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実録 博徒にこ スピードくじ列伝

写真は「外れて当たり」
☆一番くじ SAND LAND D賞 コレクタブルアクリルスタンドを撮影

 はじめに。本稿は特定の国家元首を揶揄、砂をかけることを企図していない。純然たるフィギュア入手後の著者の実録である。

 ショップ『人形ほいほい』にて遂に我が魔人を手にしたにこ。帰宅後、鏡面台に立つなり股慄こりつする。執筆時、鼻上にテーピングを貼付することがままあるのだが、その姿のままに私はフィールドワークに向かった。ことを自覚した帰宅後の全ては事後。
「凄いんですね。2万も! 超えるって!」魔人購入会計時、興奮のあまり口にした言葉は文脈を欠き、店員をしどろもどろとさせ、帰路立ち寄ったコンビニにて「店員がエロい目ですげえ俺を見てきた」と、退店後に思わず溢す。だがこれら全ては我が鼻上のテーピングに合焦されていた故のことか。
 アニメ爛熟期を超えた日本国内に於いて、鼻上のテーピングは圧倒的少数派。大多数は絆創膏としてこれを見るだろう。アニメとは記号化だ。我が姿は二次元世界の構造の中の一部。内接する記号そのもの。無自覚なドレスコードだったのだ。
「え、何こいつ初めてみたいな芝居してんの?」専門店の店員心内を想い。「うわっ、久しぶりに見た。こういう奴」次にコンビニ店員心の声を想起。両者二名はディレイ型で我が自我を砕かんと襲いかかり、鏡面を前に、震えた。
「……恥ずい」 しかし……何時迄も鏡面前で固まっているわけにはいかない。私にはやるべきことがある。箱から魔人を召喚し、現物を確認するという使命が。
 購入物を脇に抱え、秘密ラボ「月極庵」へ向かう。鏡から立席後の心境はクリスマスを迎えた朝。誕生日のプレゼント開闢前の昂ぶり。
「懐かしいよ。この感じ……」専門店にて、熱を入れエマさん人形に眼目置いた刻に応じ些か富野節をほざき、駆け上がる。
『一番くじ ドラゴンボール 激突!! 宇宙を賭けた戦い C賞 魔人ブウフィギュア 全1種』の箱をトートバックから取り出す。その大きさは、初等教育児童の遠足時に持たせると丁度いい水筒に似たもの。天面はピンク色。瑞兆禁じ得ず、側面に貼られたスコッチテープがささくれ立たぬように、立たぬようにと心に念じ、ゆっくりと、そして大胆に剥がす。さすればよいよ魔人降臨の儀式。
 我はランダマイズ香に火を灯し、それっぽいルーン文字や思いつきの記号。あとはラップ? 念仏を独唱。蟄居の空間は厳かな間に包まれり、よいよ箱から魔道の徒を召喚する。
 内箱は透明二層式の「柔らかい金型」とも言えるもので、釘一本を使わずに魔人を前後から減封。更にその内には透明なビニール袋で魔人を包む。柔らかい金型を取り外す際に船の軋み音に似た鳴りが立つ。ある点まで抵抗を見せ、それを超えれば「ガヴァッ」とした硬い音を立て、前後に挟んでいた層は袂を分つ。
「嗚呼! もう直ぐだ!」 我が感嘆の声には興奮と緊張が混じり、額の汗を手で拭い、短パンの側面でその手を拭う。
 次なる封印はビニール袋。それには注意書きがこのように書かれていた。
「ビニール袋は窒息の危険がありますので、
 使用せずにお捨てください。」
 袋の大きさは育ちきった猫を入れるのにも小さく、どのように窒息するか想像は出来ず。息苦しさを覚えるのは所有者ではなく魔人ということだろうか。取り敢えず捨てずにとっておこう。
 透明度があるとはいえビニール袋は光を屈折させ、魔人を曇らせる。薄膜のベールを取り除くと……。

「こ……これは!」

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