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甲斐よしひろさんビルボードツアー。

今年も無事終わりました。2015年から始まり2年目2016年から参加しておりますこのシリーズ、今年で10年目でした。ギター、フィドル、ウッドベースでアメリカントラッド、フォーク、ブルーグラス的な…という初期の感じから進化して、どんどん色んなカラーのものに挑戦しております。

今年のMCで「凄いことやってるのに、見合った反応が無い!」というお言葉がありましたが、そのあたりについて少々解説を。

件の曲は『スマイル』なんですが、元々甲斐さんのボーカルに、バックはストリングスのみなんですね。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロです。それを今回の編成でやろうということなんで、1stヴァイオリンを山田くんが、2ndヴァイオリンとヴィオラパートを健太さんが、チェロパートを私がコントラバスで、という感じでやっております。原曲のアレンジは久石譲さんなんですが、やはりボイシングが素晴らしいので、是非冒頭だけはこのままやりたいと思い、健太さんには単音でもコードでもなく、指定の2音(4声の真ん中ふたつ)を弾いてもらってます。途中からはギターらしい内容に移ってもらいました。チェロパートをコントラバスで弾くのの何が難しいかっていうと、まぁ若干音が高い。ぐらいの話なんですが、こういう事をやる人はほぼ居ません。ヴァイオリンパートをヴァイオリンで弾くのはまぁ普通?という感じもしますが、普段クラシックじゃないものばかり弾いてる山田くん的にはチャレンジではあります。

ライブの他の曲もそうなんですが、クリック(メトロノーム)使ってないんです。「何を自慢げに…」との声もありそうですが、昨今ライブコンサート界隈は、クリックあって当たり前な現場も多く、レコーディングは勿論クリック使ってると思うんですよね。ボーカルに関しては結構字数多くて、少しでもテンポが速すぎるとよろしくないので、テンポ設定、およびキープについては結構シビアです。

そして完成品はというと…確かに目立つ超絶技巧があるわけでもなく、エキサイティングなわかりやすいノリノリなわけでもなく、お客さんが熱狂するかと言われれば、難しいだろうなと思います。しかし演奏してる方からすると、上記の理由でやりがいが限界突破してるので、曲が終わった瞬間の「よし!」っていう達成感はハンパないです。なので、ステージと客席で温度差が発生してしまったと…今年はMCのおかげでスマイル終わりは毎回大喝采でしたけどね。

ここまで解説で、ここから私の感想。
私だったら「まぁ反応薄くてもしょうがないかな、わかる人にしかわからない凄さだよな」と思ってしまう所、敢えて「凄いことやってんだ!」って伝える甲斐さん。
『甲斐さんファンってこうだよね』というにはライト層からコア層まで幅が広すぎるとは思うんですが、あくまで私の所感ね。

知ってる有名なヒット曲だけ聴きたい1番ライトな層も人数的には多いんだと思うけど、ビルボードシリーズに来る層は、多少コアなほうの人達だと思うんです。選曲もコアだし。で、やっぱり甲斐さんご自身がめっちゃ音楽マニアじゃないですか。ラジオもずーっとやってらっしゃって、ファンの方達は甲斐さんが紹介する曲に触れてきてて。それによって音楽偏差値が底上げされてると思うんです。偏差値とか危険な言葉を使いましたけども、要は「音楽たくさん知ってる」とかそういう事です。

歌声が良い
曲が良い
歌詞が良い
アレンジが良い
バックの演奏が良い
録音が良い
ミックスが良い
アルバムジャケットが良い

とかね。観点が増えればより深く楽しめます。

『お客さんは全員かくあるべし』とは思わないですよ?ライト層大いに結構でございます。でも「イェーイ!!」っていうのだけを楽しむところから一歩進んで、演奏の中身とかまで楽しんでくれる人が増えたら、演者側としてはとても嬉しいなと思います。

そしてそれを伝えてくれたのが、評論家じゃなくて、センターで実演してる方だってところがまた良いです。「最初はよくわかんなかったけど、ラジオとかで甲斐さんが良いっていうなら…」ってポップ、ロック音楽に詳しくなっていったファンの方、結構いるんじゃないですかね。『詳しくあれ』とは言わないけど、そうやってノリノリヒット曲じゃないものも楽しめるお客さんが増えたら、我々演者も大変幸せです。

「バックの3人、本当に凄いことやってるんで…」からはじまるスマイル、緊張感ありましたねー。
お客さん的には「具体的には何が凄いかわからないけど、そう言われて聞いてみたらなんか凄い気がした!」だけでもいいんです。
立ち上がるでも手拍子するでもないこのくらいのテンポの曲は箸休め…じゃないんだぞ!という事が事前にわかってから聞くと、いつもと違う見え方になったのでは??

ぶっちゃけ「もっと拍手くれ」って中々言えないですよ。おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!

でも私としては、言ってくれて結構嬉しかったりしたのです。

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