知識ゼロからMTGを始めました②【MTGアリーナ】
↓前回
「……さい」
「……目覚めなさい」
ゲームを起動するや否やスパーキーとかいう謎の光の玉が話しかけてきたが、私が驚かされたのはそのことではない。
不条理文学の代表たるフランツ・カフカの『変身』然り。
社会現象を巻き起こした『DQ3』然り。
冒頭での「目覚め」の描写には、より没入感を高める効果がある。
この「目覚め」の描写を用いたということは、少なくともMTG公式はカードゲーム体験に対して「ロールプレイ感」を重視しているということに他ならない。
私が今までやってきたカードゲームはその辺りが曖昧だった。
遊戯王を例にすれば、カードに描かれたモンスターたちの世界観はしっかりしているものの、それを操る「決闘者(デュエリスト)」についてははっきりと設定が定まってはいない。
(厳密にいえばそういった没入感を補完しているのは漫画(アニメ)なのだが、たとえ読者が遊戯や海馬を好きだったとしても、一体だれが遊戯や海馬になりたいと思うだろうか)
対してMTGは、プレイヤー同士が土地から魔力を得て魔術(クリーチャー等)を操り戦う――つまりプレイヤーが世界観の一部を構成しているのだ。
「スパーキーが話しかけてくる」という体験をした瞬間、それだけの情報量が頭に流れ込んできた。
きっとこのゲームの製作陣は、ゲームバランスよりも世界観の方を重視するタイプだと直感した(この直感の正誤はまだわからないが)。
恐竜デビュー
さて、一通りのチュートリアルを終えていざ対人戦デビューといったところで、何のデッキを握っていいかわからない。
スターターデッキ2023のシリアルコードを入力してみたが、なんとこのデッキがランク戦で使えなかったのだ。
こういう場合、最近のプレイヤーならばYoutubeで「初心者おすすめの安い環境デッキ」を調べてから戦地へ向かうのだろうが、生憎こちらは30過ぎた逆張りオタクだ。
若さ故の素直さを忘れ、歳を重ねた余裕を持ち合わせてもいない、最も未熟で未完成なお年頃なのだ。
されば私がオリジナルデッキでランク戦を駆け抜けてみたいと思うのは自然の理である。
まずは田舎のお裾分けのごとく山のようにもらえたスターターデッキの束を眺めてみる。
なるほど、どのデッキも土地はどうやら24,5枚程度で調整しているらしい。
2,3マナ帯のカードが多く、それ以上のカードの採用は少ない――つまりファッティ(切り札級の重量カード)をぶつけ合う遊戯王のようなゲームではなさそうだ……などと構築理念とゲーム性を理解していく。
その中でふと目に留まるデッキがあった。
恐竜――
男心をくすぐるそのフォルム、そして他カードの平均的な数値から逸脱したP/Tサイズ(MTG界隈ではクロックと言うらしい)から、瞬時に「デカいは強い」というデッキコンセプトまで伝わってくるようだ。
序盤を支える要、2マナ域のクリーチャーには恐竜がいると元気いっぱいになる小学生男児のような騎士、
そして恐竜がいると暴れまわる小学生男児のような恐竜の二種類しかいない。
この小学生男児たちでなんとか序盤を凌ぎ、後半は適当にデカい恐竜を出しておけばよい。
その分かりやすいコンセプトに惹かれ、まずは「ダイノマイト」(デッキ名も素晴らしい)を手に取った。
案の定よく手に馴染み、無改造のスターター同士で競い合う「スターター・デッキ戦(下記参照)」をこれで難なく突破。カードの使い勝手を把握しながら着実に微妙と思ったカードを入れ替えていく。
回していて特に強いと感じたのが彼↓だ。
前回の記事では暗号のように見えていた「護法②」は「相手に対象に取られた際に追加で2コストを要求する」という能力だったことが判明した。実質的な対象耐性と言っていいだろう。
それに加えて着地した次ターンから継続的に緑2マナを生む効果を持ち、「維持すればするほどアドを生む」という護法とシナジーする分かりやすい設計になっている、初心者にも易しいカードだ。
これが件の「ダイノマイト」には1枚しか入っていなかったのだが、どこで入手したかわからない2枚目を所持していたので早速追加投入した。
他にも所持カードの2マナ域に緑マナを生み出すクリーチャー(マナクリと言うらしい)を発見したため、当初の「デカい恐竜を適当に出す」というコンセプトから、明らかに頭一つ抜けた強さだった「暴走暴君、ガルタ」の早期着地を狙うというコンセプトへ軌道修正。
この微調整の甲斐あってか、その後のランク戦も驚くほど順調だった。
たまに事故ったりしながらも、ファッティを着地させたときの制圧力が凄まじくスパーキーランク、ブロンズランクを駆けあがり、ついにシルバーランクまで来たところで――壁が立ちはだかった。
赤単アグロ――
この「小さなネズミたちの集まり」がそう呼ばれていることを後に知る。
「対象に取るたびに+1/+1の永続修正がかかる」クリーチャー群に対して毎ターン装備魔法(エンチャント)やらインスタントで強化しつつ、結果的に「窮鼠猫を嚙む」どころか恐竜を食い殺すほどのサイズへと成長させていくというコンセプトらしい。
特筆すべきはゲームエンドまでのクロックを刻む速さで、こちらが「最速4ターン目で12/12の恐竜出せば実質勝ちだぞ~^^」などとやっている間に相手は実質も何も本当に勝っているのだ。
(見た感じ最低2マナあればそれなりに動けるようなので、土地事故も少なそうだ)
他のにも強いと感じるデッキタイプにいくつか当たったが、体感シェア2~30%を占めるこの赤単アグロに関しては全くゲームになっていなかった。
シルバーランクにしていよいよスターターデッキの延長を卒業し、メタゲームに参加する必要に迫られたのである。
次回、「人の嫌がること」をせよ。お楽しみに。