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東京メトロ上場は買いか?

10月23日、東京メトロが東京証券取引所プライム市場に上場しました。首都圏に住む多くの人々にとって欠かせない交通インフラである東京メトロの上場は、個人投資家を含む幅広い投資家から注目を集めています。初値は公開価格を36%上回る1630円で、終値では1739円まで上昇。この動きがどのような影響をもたらすか、詳しく見ていきましょう。

好発進で投資家の期待を集める

東京メトロの株は、上場初日から非常に好調なスタートを切りました。公開価格1200円に対し、初値は1630円を付け、その後47%上昇して1768円まで上昇。時価総額はついに1兆円を超え、売買代金もトップに立ちました。この結果を受け、東京メトロの山村明義社長は、「多くの方々に評価いただき感謝している」とコメントし、企業価値のさらなる向上に取り組む姿勢を示しました。

投資家の評価はどうか?

いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は、この好調な初値の動きに注目し、「業績にも安心感があり、個人投資家には人気の銘柄」と述べています。さらに、今後は主要な株価指数に組み込まれる可能性があることから、海外投資家からの注目も高まると予測しています。秋野氏は、株価が今後2000円程度まで上昇する可能性があるとも述べています。

一方で、ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ株式ファンドマネージャーは、より慎重な見解を示しています。「公開価格は割安過ぎた」と指摘しつつ、1600円程度を中心とするレンジが妥当であると述べています。また、同氏は「大幅な利益成長は期待できないが、ディフェンシブ性があるため、株価が大きく下がることはないだろう」との見方も示しています。

東京メトロの成長見通し

東京メトロの成長は、交通インフラとしての安定性に支えられています。都市部に限られた路線網を持つことから、人口減少の影響を受けにくいとされています。実際、東京メトロの1日当たりの平均輸送人員数は、国内大手鉄道会社の中で2位の位置にあり、日常生活に欠かせない存在です。

しかし、収益の多くを鉄道事業に依存していることから、不動産事業などの多角化が進んでいない点も指摘されています。また、新型コロナウイルスの影響により、輸送人員数がコロナ前の水準には戻っていないという課題もあります。2025年3月期の連結純利益は前期比13%増の523億円を見込んでおり、今後も堅調な業績が期待されています。

東京メトロは買いなのか?

IPOは基本的に需給に大きく左右されますが、数か月後にはファンダメンタルズによる評価が重要になってきます。東京メトロを検討する上で、JR東日本やJR東海との比較がポイントとなります。

ファンダメンタル分析

東京メトロの売上高は、新型コロナウイルスによる影響から回復基調にあります。しかし、地下鉄事業のさらなる成長余地を考慮する必要があります。同社は不動産や小売業も手掛けていますが、これらは副業に過ぎず、これらに注力する企業への投資の方が適していると考えられます。

鉄道事業は新規参入が困難なため、安定性はありますが、大幅な利益成長は見込みにくく、利益増加の手段としては運賃改定が主な施策となります。

業績と株価の比較

以下に東京メトロとJR東日本、JR東海の主要指標を示します。

  • 設定株価

    • 東京メトロ:1,739円

    • JR東日本:3,000円

    • JR東海:3,127円

  • 営業利益率(2024年3月期)

    • 東京メトロ:19.61%

    • JR東日本:12.64%

    • JR東海:35.51%(新幹線の利益率が高いため突出)

  • 配当利回り

    • 東京メトロ:2.30%(株主優待あり、配当性向40%)

    • JR東日本:1.73%(株主優待あり、配当性向28%)

    • JR東海:0.96%(株主優待あり、配当性向10%)

仮にJR東日本が配当性向を40%に引き上げた場合、配当利回りは2.47%に、JR東海では4.95%に上昇する見込みです。しかし、JR東海はリニア中央新幹線の投資が進行中で、2027年ごろまで配当性向が上がる可能性は低いと予想されています。

  • PER(株価収益率)

    • 東京メトロ:19.3倍

    • JR東日本:16.2倍

    • JR東海:8.1倍

まとめ

JR東海は新幹線を保有しているため、他の鉄道会社と比較するのは難しい部分がありますが、JR東日本と東京メトロを比較すると、東京メトロの株価はやや割高に感じられます。利益成長に大きな期待はできないものの、安定した配当と株主優待が魅力的であり、ディフェンシブ銘柄としての長期保有を検討する価値はあるでしょう。

東京メトロの上場は、ただの株式公開にとどまらず、日本の投資家層を広げる大きなきっかけになるかもしれません。


投資は自己責任です。

本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の銘柄や金融商品の購入を推奨するものではありません。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。

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