対話する消費と生産
自分が大学生の頃に外資系の「ファスト」ファッションのH&MやFoever21などが日本にも進出し始めたように思う。最新のローカルトレンドをキャッチアップし、厳格な管理が行き届いた生産のもと、今という時代をファッションのチカラで提案し続けてきたように思う。当時はリーマンショックなどの経済的な打撃による株安、そこからの物価下落、不況といった社会背景によって、トレンドから逸脱していない且つ、低価格というポイントにおいては、ファストな生産と消費は時代に即した行動手段だったのだろう。しかし、あの頃から10年以上たった2020年現在、巷ではレジ袋の廃止をはじめとして、地球環境やビジネスの持続可能性などが唄われ始め、社会全体として意識付けなども起こり始めている。また輝かしい繁栄を築いてきた「ファスト」な生産と消費についても生産地と消費地との目には見えにくい奴隷制度のような関係性による格差やそこに絡まる民族問題なども同時に表面化している。社会としての行動様式や関係性を改めて考えざるを得ない状況が生まれてきたのだ。
こういったことは10年スパンで起こりその都度やり方が変わってくるのかもしれない。テクノロジーの発展や現在のパンデミックのような状況がその速度を加速させているという事実を踏まえ、この変革点でもある現在、どのようにモノやコトが生み出されていくべきなのだろうか。そんな問いが近頃自分の頭からは離れない。自分が仕事を請け負っているマーケティングやPR戦略の点から物事を考えてみても、ひと昔前では王道であったメディア露出をさせてそこに飛びついた消費者を取りこぼすことなく売上につなげていくという手法は、もう既にやり尽くされているし、その延長線上としても考えられるインフルエンサーマーケティングやPRなんていうのは、そのモノやコト自体を短命に終わらせかねないのではないだろうか。
ではこれからの10年はどうなっていくのだろうか。今よりも情報が溢れていくであろう10年後の世界では想像するに「問う」チカラが消費者も生産者も求められてくる世の中だろう。今であってもGoogle検索で大体の表面的な情報は得ることが出来るけれど、そもそも自分自身がGoogle検索で何を調べたらいいというのが分かっていなかったら、ただの空白の“箱”に過ぎない訳だ。生産者としても情報などが溢れていく中で埋もれないためにも自分自身を「問う」必要性や場面に出会すタイミングはいずれ来るだろう。
このお互いの「問う」モノやコトが消費者と生産者で合致していくことが理想なのだろうけれど、完全に合致する人などに出会うこともなかなかないだろう。更に今までのやり方に慣れている人だとこの考え方に慣れるまでなかなか難しいのではないだろうか。そのために必要になってくることは答えをすぐに出そうとせずに、お互いがどんなことを感じていてどんな風に考えているのか、もしくはどんな未来を思い描いているのかということを対話することが求められている。特にそれが顕著なのが昨今のオンラインコミュニティが盛り上がっていることでもその片鱗を感じられる。儲かりそうだからとかブームだからオンライコミュニティということでは決してない。この対話がやりやすい状況を作るための装置と考えたら合点がいく。対話をする中で関係性が深まってきた中での商圏というのがグローバル単位で広がっていく世界がなんだか感じられる。
そのための準備として、まずは「自分を知ろう。相手を知ろう。」ということで最新号のマガジン a quiet dayは対話、dialogueをテーマに作ろうと心に決めたのである。2020年10月末日発売予定。
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