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#1探さないでください。

19歳、夏。

学生達で賑わうキャンパス内を抜けて、私は大学の応接室にいた。
隣には両親、向かいには名前も知らない教授が3人。

学校に行けなくなって1ヶ月。
教授から何を言われたのか、本人の話と確認を取るために私は呼び出された。


学校には行けていなかった。
でも正直、この時の私はまだ、「後期から頑張ってみようかな」と思っていた。
踏み出す勇気は私の中にちゃんとあった。
まだ。





「教授はとても優しく、そんなこと言う人じゃないです。あなたの勘違いということもあるかもしれませんね。」





謝って欲しいわけじゃなかった。
同情して欲しいわけでもない。


でも、でも。

言いたいことはいっぱいあった。

どうしてそんなことを言うの。
私の気持ちは聞いてくれないの。
そっか。

もうどうでもいいや。


私の中でぷつんと何かが切れる音がした。


たった一言。それだけで。


私は全部に蓋をした。


それから、自分なりの精一杯の笑顔で「後期から頑張ります」と答え、私達は帰った。

あの時の私はうまく笑えていただろうか。
いやきっと笑ってしまうぐらいに引き攣っていただろう。



大学が用意してくれた天然水のおいしさがとても皮肉に感じた。



こうして私は逃げるように「休学」を選んだ。


この選択を私は後悔していない。

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