美しい買い物
美しい色。美しい形。美しい人。
これらがあるように、美しい行為というものがあると思います。
その中で最近特に考えるようになったのが、誰かから誰かに何かを売り買いするという行為。今回はそんな美しい買い物について考えていきたいと思います。
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あなたは、最近何を買いましたか?その買った物はどこで誰が作ったか知っていますか?
とても当たり前のことですが、全ての物は誰かの手で、もしくは誰かの目や手がかけられて作られています。機械を使って作られていたとしても、そこには誰かの何かの意思や想いが入っているものでしょう。
ここ数年で、サスティナブルやトレーサビリティなどといったキーワードが巷に飛び交うようになりました。言葉の一人歩きというのは、よくあるものだと思いますが、それらが美しい買い物なのでしょうか。
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僕はと言えば、ここ一年で割とお金使ったなぁという買い物を挙げてみると、マガジン a quiet dayの編集メンバーに半ば強引に?試着台に座らされて作ったレザーシューズ。これは長野の安曇野でハンドクラフトの革靴を作っているForest Shoemakerさんのものですが、結果、作って本当に良かった!と心から思っています。それとマガジンの取材で訪れ、フレームというニッチな分野でモノづくりに真摯に向き合う姿勢に感銘した長野の松本の犬飼眼鏡枠さんの眼鏡のフレーム。そして、最近購入したのは、ライフスタイルマガジンkinfolkとインテリアショップACTUSの共同ファッションブランドouurのデザイナーでもあった門井さんのオリジナルブランドitoの薔薇色の手染めニット。
これらの3つの買い物は、少し腹筋にチカラを入れながらお会計をするような価格帯のものではある他に共通点は、注文してからクラフトマン、職人、デザイナーが作っていくというスタイルなのです。つまり「受注生産」の体制なので買ったらすぐに手に入るものではありません。出来上がるまで早くて半年から1年くらいが平均です。普段日用品や本などは、専らAmazonなどで購入ボタンを押した次の日には手元に商品が届く早さに慣れてしまっている方には、実物をすぐに手にできない物足りなさを感じてしまうかも知れません。
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これらの「受注生産」の商品は「時間の早さ」に価値を置いていません。どちらかと言えば、「時間の深さ」にあるのかも知れません。それは作り手側としてもクオリティの高いものを購入した方たちにしっかり届け、そのものを長く使って欲しいといった想いの集積であります。そして同時に、この「受注生産」という方法は購入者側としても思わぬ気付きがあったりします。購入時にある程度の納期は作り手側の方で設定し、教えてくれているのですが、購入から少し時間が経つと、購入者側も注文したことすらもうっすらと覚えているくらいで(僕がそうでした)日々が過ぎていきます。そしてある日突然、家のインターホンが鳴り、商品が送られてくる喜びは、なんとも言えない購買の嬉しさがあり、購入した時の自分の気持ちや境遇、日々の生活の背景などを思い起こさせてくれ、それが自分にとっても特別で愛着のある商品へと変化していったのです。
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作り手が経過した時間の中で商品に込めた確かなクオリティと、商品を見て改めて作り手に対してのリスペクトの気持ちが湧き、さらには自分の記憶とも繋がるような想像を超えるような購買体験へと導いてくれたのでした。価格についても、もちろん商品のデザインや機能への評価もですが、作り手への信頼感や応援する気持ちなども含めると逆に割安感を感じるほどなのです。そうなると「受注生産」というスタイルは、商品はすぐには手に入らないというポイントはありつつも、作り手と買い手の関係性を濃密で特別なものに変化させる可能性があるのでしょう。
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美しい買い物は、もう少しゆっくりで作り手と買い手との関係性を育んでいくことなのかも知れません。
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