洗濯をしようとして妹のパンツを見つけ、物珍しげにいじくっていたら妹にバレて怒られる、というシーンがあります。このシーン絶対いらないだろと思いました。またこいつツイッターでよくみるちょいエロ系ラブコメ批判みたいなこと言ってるわと思われるかも知れませんけど、家族の下着を過剰に気にするのって失礼じゃないですかね。あと、怒られかたがなんか軽く、その後丁寧に謝って許してもらったみたいな描写もでてこなかったので、悪いことをしてしまったことへの制裁が足りてないという印象です。ラブコメのエロシーンって、ちゃんと制裁されるから成立するものだと思うので。
あと、どうしても仕方ないと言えば仕方ないのですが、両親が一回も家に帰ってこないのはどうなんだという感じはあります。
以上ちょっと書きましたが全体にこのルートのシナリオがいいのは事実です。日頃の振る舞いと内心との関係が現実と電脳世界に配置され、2つの世界が相互浸透しながら二人の関係が変わっていくところが丁寧に描かれていきます。兄と妹という通常禁忌とされる関係も現実/仮想という二つの舞台で役割を演じられていて、電脳世界という設定を最も上手く活かせていると思います。兄妹関係であることから生まれる葛藤にはなあなあですませず、ちゃんと正面から向き合いながら二人の道を進んでいきます。主人公アバターが実はAIではないことをめぐっても、一番素直に進めて物語を動かします。
総合的に、このシナリオがあるからこのゲームは買う価値がある、と言えるほどの内容であると筆者は思います。
おわりに
エロ系の内容だからって自重しないとか、批判、というかダメだと思ったことをちゃんと書くというテーマでこの記事を書きました。ネタバレ禁止とか他人の好きを否定するなとかの意味不明なマナーはゴミ箱に捨てました。その結果、批判的なことを書こうとすると具体的に内容に触れることになり長くなってかつしっかり考えることが必要と分かりました。皆さんも嫌いなもの、ダメだと思うものがあったらそれをしっかり自覚して手放さず、書き表すことで頭の訓練をするとよいと思います。それでいいのか。